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lilie_y0527
2026-02-02 00:20:45
2504文字
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おすそわけ
数日後、ルークは大量に買い込んだ茶葉を抱えて、ハンとレイアの家を訪れた。
「やあ、二人とも。珍しい茶葉が手に入ったから、お裾分けだよ」
「お前、そんなにたくさんどうしたんだ?店でも開くのか?」
ハンがいつものように茶化すが、レイアはルークのどこか晴れやかな表情を見逃さなかった。
「せっかくだから一緒にお茶しましょう。ルークの近況も聞きたいし」
レイアが微笑みながらルークをテーブルに促した。ルークが座ると少し待っていてね、とキッチンへ消えていく。ルークは椅子に座りながら、最近の出来事を思い出していた。
湯気が立ち上るカップを囲みながら、レイアがふと切り出した。
「例の親子とはどうなったの? グローグーと
……
ディン・ジャリン、だったかしら」
ルークの顔がぱっと明るくなる。
「ああ、仲良くしているよ。この前は、不覚にも罠にはまってしまったんだけど、彼らが助けに来てくれてね。そのお礼にテンプルでお茶をしたんだ。グローグーもお菓子を喜んでくれて
……
」
ルークは止まらなかった。ディンがいかに素晴らしい戦士か。ヘルメットの掟を守りながら自分と向き合ってくれたことがどれほど尊いか。その手の温かさが、どれほど自分を孤独から救ってくれたか。
熱心に語れば語るほど、テーブルの向こう側の空気が変わっていく。ハンはカップを持ったまま静止し、レイアは意味深な笑みを浮かべて顎を手に乗せて、ルークをじっと見つめていた。
「
……
友人、ねぇ。ルーク、お前それ本気で言ってるのか?」
ハンが耐えきれずに呆れたように天井を仰いた。ルークは不思議そうに瞬きをする。
「もちろん友人だよ。
……
何かおかしかったかな?」
ルークが真剣に返すと、ハンは肩をすくめた。
「いいえ、おかしくないわ」
レイアが優しく、しかし逃がさないようなトーンで続けた。
「あなたにとって彼がどれほど特別な存在なのか、聞いていてよく分かったわ」
レイアの言葉を聞いてルークは表情を少しだけ引き締めた。
「特別な存在
……
。ああ、レイア。もしかして、僕がジェダイとしての『執着』に囚われているんじゃないかって心配しているのか?それなら大丈夫だ。もう自分の中で答えは出ている」
ルークは聖典を引いて考えた『愛おしい重荷』の結論を、自信を持って語ろうとした。しかし、ハンがそれを遮るように言った。
「なあルーク。お前、ホスで死にかけたこと覚えてるか」
唐突な問いに、ルークはきょとんとした。急に何を言い出すのか。
「忘れるわけないよ。猛吹雪の中で凍死しかけていた僕を、君が命がけで助けてくれた」
「そう、それだ。お前はあの後、俺との友情について『これは執着か?』なんて深刻に悩んだことが一度でもあるか?」
「
……
えっ?」
ルークは絶句した。考えたこともなかった。あの頃はまだジェダイについて詳しく知らなかったのもあるが、ハンは大切な仲間で、その気持ちは空気のように自然なものだ。ハンはテーブルの上のビスケットを放り投げ、口でキャッチした。
「悩んだことないだろ?そりゃそうだ。俺たちはダチだがな」
そしてニヤリと笑う。
「執着だの、掟だの、何だの
……
ツルむために大層な言葉を持ち出して自分を納得させなきゃならない時点で、お前、そのマンダロリアンのことがイッッッテェ!」
ハンが身を捩り、テーブルの下に手をやりどこかを摩った。レイアはじろりとハンを睨みつけ、余計なことは言わないのと囁いた。それはルークに聞こえていたが、どういう意味かはわかっていなかった。ルークはポカンと口を開けるしかなかった。
「え
……
? いや、でも彼はマンダロリアンで、僕はジェダイで
……
。グローグーという繋がりがあって
……
」
「ルーク」
レイアがルークの手をそっと握った。
「あなたが彼を想うとき、そこに理屈が必要な時点で、それはもう理屈を超えた感情なのよ」
二人の温かい視線に晒され、ルークの顔がじわじわと赤くなっていく。彼は耳まで真っ赤にして、震える手でお茶を啜った。
「え、待ってくれ?じゃあ、僕は
……
彼に対して、君たちとは違う、何か『別のもの』を抱いているってこと
……
?」
レイアとハンは同時に、深く、そして慈しむような溜息をついた。
「あーあ、ルークも分かりやすいよな。どっかのお姫さんも、これくらい素直で分かりやすけりゃ、俺の苦労も半分で済んだのによ」
その瞬間、部屋の空気がわずかに冷えた。レイアが静かに、しかし一点の曇りもない笑顔でハンの方を向く。
「ハン。今、なんて言ったの?」
「いや、別に? 独り言だぜ、独り言」
「私がどうのこうのと聞こえたのだけれど。いいわ、この機会にじっくり話し合いましょうか」
「おい待て、レイア冗談だって!ルーク、お前からも何か言って
……
」
しかし、ルークには二人をなだめる余裕など一ミリも残っていなかった。自分は今まで、彼らとディンへの感情を同じ『友情』という箱に入れていた。だが、ハンにそれを突きつけられた今、ディンの名前を思い浮かべるだけで胸の奥がざわつく理由を、無視することができなくなっていた。
ルークは真っ赤になった顔を伏せ、まだ半分残っているお茶を一気に飲み干した。目の前ではレイアがハンの袖を掴んで説教を始め、ハンが必死に言い訳を並べている。二人の時間はもう、第三者が入り込める隙間などなかった。
「
……
二人とも、今日はありがとう。茶葉、楽しんでくれ」
蚊の鳴くような声でそう言い残すと、ルークは逃げるように席を立った。背後で「おい、ルーク! 助けろ!」というハンの悲鳴と「逃げるつもりなの?」というレイアの鋭い声が響いていたが、彼は一度も振り返らなかった。
夜風に当たったルークは大きく息を吐いた。手元に残ったのは、空になったカップの熱の余韻と、自分の心の中に芽生えていた、名前を付けるのが恐ろしいほど熱い感情の欠片だけだった。
「そんなのじゃない、これは、違う」
ルークは夜空に浮かぶ星々を見上げ、必死にくすぶる埋火を消そうとしていた。
―
おわりー
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