こゆ
2026-02-03 00:17:49
1510文字
Public
 

マイ・バディ

2/2 ニコイチの日!!
ペンギンとシャチの話。

 

突然海上で敵船とやり合ったのが半日前。
ハートの海賊団はその戦闘で、たまたま通りかかった民間の船を助ける形となった。
偶然にも目的の国が同じでであったため、現在ハートの海賊団はお礼だ宴だと貸切の店内で大層賑やな歓迎を受けている。もう数時間にも及ぶ酒の席は、楽しそうに賑わう声もだんだんと落ち着いて、今では静まり返っている。

ペンギンは、カウンターでしきりにどうかこの島にしばし滞在を。と、口説かれているローのことをベポに任せ、シャチのいた席に向かった。
もう残っている人間の方が少ない。
カウンターからそう離れてもいないテーブルに、シャチがうつ伏せになっている。
近づくと穏やかな寝息が聞こえてきた。
今日はまだ普段ほどの量を飲んでいないはずだが。店内が賑わう裏で、シャチは場の警戒と見張りを兼ねて、常に緊張が張り詰めていた。昼間の戦闘でもかなり負担を強いた気がする。その疲労からか。

「シャチ」
「ん……

驚かせない程度の声音で呼びかけ、肩を揺らすと、シャチはゆっくりと身を起こした。大分酒も勧められたのだろう。醒めきっていない瞳を庇うようにサングラスを指で押さえた。

「眠いなら船に戻ろうか。起きられるか?」
「あー……、ちょっとまって、頭が起きてねー」

眠気でぼやける頭を覚醒させようとするよう、サングラスを押さえていた手のひらをずらして自分の頬を撫でるが、その瞼は重たげで今にもまた落ちそうだ。

「寝るなら上の部屋を使うか。テーブルで寝たところで休まらないだろう」
「ん、大丈夫」
「シャチ、ほら」

眠たげではあるものの、顔では笑ってみせて疲労を無理やり飲み込んでいるシャチ。ペンギンは手を差し出しつつも、どうしても小言が出てしまった。

「立ち上がれないほどに疲れているときまで笑うな」
「そこまで疲労困憊ってわけじゃ、」
「酔い潰れるほど飲んでもいないだろ?」
「ホントに、別にそこまで疲れてるつもりじゃなくって。誰かに声かけられたらすぐ起きるつもりで、ただ…………
「ただ?なんだ?」
「もう、……笑うなよ? ペンギンが傍に来たら、ペンギンの声を聞いたから、その、すっげー眠くて」

そんなことを口にしたのも、やはり眠気で頭が働いていなかったからだろう。シャチがはたと我に返った顔色になり、すぐさま腰を上げる。

「やっぱ今のナシ!」

シャチがに言い逃げて、立ち去ろうとする。
すぐさまペンギンはシャチの腰に腕を回す。逃すか、と担ぎ上げた。まさか宙に浮くことになるとは思っておらず驚いて声を上げる。

「ぅおっ! おい、歩ける!!」
「上で寝かしつけてやる」
「そんな必要な――くそ、こンの馬鹿力……! バカ!!」

シャチがペンギンの肩から降りようともがく。だがペンギンの両腕は、シャチの腰と膝裏を抑えたままぴくりとも動かない。
体格はほぼ同じ、少しくらい体幹がブレても良さそうなものだが。
シャチはしばらく抵抗して、無駄だと悟ったのか、諦めて身体の力を抜いた。それを待ってからペンギンが歩き出す。

ハートの海賊団なかまとして、労う気持ちもある」
…………
「それでも、おれ個人として、頑張ったおれの相棒を甘やかしたい気持ちがある」

シャチはペンギンに身体を預けたまま、反応しようとしない。
いまさら恥ずかしがったところで、酔っ払いではないペンギンの記憶は飛ばないし、シラフの気持ちに応えれるほどに脳みそは機能していない。

「恥ずかしいやつ」

シャチの消えそうなセリフに、ペンギンが「どっちがだよ」って小さく笑みを漏らして、階段を上っていった。