七海ななみ
2026-02-05 21:58:06
3152文字
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勘違いトライアングル

ルカキリ。互いに坊っちゃんを好きだと勘違いする両片思いなやつです。坊っちゃんは巻き込まれ被害者です。



気付いたら、ファルカさんを好きになっていた。
好きになったきっかけはわからない。気付いたら堕ちていた。でも、遠征でナドクライに訪れているだけだし、立場、種族の違いを考えたら、想いを告げることなどできなかった。大切な片思いとして抱えていくつもりだった。
本当に、そうするつもりだったのだ。

「イルーガは本当に優秀だな。どうだ? 西風騎士団に入らないか?」

イルーガと肩を組ながら西風騎士団に勧誘していた。確かにわかる。イルーガは優秀だ。必要な人材なのだろう。
でも、そんな風に誘われたイルーガに、嫉妬してしまった。
ファルカさんとイルーガを引き剥がし、ファルカを睨む。

さすが、西風騎士団の大団長様は手段を選ばない。公私の区別もつかないほど、人材不足に喘いでいらっしゃるのですか? 他所の組織の重要人物を、そうやって無遠慮に囲い込もうとするのは、ライトキーパーへの宣戦布告と受け取っても?」

気付いたら口が回ってしまった。

「フリンズさん、流石に言い過ぎです! ファルカさん、僕はライトキーパーから離れるつもりはありません。お話はありがたいですが
………いや、俺も無遠慮に言ってすまなかった」

ファルカさんは落ち込んだ様子で去っていった。
想いを告げるつもりはなかった。抱えていくつもりだった。でも、関係を悪化させるつもりもなかったのだ
やけに落ち込んだ様子が頭から離れない。
もしかして、ファルカさんはイルーガを好きだから、勧誘したのではないだろうか
イルーガからの呼び掛けに答えることもできず、ただ固まってしまった。


────────


完全に、やらかした。
西風の砦で他の騎士に見られないように頭を抱える。
イルーガは確かに優秀な人材だ。勧誘したかったのは嘘ではない。だが、片思いの相手に完全に喧嘩を売ったと勘違いされてしまった
フリンズの冷たい目線が、頭から離れない。もしかして、フリンズはイルーガの事が好きだったのか?
それならあの目線の冷たさも説明がつく。恋が実るとは思っていなかったが、せめて友人として仲良くしたかったのに
せめて、仲直り、したい。とにかく、謝らないと。わかっているのに、立ち上がれない。アンセムが呼んでいるが、立ち上がれなかった。


──────


仲直り、したい。でも、どうすればいいのか、わからない。

「フリンズさん、手が止まっていますよ」
「おやおや、坊っちゃんは手厳しいですね」

報告書が溜まっており、イルーガが監視に来ていた。指摘に対していつも通り回る口が憎たらしい。本当なら頭を抱えたいのに。
イルーガは催促続きを催促することもなく、じっと僕の顔を見つめている。

「フリンズさん、元気ないですね」
まさか気付かれていたとは。ではお言葉に甘えて休ませていただきます。報告書はまた今度で」
「そうではなくて、僕が勧誘された時から元気ないですよね?」

本当に気付かれていたとは。やはり優秀だ。だからこそ、西風騎士団大団長が自ら勧誘されにいっただけある。
ファルカとイルーガが肩を組んでた姿が脳裏に過る。

………あの時は失礼しました。イルーガの意思も聞かないで、勝手な真似をしてしまいました」
「やり方は荒かったですが、断るつもりでいましたよ」
「ですが、ファルカさんに勧誘されるくらいの実力があると褒められていたではありませんか」
「それは誇らしく思いますが、僕はライトキーパーから離れるつもりはありません。 やっぱり、ファルカさんに言い過ぎたと落ち込んでいるのではないですか?」
………
「やっぱり。僕が間に取り持つので、仲直りしましょう」

本当に、仲直り、できるのだろうか。もし、できなかったら、どうすればいいのだろうか。
ファルカさんはイルーガが好きだったら、邪魔した僕を許さないかもしれない。

「報告書を手伝うので、早く仲直りしてくださいね。今回だけ特別ですから」
………いつも手伝っていただいてもいいのですよ?」
「今回だけです!」

イルーガは本当に優しい。 ファルカさんが惚れるわけだ。
ゴトッ、と何かが落ちる音が聞こえた。音のした方を見ると、酒瓶を落としたファルカがいた。

邪魔して悪かったな」

ファルカは酒瓶を拾って早足に去っていった。
僕と仲直りをして、イルーガの好感度を上げるつもりだったのだろう。イルーガが追いかけるが、僕は動けなかった。


─────────


フリンズが、イルーガと楽しそうに話していた。動揺のあまり、酒瓶を落としてしまった。
やっぱり、フリンズはイルーガの事が好きだったのか。
仲直りのために持ってきた酒瓶は、やけ酒として一気飲みしよう。そうしなければやっていけない。

「ファルカさん!!」
イルーガ」
「フリンズさんと仲直りされに来たんでしょう。何で帰られるのですか?」
「いや、邪魔しちまったからな」
「フリンズさんもファルカさんと仲直りしたい、そう思っていますよ」
………

純粋に、俺たちが仲直りしてくれることを望んでいる。
イルーガはいい男だな。フリンズが惚れるわけだ。俺の出る幕はなかったわけだ。

「イルーガ、フリンズの事、頼んだぞ」
「何を言ってるんですか。ほら、戻りますよ」
「いや、邪魔者は大人しく去るべきで」
「戻りますよ!」

無理矢理逃げるわけにも、いかないか。


──────


「報告書は僕がやっておきますから、飲んでていいですよ」

そう言われて、イルーガは大量の報告書を持って地下室に向かった。

………
………

気まずい沈黙が流れる。空気を変えるべきなのはわかっているが、またやらかしそうで、怖い。

………その、この前は悪かったな」
………いえ、僕の方こそすみませんでした」

僕の方が悪いのに、先に謝ってくれる。貴方は本当に優しい。
イルーガは、本当に好い人だ。お似合いだ。やはり、僕は引くべきだ。

「イルーガは本当に優秀です。西風騎士団でも上手くやっていけるでしょう。説得に協力します」
ん?」
「ニキータにも話をつけておきますよ。だから、頑張って口説いてくださいね」
「ちょっと待てフリンズ」
「何がですか。僕と仲直りしてイルーガの好感度を高めようとしてたのでしょう」
「いや、イルーガと離れてもいいのか?」
何の話ですか?」

人がせっかく引くために手を貸そうとしてるのに、何の話をしているのだ。

「いや、イルーガの事が好きなんだろ?」
本当に何の話ですか?」
「だから、イルーガの事が好きだから、あんなに怒ったんだよな?」
あれは」

言葉に詰まるが、最後の機会だ。正直に話して気持ちの整理をするべきだろう。

「ファルカさんに勧誘されるイルーガが、羨ましかっただけです」
………え」
「ファルカさん、好きでした。どうか、イルーガと幸せなってください」

涙が溢れてくる。これ以上、見られたくない。去ろうとする僕の腕が捕まれる。

「放っといてください。イルーガは地下室に」
「俺は、フリンズが、好きだ!!」
………………………え?」


───────


遠くで、ファルカさんの叫び声が聞こえる。

やっぱり、そうでしたか」

二人とも大人なのに、なんでこんなに拗れるんだ。でも解決しそうで本当によかった。
さて、お祝いの用意でもしようかな。腕にかけて料理を振る舞おう。 でも、もう一枚だけ報告書を書いてあげよう。
やけに静かだから邪魔するのも野暮だ。馬に蹴られるのは嫌ですから、ね。