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まきわ
2026-02-05 20:45:03
2344文字
Public
クロリン
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これから
創のミニゲーム?にあったななくみ及び周辺組織の方々のミシュラム旅行の時の話ですクロリン
Ⅳ後創前くらいだったはずなので後輩君は幸せの手前で足踏みしています
ミジカイ
ざ、ざ、と波が寄せる音が聞こえる。
けれどそれは海の音ではない。
湖なのに、波の寄せるミシュラムの白い砂浜に仰向けになって、クロウは目を閉じてその音を聞いていた。
ふと、顔の上に影が差した気配があって目を開く。
真上に柔らかに微笑むリィンの顔があった。
「何してるんだ、こんなところで」
「日光浴」
「夜だぞ今は」
リィンは軽口に笑うと、クロウの隣に腰を下ろした。
クロウを含めたⅦ組メンバー達はユウナの父親の厚意で招待されてミシュラム旅行に来ていた。
友人たちも加えての旅行なのでそれなりの人数になり、ミシュラムのそこここに知っている顔がある光景はどうしてもあの壮行会を想起させる。
けれど全員、あの時とは全く違う気持ちでこの旅行を楽しんでいる。
「こうしてると波の音が聞こえてよ。
…
なんか安らぐんだよな、海ではねーんだけど」
「
…
そっか」
リィンは呟くように相槌を返すと、自分もそのまま仰向けに横になった。
「ほんとだ
…
なんか
…
落ち着くな」
「だろ」
波と風の音が穏やかに響いて、遠くからはミシュラムの喧騒が微かに流れてくる。
その空気に浸るように二人はただ並んで目を閉じていた。
「
…
こんな気持ちでまたここに来られるとは思わなかった」
「だなぁ」
壮行会の時には自分に明後日が来るとは思っていなかった。
それを思い出して、クロウは体を少しリィンの方へずらした。
お互いの手の甲と腕が軽く触れあう。
「
…
なんだよ」
照れたような声でリィンが言うので、クロウはじゃれるように手の甲を擦り寄せた。
「いーじゃんちょっとくらい。さきっちょだけだって」
「変な言い方ヤメロ」
ぺしっと軽く手の甲をはたかれる。
イタズラがバレた子供のように笑って、クロウは横目でリィンを見た。
「
…
幸せだって感じてるか?」
クロウが問うとリィンはわずかに眉を下げて苦笑を浮かべた。
「
…
感じそうになると、心が固まってしまっている気がする。そこに踏み込んでいいのか
…
まだわからなくて」
ふぅ、と小さくため息がリィンの口から零れる。
「教官を続けるのは決めたけど、どう生きるかにはまだ迷っている気がする。もう二度とあんな失敗はしない
…
なんてとても言えないからさ。あれほど大きな失敗はもうしたくないけど
…
それを思うと幸せになってなっていいのかって迷ってしまうんだ」
励ますようにクロウはリィンの手の甲を軽くさする。
「失敗したってお前にはいるだろ。たくさんの協力者も、教え子も、Ⅶ組も」
リィンが拗ねたような顔でこちらを見た。
「『オレも』とは言ってくれないのか?」
「さきっちょも受け入れてくれねーのにそういうこと言うからタチわりーよなぁお前は」
「だから変な言い方するなってば」
照れたのか、先ほどより少し強めにはたかれる。
クロウは要望に応える代わりに更にリィンの方へ体を寄せた。
「ったく、甘ったれめ」
「
…
しかたないだろ。クロウが俺を甘やかして、肝心な時にしか甘えるなって言ってくれないんだから」
「いやそれでいいだろ悪いのオレか?」
「そう、クロウが悪い」
子供のわがままのように即座にそう言い返してくるのが愛おしい。
クロウはふと悪戯心が湧いて口の端を上げた。
上半身を起こすとリィンは不思議そうにこちらを見た。
背中から砂粒がぱらぱらと零れていくのを感じながらクロウはリィンの上に覆いかぶさった。
「ちょっ
……
!」
夜闇の中でもわかるくらいリィンの頬が赤くなる。
咄嗟に腕を伸ばしてクロウの胸を突き返すが、その力は抵抗とは言えないほどかすかだ。
「なら、ほんとにワルイ男になっちまおうかな?」
「え!?ま、なにっ
…
」
リィンの顔の横に腕を突いて、顔をゆっくり近づけた。
片手を上げてそっと頬を撫でるとリィンはびくりと体を震わせた。
怯えているようにも見えるのに、瞳が期待を込めて潤んでいる。
こくん、と唾を飲む音がどちらがたてたものかもわからないほど顔が近づく。
リィンはいよいよ衝撃に耐えるかのようにぎゅっと目と口を閉じた。
どこも押さえつけていないのだから逃げるなり抵抗するなりできるだろうに、そう思ってクロウは笑みを零した。
…
そして、唇が触れ合うか合わないかの直前でクロウは顔を止めた。
ふ、と軽く息を吹きかけて顔を離す。
「ひぅっ」
体を固くして過敏になっていたからか吐息の刺激でリィンが妙な声をあげた。
クロウはリィンのすぐ横に座ってにやりと笑った。
「しねーよ、お前が本当に受け入れる気になるまではな」
「あ
……
」
リィンは脱力した様子で呆気にとられた顔をしている。
まだ頬は紅く染まったままだ。
「それに、強引にしてくれればいいのにーとか思ってるヤツにはしませーん」
「んなっ!べ、別にそんなこと思って
…
!ない、わけじゃ、ないけど
…
」
クロウはくっくと笑ったけれど、それは本当にキスしたくなった気持ちを誤魔化す為でもあった。
衝動を振り切るようにクロウはもう一度浜辺に寝転がった。
「ま、ゆっくり悩めよ。オレも今後どうするかまだ決められてねーしな」
「
…
うん。お互いにこれから、だな」
リィンの言葉がクロウの胸に強く響いた。
13の時以来、『これから』なんて言葉には縁がなかった。
未来のことなど見もしなかった。
けれど今はそれがある、その事実が胸に迫った。
「
…
なぁリィン」
「ん?」
「お前がなんかやらかしてもよ。オレが助けてやるよ。だからそこはそんな心配すんな」
「
…
っ、うん、ありがとう
…
クロウ
…
」
みんな、いるしな、と続いたリィンの声が震えていた。
夜空色のリィンの瞳から零れた涙が頬を伝っていくのを、流れ星みたいだなと思いながらクロウは指先でそっとそれを受け止めた。
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