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リレン
3961文字
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フリンズ夢 短編
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フリンズさんの旅の途中での話
※捏造設定が多めです。ご注意下さい。
※夜明かしの墓に来る前のイメージです。
そのお客さんは、スネージナヤからの旅行客だと聞いた。
父が経営している宿屋に、最近長めに滞在している人がいる。名前は確か
……
フリンズさんというらしい。貴族みたいな名前の人だった。一人きりの旅行客で、小さなランプの他に手荷物もほとんど持っていないし、あまり人と会話する様子もない。「どんな目的でウチに滞在してるんだろうなぁ」とか、「挨拶しても素っ気ないし、表情が読めないんだよな」などと父が溢しているのを聞いたりもした。
街道沿いの中継地点と言う場所柄、大抵の旅行客はウチの宿を一時滞在で利用することが多く、長く止まる客は少ない。しかし、彼はもう一週間ほどの滞在になる。
つまり、気になる要素が沢山ある
――
ということだ。
まだまだ恐怖心よりも好奇心が勝つ私は、彼に話しかけてみたいと考えていた。両親からは「気味が悪いからやめておけ」とか言われたが、私はそうは思わない。
――
と、昨日の記憶を思い返しているうちに、丁度フリンズさんが部屋から出てきた。
「こんにちは」
「
……
はい」
「どこか出かけるんですか?」
「
……
散歩に」
「そうですか、気をつけて行ってらっしゃいませ」
従業員として軽く頭を下げて会釈してみたが、彼は私を横目に見るだけで、返事もせず出かけて行った。
……
本当に愛想がない、ね。
***
フリンズさんと少し会話ができた翌日のこと、私は自分が任されている薪用の枝集めに向かった。いつも通る道だし、行き帰りも一人で十分だ。
――
なのだが。
「
……
ん?」
いつもの坂道を登った先に、フリンズさんが立っていた。昨日と同じくお散歩なのかな。少し近づいてから「こんにちは」と声をかけると、私の方へ顔を向けてくれた。相変わらず無表情というか、物静かというか、何を考えているか分からない顔をしている。
「
……
なぜ、ここへ?」
お、初めて会話らしい会話ができそうで何より。
「なぜって、薪拾いが私の仕事なので
……
日課みたいなものですね」
持っていた籠鞄と中に入れていた枝を彼に見せる。すると彼は「ふむ、」と呟き、眉間に皺を寄せて険しい顔をして、服に吊り下げていたランプを手に持ち直して私の方へ掲げる。ランプの炎は、少し赤みを帯びていた。
「ここへは、もう数日は来ない方がいい」
「え
……
? それは何故ですか?」
「危険だからだ」
それだけ言うと、彼は一人で宿の方へ歩き出してしまう。えぇ
……
もう少し理由ぐらい教えてくれないものか
……
と、私は少し肩を落とす。でも心配して、くれたのかな。それなら、まぁ
……
多少はいつもよりも早く帰ることにしてみよう。そう考えつつ坂道をさらに進むと、見えてきた光景に思わず息を呑む。
「こんなところにフロストランプなんて、咲いてたっけ?」
この地域ではほとんど見ないフロストランプが咲き乱れていた。通い慣れた道だ、数日前には絶対なかった。どう言うこと?
フロストランプの群生自体はとても綺麗なのだが、何故か少しだけ不気味に思えたので、薪拾いはこれで終わりにして家に帰ることにした。一応、両親にも報告したが、話半分であまり信じてもらえなかった。
***
あれから数日経ち、そろそろまた薪拾いが必要になったので、いつもの坂道を登る。歩きながら、ふと数日前にフリンズさんに言われた「数日来ない方がいい」という言葉を思い出す。そうは言われても、仕事しないと両親には怒られるだろうし、行くしかない。
そういえば、先日見たフロストランプの群生地はこの辺りだったかな?と思い立ち、坂道を登りながら辺りを見回す。
「ここ、のはず
……
だよね?」
場所はあっていたと思う。けれども、フロストランプは枯れ果てており、綺麗に咲いていたあの光景は見られなかった。
しかも、今日の私は運が悪いらしい。見たことない何かが、いる。
――
これは、やばいのでは?
見上げた目線の先に、明らかに人ではないものの姿をした何かが居た。やばいやばい
……
に、逃げないと。そう思えば思うほど、恐怖で足がすくんでしまい動かない自分の足、震える体。腕から滑り落ちた籠鞄が床にぶつかり、音を立てる。そして、彼らの意識が私へと向いた。
「
――
ぁっ」
死を覚悟した直後、体がグッと強く引き寄せる感覚のあと、私の体は抱え込まれて宙に浮いた。その衝撃で目を閉じ、再度目を開いた時には、あの得体の知れないものの群れからは距離が取られており、適当なところで地面に降ろされた。
「フ、フリンズ、さん
……
?」
「ここへは来るなと、伝えたはずだが」
「え、はい
……
そう、でしたね」
彼は私を一瞥してから眉間に皺を寄せて、明らかに不機嫌な顔でチッと舌打ちした。
「こうなってはもう遅い、これが元凶か?
――
後ろを振り返らずに、宿まで走れ。できるな?」
「
……
はい!」
私に向かって掛けられた声に、精一杯の虚勢を張って、彼の言葉に同意する。彼は声を出さずに頷くと、私の方には振り返らずにあの群れへと立ち向かって行った。
私に出来ることは、なるべく早く離れることしかなかった。途中で一度だけ振り返った時に見えたのは、蒼い炎が燃え広がり、辺り一面と人ではないもの達を同時に焼き尽くしている光景だった。
***
辺りの蒼炎が少し鎮まったことを遠目から確認した私は、急いで元の場所へ走った。宿には戻らずに、少し距離を空けた坂の下で待機していたのだ。
「フリンズさんっ!」
「
――
なぜ、戻ってきた?」
「心配だったから、です!」
そう答えると、フリンズさんは口角を少し上げて、フッと笑ったように見えた。
「早く、宿に戻りなさい。僕は、見た通り
……
人間では、ないから
……
心配はいらない
…
」
「
……
でも!」
体のあちこちから蒼い炎が漏れ出しているし、歩く度に足元にも炎が溢れている。そして溢れた炎が地面に吸い込まれる度に、フロストランプの花が咲く。
――
ああ、あのフロストランプの群生は、彼が何者かと戦った跡だったのか。
目を離した一瞬の隙に、フリンズさんが地面へ倒れ込む。
「フリンズさん!」
「ふふっ
……
僕はフェイだ、この程度で
…
死ぬことはない。放っておいてくれ
……
少し、眠ります」
それだけ言うと彼は蒼い炎へと姿を変え、腰に下げていたランプへと吸い込まれた。フロストランプの花畑の中心に取り残された、一つのランプを見つめる。
「ど
…
どうしよう
…………
え?」
周りを見渡してみると、ランプに近いフロストランプから、少しずつ萎れていくのが見えた。
――
もしかして、フロストランプから何かを吸収している⁈
そう気づいてからは、遠くに生えているフロストランプを摘んでは、ランプの近くに置いていく。摘んだ花からも何かを吸収しているようだ。それが何かは分からないが、今それをしなければならないと言うことは分かる。
広い花畑の端とランプを何往復したか分からなくなったところで、両親が心配して見に来てくれた。「何も聞かないで、フロストランプを運ぶの手伝って!」とお願いすると、尋常でない私の様子に困惑しながらも、慌てて両親も同じようにたくさん運んでくれた。
***
――
ふと、意識が戻る。
人型が取れる程度には回復したらしい。ランプから出てみると、まだ明るかったはずの外の景色は、暗く夜の気配が濃くなっている。自身の蒼炎のランプを掲げると、傍らには毛布にくるまっている宿屋の娘が居た。
……
何故ここにいる? 帰るように伝えたはずだが。
辺りを見渡すと、萎びたフロストランプの山が出来ていた。数日もすればこれらも消えてなくなる。それはいつもの事ではあるのだが、どうも様子がおかしい。
「
――
予想よりも、範囲が狭い?」
そう呟くと、宿屋の娘が身じろぎするのが見えた。
……
あぁ、そうか。この娘が花を集めたのか。
「わざわざそんな事をせずとも良いものを
……
」
そうは思うところではあるが、早く回復できたのは正にそのおかげだろうと言うことは理解出来る。
――
ふむ。
真夜中の空気は、人間には冷たく居心地が悪いのではないだろうか。そう思い付いて、娘の背中と膝裏に手を入れて掬い上げる。宿まで運んでやった方が人間の体には良いだろう、と考えたのだ。
「
……
ありがとうございます」
眠っている娘には届かないと理解しつつも、感謝の言葉を述べておきたくなったので、そのようにした。
***
――
目を開けたら、自室のベッドの上で寝ていた。
ぇえ
……
? 昨日の出来事は、夢か何かだった? いや、そんなはずはない、と思う。私はベッドサイドに見えた花を認識した途端、ベッドから飛び起きて両親の元へと急ぐ。
「おぉ、ようやく起きたかい?」
「おはよう母さん!私なんで家にいるの? あの人は⁈」
「朝から元気だねぇ。昨夜、あのフロストランプの咲いてたところか帰らないって駄々捏ねてたアンタだったけど、夜中にあのお客さんが抱えて連れ帰ってきてくれたよ」
「そう、彼は無事だったんだ。よかった
……
じゃなくて! フリンズさんは⁈」
「今朝早く発ったよ。用事が済んだ、とか言ってたねぇ」
…………
そ、そんなー!
自室にもう一度戻ると、先ほどと同じように綺麗に咲いているフロストランプが一輪置いてあった。
「フリンズさんに、ちゃんとお礼を言いたかった、な」
こればっかりは叶わなそうなので、そのフロストランプを抱えてから、もう一度ベッドに倒れ込む。うん、良い香り。よく眠れそう。
そのまま私は、もう一度目を閉じた。
『これが、昔出会ったお花の妖精さんのお話です』
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