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しょうがやき
2026-02-04 19:31:55
3637文字
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一軍シリーズ
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【一軍シリーズ】理玖→高野へのキス未遂がバレた話
14話(
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26694495)
の理玖→高野へのキス未遂が一軍組にバレる話
時系列は冬休みが終わって3学期が始まったくらいなので、理玖と柊斗は付き合ってます。
ある日、いつものようにみんなで昼ごはんを食べている時、その事件は起こった。
「そういえば、2人が喧嘩してた原因ってなんだったの?」
弁当を突きながら大和が言う。
柊斗は少し迷った後ゆっくり口を開いた。
「俺が、理玖にキスしかけて
……
」
「それを俺が色々勘違いしてた、って感じ」
柊斗の言葉に続けて言う。
今更言うと恥ずかしいな、なんて思いながら俺は弁当のおかずを口に含んだ。
「へー、なるほどな。高野は知ってた?」
その話を聞いていた塚田がおもむろに高野に話を振る。
「知ってたもなにも、俺実験台にされたし」
「実験台?」
椎谷が聞き返すと高野は深く頷いた。
緑茶の紙パックを一口吸って、口を開く。
「日永と映画行く前にファミレス行ったんだけど、その時に日永が顔近づけてきてさ」
「「は?」」
「俺にキスしようとしてきたんだよね」
「「はぁ!?」」
驚きと怒りを含んだ声を上げたのは柊斗と大和だ。
隣に座った2人に詰め寄られる。
「理玖、今の話事実?」
「え、ええっと
……
」
「答えて」
2人の間から高野に視線を送るが、「自業自得だ」とも言いたそうな顔で見つめられただけだった。
「理玖」
「
……
はい、事実です」
観念して頷くと、大きなため息が両隣から聞こえてくる。
「フリでもそういうことしちゃダメだろ」
「ピュアなのかバカなのか分からないよ」
柊斗、大和に口々に言われ肩をすくめる。
大和の言葉に「いやバカだろ」と呟いた高野を小突く。
「ひどい、日永クンー。俺ずっと黙ってあげてたのに〜!」
高野はわざとらしく泣き真似をして塚田に縋り付く。
誰か助けてくれる人は、と見渡すが、柊斗、大和、高野は言うまでもなく、塚田、椎谷も遠い目をしていた。
「
……
だって、わかんなかったんだもん。柊斗が何したかったのか。好きになったのも、なられたのも初めてだから、わかんなかった」
味方がいないとわかり、俺は最後のあがきとして言い訳しながら口を尖らせた。
「あの時、柊斗がいつも通りすぎたり、女子と楽しそうにしてたりして
……
俺、パニックだったんだよ。だから、誰でもいいから確かめたかったっていうか
……
」
多分、この一言がダメだった。
「
……
そっか。誰でも、良かったんだ」
柊斗のその言葉に、背筋が凍りつく。
いつもなら優しい瞳が、今は驚くほど冷たい。怒鳴られるより、よっぽど怖かった。
「あーあ。火に油注いだんじゃねーの、日永」
そんな高野の野次も気にならないほど、俺は冷や汗がダラダラだった。
隣にいた大和に視線を送ると、首を横に振られた。
「こればっかりは風間と同意見かな」
どうやら俺はとんでもないことをしてしまったらしい。
言い訳なんて、しなきゃよかった。
でも、どれだけ後悔しても後の祭りだ。
「
……
あの、柊斗。ごめん、ほんとに」
今更遅いかもしれないが、謝らないわけにはいかない。
震える声でそう告げると、柊斗はようやく弁当から目を離し、ゆっくりと俺の顔を見た。
その瞳の奥には、冷たさと、それ以上にドロリとした何かが透けて見えて、俺は思わず息を呑む。
「
……
謝らなくていいよ、理玖。パニックだったんだもんね」
声は穏やかだが、全く温度を感じない。
柊斗はそう言うと、そのまま黙々と弁当を片付け始めた。許されたというより、対話を拒絶されたような空気に、俺は泣きたくなる。
「まーまー、あんま怒んなよー」
「日永も本気でやろうとしたんじゃないだろうしさ」
見かねた塚田と椎谷がフォローに入り、凍りついた空気をさりげなく通常運転に戻そうとしてくれている。
「
……
分かってるよ。理玖が悪気があってやったんじゃないことくらい」
柊斗は声のトーンを戻して答えたが、その視線は俺をじっと捉えたままだった。
予鈴が鳴り、皆がガタガタと席を立つ中で、俺は今日という日を無事に終えられる気が全くしなかった。
ーーーー
放課後。
氷のような冷たい雰囲気を纏う柊斗と一緒に家路につく。
玄関を開け、柊斗に続くように家の中に入った俺は、くいと柊斗の腕を引いた。
「あ、あのさ、柊斗。部屋
……
行ってもいい?」
「
……
うん。いいよ」
柊斗の部屋に入ると、柊斗がベットに腰掛けた。
その隣に座り、大きく息を吐く。
「高野のこと。ほんとにごめん」
「
……
謝らなくていいって言ったでしょ。あの時はまだ、付き合ってなかったし」
「でももし、柊斗がそんなことしてたら俺も嫌だから」
「
…………
」
あの時は、目の前のことでいっぱいいっぱいでそんなこと考えられなかったけど、今ならわかる。
「あの時から、俺が1番好きなのは柊斗だよ」
柊斗の背中に腕を回しながらそう言うと、耳元で柊斗が呟く。
「
……
じゃあ、証明して」
「えっ、
……
んっ!?」
次の瞬間、視界がぐるりと回り、気づけばベッドに押し倒されていた。
目の前には、さっきまで冷たい雰囲気を纏っていたはずの男が、どこか熱を孕んだ瞳で自分を見下ろしている。
「
……
柊斗?怒ってる
……
?」
「全然?でも、まだ心の傷が深いから、理玖に甘やかしてもらわないと治らない」
「絶対うそ
……
」
逃げようとするが、柊斗の両腕がそれを逃がさない。
柊斗は俺の首筋に顔を埋めた後、流れるように俺に顔を近づけた。
「
……
高野に顔、近づけたんでしょ? その時どんな距離だったか、ちゃんと教えてよ」
「えっ、そ、れは
……
」
「教えてくれないと、わかんないから。
……
ねえ、これくらい?」
柊斗の顔が、鼻先が触れ合うほどの間近に迫る。
「逃がさない」とでも言いたげな瞳で俺を見つめる。
「
……
もっと、離れてた、よ
……
」
「へぇ
……
それで、高野は理玖に何されると思ったんだっけ」
さらに俺に顔を近づけた後、柊斗の指先が、俺の唇をなぞり、ゆっくりと押し開く。
「
……
キス」
「正解。
……
じゃあ、俺が今からするのも、同じだね」
降ってきた唇は、驚くほど強引だった。
昼間に「わかんなかった」と言い訳した自分を呪いたくなるほど、柊斗の与えてくる刺激は鮮明で、逃げ場がない。
何度も角度を変えて重ねられる熱に、頭の中が真っ白になる。
柊斗は俺の耳元にグッと顔を近づけた。
「
……
わかんないことは、俺が教えてあげるから。他の誰かになんて絶対聞かないで」
耳元で反響する低い声に、背筋がゾクりと震える。
柊斗の唇が首筋に触れ、そのまま鎖骨のあたりを軽く啄んだ。
「し、柊斗
……
っ、ちょっと、待って
……
!」
このままじゃ、キスだけじゃ済まない。
そう本能的に察した俺は、必死で柊斗を制止する。
「
……
なに? まだ──わかんない?」
柊斗が顔を上げ、少し意地悪な、けれど熱の引かない瞳で俺を見つめる。
「
……
っ、ちが、
……
わかった! 充分わかったから!柊斗が怒ってるのも、俺が悪いのも、もう全部わかった
……
っ!」
必死に訴えると、柊斗は動きを止めた。
じっと俺の顔を覗き込むと、口を尖らせる。
「
……
本当にわかった? もう他の人になんてしない?」
「しない! 絶対にしないから
……
だから、まだ待ってよ
……
」
俺が顔を真っ赤にして懇願すると、柊斗はふっと力を抜いて、俺の胸元に顔を埋めた。
心臓の鼓動が、服越しに重なり合う。
「
……
理玖。俺、本当は今すぐ、理玖が他の男のことなんて一瞬も考えられないくらいにしたいんだけど」
柊斗はそう言うとスルッと俺の頬に手を滑らせた。
俺の体が震えたのを見た柊斗は、手をそのまま俺の頭まで動かした。
「でも、理玖が怖がることはしないよ。ごめんね」
柊斗は俺の頭を撫でた後、額にキスを落とした。
そのままゆっくり起き上がり、少し残念そうな顔で笑った。
「
……
続きは、また今度ね。理玖が、教えてって言ってくれるまで、我慢するから」
俺はベッドに横たわったまま、柊斗の顔を見上げる。
「怖く
……
ないよ」
「え?」
「さっきのも
……
その、嫌だったんじゃなくて。
……
ただ、こういうの初めてだから
……
まだ待ってて欲しいだけ。
……
だから、謝らないで」
そう言って柊斗の顔をうかがうと、柊斗は「うん」と優しく笑った。
っていうか、と俺は続ける。
「っていうか、謝らないといけないのは俺の方だし」
「たしかに」
「え、やっぱり怒ってる?」
「さあ、どうだろ」
「やっぱ怒ってるじゃん」
そう言って、どちらからともなく笑い出した。
部屋に流れる静かな沈黙は、さっきまでの氷のような冷たさはどこにもない。溶け出した空気は、お互いの体温を分け合うように、ただ熱く甘く混ざり合っていった。
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