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望月 鏡翠
2026-02-02 00:11:20
908文字
Public
日課
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#1979 靴を無くした人。皆見 百子さん。
#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔
ラウンジで手持ち無沙汰になっている人が、移動をしている。周囲の人と雑談を始めている人もいるし、部屋の確保に動いている人もいるのだろう。
視界で長い髪に乗った光沢が、体が揺れる度にゆらめいていた。
長い髪の毛を見ると、昔付き合ってた彼女の風呂が死ぬほど長かったことを思い出す。
風もないのになんでそんなにゆらゆらしているのかと思えば、片足で立っているせいだった。
両足地に足つけているのに何故かふらついている人もいないわけではないが、こんな不安定な場所で危ないなと思って、目に止まった。
何をしてるんだろう。そう思っていると視線に気づいたのか、目が合った。
「あの、パンプス見ませんでしたか?」
(パンプスってなんだっけ。えーと、靴。やっぱ靴無くしたんだ)
周囲を見回したが、それらしいものは落ちていなかった。
「え、あ〜〜見てないすね」
片足だけ靴を履いていると、歩きにくくないだろうか。
いや、歩きにくいんだよ。実際、今歩けてない。
周りには裸足の人だっているし、見たところ足を怪我するようなものも落ちていない。両足とも脱げば
……
と思ったのだが、そういうことじゃないんだろう。
みんなが土足で歩き回ってる地面に足を下ろすのが嫌なんだろうし、無くした靴が大事なものだったのかもしれない。
(別に、今履いてるやつあげてもいいけど)
メンズだから小さいということはないだろうし、こっちは素足でも気にならないし。
だが、今この瞬間まで履いてて他人の体温が移った靴を、平気で履いていられるタイプの人間なら、そもそも今頃素足でどこかに靴を探しに歩いていけているに決まっている。
背負っていたリュックの中身を漁る。ろくなものが入っていない。Tシャツはあったが、ライブに来て行った汗だく使用済みだ。こんなのは論外だ。
唯一マシなのが、タオルだった。持っててよかった、タオルの予備。備えあれば憂いなし。いや、他に備えてるもんが一つもなかっただけなんだけど。
「足、汚れちゃうからこれどぞ。返さなくていいんで」
足の下にタオルを敷くと、そそくさと立ち去った。
親切な人が助けてくれますように。
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