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モモハナ
2026-02-03 23:31:12
3457文字
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Stay by my side.
X(旧ついった)にて回ってきた@yondosan様のポスト『夜中喉が渇いて~』のシチュを黒ファイで見たい!と思いまして、そちらを元に書かせていただきました。元ポストは@yondosan様のを参照にして下さい。
ぶっちゃけた話、ニライカナイ以降の甘々な二人が見たいだけです。
「今日、一緒に寝てもいい?」
晩酌を終えて寝室へ向かおうとした黒鋼に、ファイが小さな声で訪ねてきた。
晩秋の日本国と似た気候のこの国の気候は、ニライカナイの温暖な気候に慣れてしまった身体には些か肌寒く感じる程だ。
その所為か、昨夜はあまりよく眠れなかったのだと言うファイに黒鋼は少々面倒くさそうにしつつも、寝不足で体調を崩されでもしたらあとが面倒だからと言って、ファイの頼みを承諾した。
一足先に就寝した小狼とモコナを起こさないように気を付けながら、共用の寝室へと足を踏み入れると、そのまま二人して黒鋼のベッドへ潜り込んだ。
「やっぱり、黒ぷーは体温高いから暖かいねぇ」
「逆に何でお前はそんなに冷てぇんだよ。こんなんでよく、あの国で暮らせてたな」
「城内はいつもアシュラ王が魔法で温度を保っててくれたから。それに、王がくれたコートも凄くふわふわで暖かかったし
…
」
ひょっとすると、長い間幽閉されてた影響でファイ自身の感覚も鈍っていたのかもしれない。
だからあまり寒いと感じたことがなかった、とぽつりぽつりと言葉を紡ぐファイの瞼が少しずつ閉じ始める。
程なくして、寝息を立て始めたファイに安堵の息を吐くと、黒鋼も静かに眠りについた。
喉の渇きを覚えて黒鋼は目を覚ました。
隣で熟睡しているファイを起こさないように、ゆっくりと上体を起こした黒鋼は、現在時刻を確認するために壁に掛けられた時計に目を向けた。
夜目の利く黒鋼は、暗い室内の中でもその針が二時を少し過ぎた所を指し示しているのをしっかりと読み取り、二時か、と小さく呟いた。
「
…
間抜け面、だな」
以前はうつ伏せで眠る事の多かったファイだが、最近は仰向けで眠る事も多くなった。それ故にファイの寝顔を見る機会も増えたのだが、こうして彼の無防備な寝顔をみると自分よりも倍以上生きているようには到底思えなくて、黒鋼は思わず小さく笑みを零した。
むにゃむにゃと小さく何かを言いながら、幸せそうに眠るファイの頭を黒鋼は掌で包むようにしてそっと撫でると、ファイを起こさないようにベッドから降りようと身体を動かした。
「
……
ぃで」
「あ
…
?」
「行かないで
…
」
突然、ファイの薄い唇から紡がれたその言葉に、黒鋼はドキリとしてファイの方へと視線を向ける。
すると、ゆっくりと閉じていた双眸を開き上体を起こしたファイが、そのまま黒鋼の腰に縋るように両腕を回し込んできた。
「待って
…
、オレをおいて行かないで
…
」
「おい、急にどうした
…
?」
此方を見つめてくる蒼い双眸はどこかぼんやりとしていて焦点が合わず、ファイが無意識でとっている行動らしい事が伺える。
眠りにつく前にファイの祖国の話をしたから、幼い頃の事を思い出してしまったのかも知れない。
大切なものを失った子供の様に行かないで、とどこか不明瞭な声色で言いながら縋りついてくるファイを素直に受け止めて、黒鋼は小さく息を吐いた。
「
…
大丈夫だ、俺は此処にいる」
ファイの細い身体を両腕で抱きしめると、黒鋼はその背中をゆっくりと撫でる。
ぽん、ぽん、と泣いた子供をあやす様に一定の間隔でファイの背をさすっているうちに、縋りついていたファイの腕から力が抜ける感覚を感じた。
程なくして聞こえ始めた穏やかな呼吸音に、ファイが再び眠りについた事を察した黒鋼はファイの身体を抱きしめたまま、ゆっくりとベッドに横になった。
結局、水を飲みに行くことは叶わなかったが、こんな状態のファイを放ってはいけないので仕方がない。
水は次に起きたら飲めばいいか、と内心思いながら、黒鋼は腕の中の温もりに誘われる様に静かに瞼を閉じた。
夜が明けて、カーテンの隙間から僅かに差し込む朝日が少しだけ眩しくて、ファイはうぅん、と小さく声を上げながら顔を背けようとした。
しかし、何故か自由に体を動かすことが出来なくて、ファイはそのまま目を開けた。
ぼやけた視界が鮮明になるのと同時に目についたのは、見覚えのある黒いTシャツで。
そのTシャツの主を確認するように顔を僅かに上へ上げれば、そこには予想通り、すぅすぅと寝息を立てる黒鋼の顔があった。
「黒ぽん
…
?」
やけに近いような、と想いながら視線を下に向ければ、黒鋼の逞しい腕ががっちりとファイの身体を包み込んでおり、ファイは己の置かれている状況に驚いて目を瞬かせた。
「
……
あれ? オレ、黒みゅうに抱きしめられてる
…
?」
確かに昨夜は肌寒く、寝付けそうになかったから黒鋼にお願いして一緒のベッドに寝かせてもらったけれど、こんなに密着はしていなかった筈だ。
それが何故、今はこんなにしっかりと抱きしめられているのか。
理由は分からないが、ファイとしては黒鋼にくっ付いていられるのは素直に嬉しいので、黒鋼の体温をもっと感じたいと大きな体にすり寄る。
もう少し顔を近づければキス、出来そう
…
。
そんな事をぼんやりと思いながら、ファイが黒鋼の寝顔を見つめていると、何かを感じ取ったのか黒鋼が僅かに身じろいだ。
程なくして開かれた黒鋼の紅玉が、此方を見上げていたファイの蒼い瞳とかち合った。
「
……
はよ」
「お
…
っはよ、黒様
…
っ!」
黒鋼の寝起き特有の少しかすれた声色にドキリとして、思わず上ずった声で返事を返してしまい、ファイは慌てて視線を逸らす。
「ちゃんと寝られたか?」
「あ、うんっ! お陰様で朝までぐっすりだよ~。本当に有難うね、黒りん」
「
…
そうか。なら良かった」
ふにゃりと笑うファイの顔色を改めて確認して、本当に眠れていたようだと確信を得た黒鋼は、安心したという様に笑みを浮かべると抱きしめていた細い身体を開放した。
そのままゆっくりと起き上がると、黒鋼は水飲んでくる、と一言言い置いてベッドから出て行った。
ばたりとドアが閉まるのを見送ってから、漸く起き上がったファイは今まで傍にあった温もりが無くなったことに一抹の寂しさを感じてしまう。
それだけ自分が黒鋼を好いているのだと、改めて自覚してしまうと何だか恥ずかしくて自然と頬が熱くなってくる。
そしてきっとそれは黒鋼も同じで。だからこそ、こうして共に眠ることを許してくれているのだろう。
「
…
オレ、黒るーに甘えすぎてる気がするなぁ」
「俺は別に構わねぇぞ。今まで碌に甘えられなかった分、取り返すくらい甘えてろ」
「っ!?」
独り言として呟いたはずの言葉に返事が返ってきて、ファイは驚いて声のした方に顔を向ける。
すると、そこにはいつの間に戻ってきたのか、静かに寝室のドアを閉める黒鋼がいて、彼はそのままベッドに歩いてくるとファイの隣に腰かけた。
「もー! 黒ぷーってば気配消して入ってこないでよぉ。びっくりしたじゃん」
「気配消してたつもりはねぇんだが、驚かしたなら悪かった」
言いながら、むくれるファイの金髪を黒鋼は右手で軽く撫でつける。
それを素直に受け止めてから、ファイはそう言えば、と黒鋼に向き直った。
「黒ぴっぴってばさぁ、クールな顔してるけど、実はオレの事凄く好きだよねぇ? さっき起きた時、しっかりとオレの事抱きしめて寝ててさぁ。寝顔も何だかいつもより幼くて可愛かったなぁ」
「
……
っ!」
いつもいい様にされている仕返しとばかりに、ニヤニヤとした笑みを浮かべて言ってきたファイに、黒鋼はピクリと眉を揺らした。
元はと言えばお前が、と言いかけた所で、昨夜の事を何も覚えていない様子のファイに敢えて話す必要も無いだろうと思い直し、黒鋼は一度口を噤む。
心の中を整理するように一度小さく息を吐いてから、黒鋼は改めて口を開いた。
「あぁ、好きだぜ。今の素直に感情を表すようになったお前は特に、な」
「
……
っっ!!」
当然だと言わんばかりにさらりと告げられた黒鋼からの告白は、ファイの白い頬を一瞬で真っ赤に染め上げた。
珍しく動揺する姿が見れるかと思っていたのに、それどころか余裕すら感じさせる様子の黒鋼に、逆にファイの方が動揺させられてしまうとは思わなかった。
しかし、それでも黒鋼に好きだと言って貰えるのは嬉しくて、ファイは真っ赤に染まった顔を隠すように黒鋼の胸に抱き着いた。
同時に小さな声で告げられた「オレも好きだよ」というファイの告白に、黒鋼は知ってる、と頷いて笑みを浮かべると、その細身の身体を抱きしめ返した。
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