望月 鏡翠
2026-02-03 01:04:38
858文字
Public 日課
 

#1982 たぶん、泣いていた子供

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔


 目があった人に声をかけて話していただけなのだが、意外と時間が経っていた。スマホの表示している時間が現実の通りならば、もう深夜と言っても差し支えない。
 遅番のあとなら普通に起きている時間だ。ナイター見て散歩して帰ったら、このくらいの時間になるだろうか。そろそろ寝ようかなと考えるくらいの時間だ。
 昼間の仕事をしている人なら、もう一日を終えて眠っている時間なんじゃないだろうか。
 ラウンジにいる人間が少なくなって、視界はだいぶスッキリしていた。みんな巡礼の一ヶ月を過ごすべき自分の部屋を見つけたのだろう。
 肉体的には元気だった。普段でも、一日くらいなら徹夜しても問題ない。しかし、精神的には色々あって疲れている。
 疲れてるんなら、部屋を積極的に探した方が良かったのだろうとは思う。
 早い者勝ちと聞くと、なんとなく面倒くさくなってしまい今に至る。
 人の部屋のドアを一つ一つノックして起こして回って、空いていますかと確認して回るのも、面倒だ。相部屋を申し出るようなガッツもない。深夜になってしまった後では、向こうにも迷惑だろう。
 動くとしても、明日朝起きてみんなが起きてからでいい。結局朝起きたら、
 まあ、別にここでもいいか。
 凍死するような寒さでもない。
 この時間までロビーに残っている人は、同じように部屋を探すのが面倒になってしまった人だろうか。疲れ切ってまだ動く元気が出ない人かもしれない。
 子供達はきっと後者なんだろう。
 泣いている子供にどうやって話しかけたらいいのかわからない。慰め方も知らないし、気にかけてあげた方がいいんだろうと思っているけど、本当に気にしたいわけじゃない。
 壁際に座って休もうと思って、おとなしそうな少女の横の空間にお邪魔した。目があって、どちらともなくぺこりと頭を下げる。
 服装と面立ちからすると、日本人だろうか。
 もしかしたら来たばかりのときは、泣いていたのかも知れない。
「あ、えーと、寒くない?」
 目元が赤い。それには気づかないふりをした。