こゆ
2026-02-02 12:17:13
746文字
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止めなかったらキスしてただろ、の話

ベッター保存用
スワローペンシャチ
舌の話

「痛っ」
「シャチ、どうした?」
「舌を噛んだのかのう?」

 食べ方を誤ったのか、舌をちょびりと出して情けなく眉を垂れたシャチに、ペンギンが心配そうに近付く。そばで見ていたヴォルフも気遣わし気にその様子を窺い、あまりにも傷が酷いようなら手当をしなければと考えた。

「シャチ、見せて」
「ん」
…………

 一言の後にペンギンが取った行動に、後ろから覗いたヴォルフが黙り込む。当たり前のようにシャチの舌を掴んで引き出し、じっと見つめているペンギンの瞳は真剣そのものだ。
チロりと赤い舌を素直に差し出しているシャチの瞳もまた、真剣だ。
しかし、ジワジワと首が赤く染まっていく様をヴォルフは見逃さなかった。
ここに至るまでのふたりの境遇は聞いている。幼馴染で、兄弟のように一緒に育ち、毎晩同じ部屋で寝ているほどだと。そして、ふたりきりになってしまった悲劇も。ペンギンが、シャチに対して過剰なまでに守ろうとしている姿も。
しかし、これは。あまりにも。

「ペンギン、」
「ヴォルフ、ちょっと待って、今はシャチが」
「ペンギン、口の中の傷は無理に止血しなくても大丈夫だ。空気に触れるより湿度を保った方がいい」
ヴォルフの憂いを感じ取ったように、ローが指示を出してシャチはその舌を口内へ引っ込めた。
何故かローはベポの視界を遮るように、両の手のひらでベポの顔半分を覆っている。
苦笑するヴォルフと、何も分かっていないペンギン。

「おれ、口ゆすいでくる」
シャチがパタパタと洗面所へ駆けて行った。


◇◇◇
 
……びっくりしたぁ」
誰もいないことを確認して小さく呟いたシャチの耳は、鏡で確認するまでもなく真っ赤に染まっていた。今はとにかく顔が熱くて、舌の痛みも吹っ飛んでしまった。