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景生
1477文字
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花足
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劣勢
※出所後同棲 ※花足+主
冷蔵庫の中身を見て「牛乳が無い」と言い出した花村は午前零時に出かけて行った。なにもこんな時間から買いに行かなくても良いだろうにと思った足立であったが、そんな声を掛ける隙も無いまま彼は早々に消えてしまった。スーパーは閉店しているので恐らくコンビニにでも向かったのだろう。足立はもう寝るところであったが、十五分もすれば帰って来るだろうと電気も消さずにリビングで花村を待ってやった。寝室が同じなので寝際にごそごそうるさくされても迷惑だと思ったからだ。時間を確認しながら途中まで読んでいた本に目を向けて足立は頁をめくった。その本が数十頁進んでから花村は帰って来た。なぜか手ぶらで牛乳は見当たらない。代わりに誰かを連れて来た。
「何してるの、悠くん」
鳴上悠が花村の背後からひょこっと顔を出して微笑んでいる。足立は怪訝な表情で彼を見た。なぜ彼がここにいるのだろう。こんな遅くに何の用だと聞いてどうして連れて来たんだと花村に不満を表せば、花村は白々しく片眉を上げて素知らぬ振りをした。彼の口から説明する気が無いのだろうと察して足立は鳴上を見る。しかしこちらが訊ねる前に鳴上の方から先に口を開いた。
「お誕生日おめでとうございます、足立さん」
彼の両手には大層な荷物があった。それを嬉しそうに見せながら彼は「パーティですよ」と意味不明なことを言って笑っている。足立は本を閉じてスマートフォンの日付を見た。午前零時を過ぎたので二月一日になっている。ハッピーバースデー。彼の言う通り足立の誕生日である。すっかり忘れていたので足立は拍子抜けして、そんなもののために深夜にやって来たのかと鳴上に呆れてみせた。きみが呼んだの、と花村に訊ねるが「俺なわけねえだろ」と彼は溜め息を吐いている。鳴上の頼みなら断れない彼のことだ。こんなくだらないことにも二つ返事で引き受けたのだろう。
「帰ったらどうかな、悠くん」
「あ、酷いですね。足立さんのために来たのに」
夜食もケーキも頑張って作ったんですよ、と鳴上は言いながらずかずかと部屋に入り込むと早速台所に立って何やら勝手に荷物を広げ始めた。酒も買い込んでいるようで見れば足立の好きな銘柄が二、三本ほど袋から出てくる。なぜ把握しているのかと不思議に思ったが大方花村の入れ知恵に違いない。足立は花村に近寄って恨めしく睨んでやったが彼は「〝お誕生日〟なら座ってろ」と足立の不満を突っぱねると、そのまま無理矢理近くのソファーに押し付けてきた。
「悠が楽しんでんだから邪魔すんなよ」
耳元で釘を刺される。途端にべろりと耳を舐められるので足立が驚いて思わず肩を上げた。耳を押さえて目を丸くすれば花村は悪い顔をしながらべえっと舌を出している。何でこんなことをするのかと思ったが心当たりがあるとすればきっと大好きな鳴上が来ているので機嫌が良いのだろう。そういうことならここで鳴上を帰らせてしまえば花村は怒り出すに違いない。面倒なことはしたくなかったので足立は仕方無しに彼等の強行的な誕生日祝いを受け取ることにした。
「足立さん、明日休みですよね。足立さんの好きなもの沢山作って来ましたから、ゆっくり食べてくださいね」
鳴上は二人のやり取りも知らずに暢気に準備に勤しんでいる。花村は足立から離れると彼のことを手伝いに行った。足立は脅しから解放されてやれやれとソファーの背もたれに沈み込むと「夕食食べたからそんなに入らないよ」と、もうどうにでもしてくれと言わんばかりに白旗を上げた。
この二人を同時に相手するなんて分が悪かった。
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