望月 鏡翠
2026-02-05 01:57:27
1099文字
Public 日課
 

#1988 少しだけ本当のこと4

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔


 気がついたら自分が笑っていたから、驚いた。
 でも、美園の言葉を聞いて嬉しくなった。嬉しいって思ったのを、誤魔化せなかった。我慢できなかった。
 道徳が、それを駄目だっていう。
 でも、もう死んでいるわけで。
 ここが死後の世界なら、別に現実の道徳の話って、気にしなくっていいんじゃないか。
「えー、じゃあさ。何にも見つけられなかったら一緒に死ぬ?」
 死の実感、正直めちゃくちゃあった。だって、死ぬ気だったし。死のうと思って飛び降りた。
 タイミング完璧で、ちょうどよくトラック。一瞬怖かったけど、一瞬だったし。
 あ、こういうとき、マジで世界ってゆっくりになるんだって思った。クラクションの音が全身に染み込んで、思い出すと頭が痛い。
 ぶつかる瞬間に、あっ、ヤバイって本能がめちゃくちゃビビってたけど、結果下手に苦しまずに死ねて、ラッキー。
 そしたら突然生き返ってとか言われて、困ってたんだ。
 でも、そういう話題ってデリケートで重くて、真面目にならないといけなくて、めっちゃ重たくなるかもと思ってビビって逃げた。
 美園になら、してもよかったのかな。すればよかったかもな。
 今更、遅いかもしれないけど。
「えぇ!?いや、えっ、とぉ……
 声が跳ねた。動揺がわかりやすく見えた。
 間違えたかも。今じゃなかった。
 もっと打ち解けてからの方がよかったかも。
「もう死んでるじゃん、俺らさ」
「あー、確かに。そうだった」
 これから、一ヶ月。
 話す機会があったら、また話そう。なければ、別にそれでもいいし。
「そのときになって決まってなかったらノリで。忘れててもいいし。テキトーにやろうよ」
「うん、うん」
 行きたいと思ったら、生きたらいいよ。折角生きたいと思たのに、死にたい奴に巻き込むのは流石に申し訳ないし、他人の人生にそこまで責任持ちたくない。
 心中って本当は、めっちゃ悪いことらしいよ。
 この先の約束とかも、しないでいよう。
 しがらみみたいなの、苦手だからさ。
 話したかったら、そのときにまた美園がまた見えるところにいたら、声かけるよ。
「なんか、話しやすかった。あんがとね。また声かけに来ていい?」
「俺も話せてよかった。もちろん、いつでも」
 言ってから何か違うなと思って、少し迷ってから言い直す。
……んー、なんか違うな。友達って思っていい?」
「そりゃ、当然、俺でいいなら、うん」
 一人じゃなくてよかったって思えた。安心した。
 美園が頷いてくれたので、安心した。
 引かれたら、ちょっと落ち込んだと思う。
 次にあったら、なんの話をするだろうね。