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望月 鏡翠
2026-02-04 23:36:53
919文字
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日課
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#1986 少しだけ本当のこと2
#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔
「あ、ども」
美園がお辞儀に釣られるようにして頭を下げた。
「俺も夢か何かだと思った。でも一周回って現実な気がしてくるよね」
それも良くわかる。ギリギリ今までの常識だと信じられないラインくらいが一番疑わしく感じられるのだ。たとえばここにいたら食事をしなくても困らないということに関しては、本当か?って思う。
死んだけど生き返るまでいくと、そういう世界観なのねで納得できてしまう。
「でも、ドッキリと思ったってことはそんなに実感ないの? その、死んだ」
咄嗟にはいともいいえとも言えずに、言葉が途切れた。
「え、や」
全員死んでいる。死んだから、ここにきている。老若男女全員そうだ。知識としてはわかっている。だが、そもそもその実感なんて命がある限り持つことがない感覚だ。
死んだ実感。それはトラックのクラクション。眩しいヘッドライト。
あ、と思った。ぶつかる瞬間て、死ぬ瞬間て、こんな感じなんだと思った。苦痛が長引くような死に方じゃなくてよかった。
ものすごく痛くて苦しい思いをしていたら、ここにきたときもっと動揺していたと思うから。
「実感はある、けど。別にそんな思い返したいことでもないし
……
」
思わず顔を背けてしまった。
当たり前なんだけどね。
生き返るってことはその前段階として一旦死んでるなんてことは。
「あ、あ、ごめん。そうだよな、変なこと聞いた。ごめん。いや、うん。それでもチャンスをもらえたんだからよかった。うん」
美園の反応を見て、やってしまったと思った。
気を遣わせててしまった。本当に気にする必要がないやつだ。
初対面でどこの人かわからなくて、たぶん事情はさまざまで、初めまして、これからよろしくねが終わったら、それ以外話題がないのは当たり前だ。
「あ、や、大丈夫っす。共通の話題って言っても特にないわけだし、こんなときだし、気になるよな〜」
知らない人にいや〜、死んだみたいすねと冗談めかして口にして、生き返るなんてすごいっすねなんて口にしてみても、死に関する話題をタブーだと思う感覚が根強く残っていたせいだ。
もう、死んでるのに。
頭の中から、クラクションの音を追い出した。
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