おもち
2026-02-05 15:46:34
1498文字
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沈むなら君の腕の中で

過去個人サイトからの掲載
別体パラレル/王様居候/ほっこり



正直、こんなことになるとは思いもしなかった。


「相棒寒くないか?」
「うん、全然へーき」

そう言って、オレの胸に埋めていた顔をあげてにへっと笑う相棒を見て自然と高鳴る心臓の音に、こんな近くにいるんじゃ聞こえてしまうんじゃないだろうか、なんて心配になる。
布団の中で抱きしめた相棒はとても華奢で、オレの腕の中にすっぽりと収まってしまうくらい小さいけど暖かくて柔らかくて、髪に顔を埋めれば良い匂いがして、何ていうか幸せって一言じゃ済まされないくらい、何とも言えない感情がオレの中に押し寄せてくる。
そもそも何故こんなことになっているかと言うと、正直オレにもよく分らない。
ただ、明日は休みだから良いだろうと思って夜中まで本を読み、そろそろ寝ようとスタンドの電気を消して布団に潜り込もうとすれば、突然キイ、とドアの軋む音が聞こえて。
閉まっている筈なのに、と疑問に思って近付いて開けた先には何と枕を抱き締めながらぼーっと立ち尽くしている相棒がいて、突然ドアが開いたからか、それともオレと目が合ったからかびくっと肩を震わせた。

「相棒?」

いつからそこに、と言おうと肩を掴めば、いつもの相棒の体温とは比べ物にならないくらいの冷たさが、触れた手から伝わってきて言葉を失う。
オレとしたことが、何だって本に夢中になって気付かなかったのか。
自分の失態に心の中で舌打ちしながら、「あ、あの、えと」なんて言っておどおどしている相棒をぐいっと引き寄せ、冷たい体を抱き締める。
暫くそのままの体勢でいると、何故かは分らないが緊張していた様で強張っていた体は徐々に力が抜けてきて、そろそろとオレの顔色を窺いながら、相棒は言った。


「あ、のね一緒に、寝ちゃダメかな?」


オレはその時、歓喜の声を上げ自分の頭が沸騰してぶっ倒れそうになったくらい、頭の中はオンパレード状態だったのをよく覚えてる。
あの時よく表情を崩さずに了承したもんだ、自分で自分を褒めたい気分だぜ。

そうして今に至る訳で、相棒の事だ、大方悪い夢でも見たんだろうなんて言えばぷりぷり怒って「違うよ、寒かっただけだってば!」と言いながら恥ずかしいのかオレの胸にぐりぐりと顔を押し付けてくる。
じゃあ何であんな冷たくなるまで廊下に突っ立ってたんだ、寒かっただろうに、と思わず追求したくなったが、これ以上いじめると可哀想なのでごめんごめん、とあやす様に頭を撫でてやると、相棒はまるで猫みたいにほわんとした表情になってオレに擦り寄ってきた。

「あったかいねー
「もう眠くなってきたのか?」
「んー……

ふるふると首を横に振る様な動作を見せるけど、それもままならないほど相棒はうつらうつらとしていて今にも寝てしまいそうだ。
加えてオレの方もあまりの寝心地の良さにだんだん頭がボーッとしてくる。
くそ、本当はもっと相棒を堪能してから眠ろうと思ってたんだけどな。このままじゃ後数分で夢の世界に御招待ってとこだろうか。

おやすみ、相棒」
「んおや、す……

もう理由なんてどうでも良いか、と思い眠そうな相棒にそう囁けば、まるで夢と現実の境目をぐらぐらわたっている様なそんな様子の返事が返ってくる。
そして相棒の体は徐々に力が抜けていき、ものの数分も経たないうちに寝息が聞こえ完全にベットに体を預ける状態になったが、オレの左手に繋がれた相棒の右手だけはぎゅっと力が籠っていて、思わず笑ってしまう。
そんな相棒の額にそっと唇を押し付け、今夜はぐっすり寝れそうだと呟きながらオレも瞼を閉じまどろみに身を任せた。