ne🌟
2026-02-04 19:58:26
2172文字
Public 高諸
 

7)君の名前

# いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く

高諸
現パロ 社会人5年目の高さんと新卒の尊ちゃん

「5月に配属される新卒、お前に指導を任せようと思う」

運ばれてきたあつあつの唐揚げに伸ばした手が止まった。目の前で味噌汁を啜る上司はなんでことのないように言ってきたが、高坂にとってはいそうですか、と流せる話題ではない。
思わず眉間に寄った皺もそのままに、高坂は困惑の眼差しを上司に向けた。

「私に、新人指導、ですか?」
「あぁ。もう5年目だろう。遅いくらいだと思ってな」

飯が冷めるぞと上司の山本に促され、ようやく高坂は唐揚げ定食に手をつけ始めた。
会社から程近くにあるこの定食屋の唐揚げは絶品で、山本から久々に昼を誘われてからずっと楽しみにしていた。
だが、突如告げられた人事の話に気持ちを持って行かれてしまい、思うように箸が進まない。

「浮かない顔だな。ここの唐揚げ好きだっただろ?」
「いえ、すき、ですが
「嫌か?指導役」
「嫌、ではないですが心配です。私はよく厳しいと言われるので」

そう、高坂が心配なのはそこだった。
向上心が高く真面目な彼はその性格が故、妥協を許さない。それのせいで学生時代もよく他人と意見がぶつかったことがあった。

新人指導は早ければ3年目、遅くても4年目には任される。同期たちが後輩を持ち始める中、高坂に限っては新人育成の話が持ちかけられることなく過ぎて行った。
本人として慣れない業務を任されなくて済んだと内心安心していたのだが、どうやらそれもここまでだったらしい。

「大丈夫だと思ったから任せるんだ。一回思う通りにやってみなさい。ちゃんとフォローはするから」

大きい手が伸びてきて、頭をガシガシと撫でられた。目の前には目元の皺を寄せながら山本が安心させるように笑んでいた。
入社当時から目をかけてくれていた彼に、そこまで言われては仕方がない。出かかったため息を唐揚げで流し込んで、高坂ははいと返事を返した。

***

「諸泉尊奈門です!来月からこちらの部署に配属予定となります」

よろしくお願いしますと、緊張しながらも元気よく自己紹介した尊奈門に、温かい拍手が起こった。

今日は入社したての新卒のお披露目会だ。
これから彼含め入社した新卒は1ヶ月間の研修ののち、正式配属となる。
だから、高坂の隣の席に彼の荷物が来るのは1ヶ月後。

同僚の拍手に合わせて高坂も手を叩きながら、山本の隣にいる新卒──諸泉尊奈門のことを観察していた。
まだ高校生に見えるくらい幼い顔立ち。緊張して恥ずかしそうにはにかむ顔は。自分にはない愛嬌を感じる叱ればすぐにでも泣き出しそうなやつ。
それが高坂が抱いた後輩に対する第一印象だ。

「高坂、ちょっと前に出てきなさい」
「、はい」

敵を品定めするように鋭い視線を送ってた高坂を、山本が手招きした。まるで狙いを定めたようなタイミングに思わず心臓が跳ねそうになった。呼ばれるがまま、高坂は慌てて山本の元まで向かった。

「一応先に紹介しておくな。彼は高坂、君の5年先輩だ。配属されたら彼の下に付いてもらうことになってる。困ったことがあれば、研修中でも彼を頼りなさい」
「はい!よろしくお願いします!高坂さん!」
「あ、あぁ。よろしく……
「新卒集合〜!研修始めるよ」

眩い笑顔。
あまりに初々しいそれに、高坂がたじろいでいると、新卒研修を担う雑渡の声が聞こえた。
己を呼ぶ声に尊奈門はすぐさま興味をそちらにそらして、一目散に会議室へ向かって行ってしまった。
慌ただしいが、正直助かった。
高坂がひっそりと息を吐いていると山本が肩を叩いてきた。

「とまぁ、ああいう感じの子みたいだから、来月から頼んだな」

生温かい笑みを浮かべる山本は、心の変化に気づいているようだ。己の心を見透かすような笑顔をむず痒く思い、高坂は逃げるように座席へと戻った。

上坂が自席に戻る時には、部署の仲間たちはとっくに業務に戻っている。なんだか知らないがどっと疲れた高坂は冷めた缶コーヒーを一口飲んで、引き出しに入れてある付箋とペンを取り出す。

名前の漢字は通達を見て、事前に知っていた。だが、読み方は今日、彼が自己紹介をするまで「しょせん」だと思っていた。
彼の元気一杯の自己紹介の声を思い出しながら付箋にペンを滑らせる。

moroizumi sonnamon
……変な名前」 

だけど、心の中で呼んでみると、不思議としっくりくる名前。
読み方を忘れないように付箋に書いた名前を撫でた後、PCディスプレイの右上に貼り付けた。

===
この後ディスプレイにまだ配属されてもない後輩の名前を貼ってることを知ってしまった同期の3️⃣忍と一悶着ある。



社会人高坂さん、初めての後輩に気合い入れ過ぎて行きすぎなくらい指導するだろうし、めちゃくちゃ過保護にもなりそう。

高さん(私が尊を立派な社会人にするんだ〜!)

ってなって距離も近くなり、どんどんプライベートにまで食い込んでくる。
がある日、尊は気づく。
このストイックな先輩、仕事はできるのにそのせいで切り捨てている日常(もとい生活)が最悪だ。
そこから始まる尊ちゃんの生活指導。
仕事では高さんが先輩なのに、プライベートは逆に尊に指導される高さん。
そんな先輩後輩のオフィスラブが、始ま──らない。