三毛田
2026-02-04 22:44:00
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58 12. 気怠い午後の哲学

58日目
よくわかってないけれど

「だる」
 お腹はいっぱいだし、ちょうどいい気温で眠いし。
 数日前に丹恒と予習した箇所だったから、余計につまらない。
 暇なので、辞書を開いて哲学とは何か。と、ちょっとだけ考えてみる。
「わからん」
「何がわからないんだ?」
「えー。哲学。はれ?」
「そうか。俺の授業はそんなにつまらないか」
「いや、えーと、その……
 目の間にいたのは、先生。冷汗が流れていく。
 視線だけ丹恒へ向けて助けを求めるけれど、そっと視線をそらされた。
「お前以外にも、ちゃんと授業を聞いていない者がいるな。連帯責任で、プリント一枚追加だ」
 えー! と、ブーイングが教室に広がっていくが、俺以外にもいたという情報で少しだけ気が楽に。
「こら」
「丹恒先生、ごめんなさい」
 休み時間になり、俺の元へやってきた丹恒は、胸の下で腕を組んで俺を叱る。
「他にもまともに授業を聞いていなかった奴がいたとはいえ、きっかけはお前だ」
「はい」
「クラスで協力する時、そのことを何度も言われると思っておけ」
「はい」
 圧を感じ、素直にうなずいた後うなだれる。と、ぐしゃぐしゃと髪を乱暴に撫でられて。
「明日までに、さっさと終わらせよう。帰ったら、一緒に考えれば早く終わるだろう」
「丹恒せんせ~!」
 感動して飛びつくと、優しく抱きとめてくれて。
 これで、残りの授業も頑張れる。
 授業、帰りのホームルーム、掃除を終えて手を繋ぎながら通学路を歩いていく。
「丹恒、大好き」
「そうか」
 俺がデレデレとだらしない表情で告げるのに対し、淡々と涼しい顔のまま。
 こうやって俺の気持ちを伝え始めた頃は照れていたけれど、今では慣れたのかこんな反応だ。
 それでも、好きであることには変わらない。
……
「どうしたんだ?」
「俺も、その……穹が好きだ」
「うぐぅ」
 俺の心にクリーンヒットです。
 何でそんなに可愛いんだ。
「丹恒。苦しくて、追加のプリントの問題解けないかも」
「そうか。それは大変だな」
「お前のせいなんですけど。キスしていい?」
……俺より早く問題を解けたら、好きなだけ」
 提案というか問いかけに、少々照れたように頬を赤らめ。
 あーあー。本当ズルいって、その顔。
「じゃあ、俺も本気でやるから」
「そうか。俺も本気でやらせてもらおう」
 というので、手を引いて走り出す。
「穹っ」
 俺を咎めるように名前を呼ぶけれど、すぐに同じスピードに。それどころか、俺を追い越して玄関へ。
「ただいま」
「ただいま~!」
 今日は俺たちが一番乗りで静かだ。