芹沢亀吉
2026-02-01 23:04:04
4478文字
Public 風刺
 

とにかく汚い横堤

暴虐かつ悪趣味な楠木武が恥をかく物語の通算122話目。横堤政美がどのように「汚い」かは本編を読んで確かめるべし。

 女性としては憲政史上初の日本国首相に就任した横堤よこつつみ政美まさみではあるものの、国会の憲法審査会、予算委員会,刑法審査会の全ての議長が野党議員であり自分のわがままが通らないのが気に入らない。今まで悪いことは全部他人のせいにしてきた横堤はわがままを押し通す以外のやり方を知らないのだ。その時点で横堤は日本国首相失格、それ以前に政治家失格のクズなのは黙っておこうか。

「どいつもこいつも総理であるウチの邪魔ばっかり!ホンマにムカつくわ!こうなったら解散や!衆議院解散やぁ!」

 自分のわがままが通らないから衆議院を解散、しかも来年度の予算成立はおろか衆議院への予算案提出もまだだというのに。これは事実上内閣の、日本国首相の職責を放棄したに等しく、本来ならこれだけでも内閣総辞職もの。真冬に衆議院を解散し総選挙を行うのは豪雪により投票所に行くのが困難な地域の人達のことを全く考えておらず、受験の対応に追われる教員達に校舎を投票所として使う負担を押し付けるのも他人のことを全く考えず自分のわがままを押し通すだけの横堤ならでは。

「今回の選挙で目障りな連中全員落選させたる!総理であるウチの邪魔する議員なんか要らん!」

 門長かどなが内閣の国家公安委員長だった頃報道陣に向かって「政権批判する報道機関は取り潰す!」と放言する等横堤の横暴さ、傲慢さは桁外れ。当の門長四郎しろうは総理辞任後選挙演説中に銃撃され命を落とし、横堤は亡き門長の後継者は自分だと公言して憚らない。門長亡き後裏金問題に加え霊感商法等悪徳行為を繰り返す新興宗教「聖光騎士団」との癒着が明らかになった与党、保守第一党は衆参両院共に議席を大きく減らした。横暴かつ独断専行が目立ち党内でも嫌われ者の横堤が保守第一党総裁に選出されたのは今誰が総裁になっても苦しい国会運営を強いられるからあの嫌われ者に火中の栗を、と所属議員の大多数が考えたのが大きい。そして20年以上連立を組んできた正大党は裏金問題の解明を頑として拒む横堤の姿勢に嫌気が差し連立を解消、新たに連立政権に加わり彼女が内閣総理大臣、即ち日本国首相に指名されるよう尽力した王政復古の会も党幹部がキャバクラ通いに政治資金を投じていた上組織的な国保支払い逃れが発覚する体たらく。

「総理、内調から例のものが届きました。」

 秘書官が横堤に手渡したビニール袋の中には何者かの毛髪が。

「ご苦労さん、早速これ使うわ。」

 毛髪を手にした横堤の邪悪な微笑みは魔女そのもの。わざわざ内調、即ち内閣情報調査室を動かしてまでこの毛髪を入手したのだから恐れ入る。

 大阪府和泉市の信太山駐屯地では楠木くすのきたけし一等陸佐がいつも通り指導と称した部下への過剰な暴行を楽しんでいた。この人間のクズは既に過剰な暴行により5人の部下を亡き者にしていて、その全てを訓練中の事故として隠蔽済み。

「楠木一佐!どうか、どうかもうご勘弁を!」

「何を言う!この楠木だって本当はこんなことなどしたくない!だが貴様が余りにも腑抜けだから心を鬼にして軍人精神を注入してやってるのだ!楠木一佐!この不甲斐ない自分にもっともっと軍人精神を注入して下さいと言え!言うんだ!」

 如何にも部下を気遣っているかのように宣いつつ、全身痣だらけの部下が泣きながら土下座し許しを乞う様子を見てニヤニヤ笑うのがこのクズ一等陸佐の卑劣なところ。現在楠木がその手に持つ精神注入棒は何人もの部下の全身を血だらけにしただけあって至る所に黒ずんだ染みが目立つ。

「く、楠木一佐、何を?」

 いきなり楠木が精神注入棒をその場に投げ捨て己の衣服も下着もビリビリ破り捨てたものだから、つい先程まで号泣していた部下も何が起こったのかを全く理解出来ずにいる。運動不足に加え缶コーヒーの飲み過ぎが祟ったブヨブヨの裸体を露わにした楠木は両目を異様にぎらつかせ、両腕を左右に広げそのまま走り出した。小さな子が飛行機ごっこする様子を想像すれば大体合っている、着ている衣服の有無という相違点を除いて。



「うわぁ!何やあれはぁ!?」

「こっち来るなぁ!」

 信太山駐屯地から飛び出した全裸男楠木がそのまま街中を走っているものだから、見たくも無い全裸を目にした人々が悲鳴を上げるのは無理からぬこと。楠木は普段からミケランジェロのダビデ像並みに美しいと宣い己の弛みきった裸体を若い女性自衛官に無理矢理見せつけるのを楽しむ露出魔気質とはいえ、両目を異様にぎらつかせ両腕を広げ無言のまま疾走する今現在の全裸男楠木はより一層不気味と言わざるを得ない。

「危ない!」

 交差点に飛び出したところを丁度信太山駐屯地に向かう途中の73式大型トラックに轢かれ、全裸男楠木は全身がグチャグチャに。現役の陸上自衛官である全裸男楠木が陸自のトラックに轢き殺される格好となり、事故現場の交差点一帯が大騒ぎになったのはここに書くまでも無いか。

「何や!もうくたばったんか!オモロないなぁ!」

 秘書官が持ってきたタブレット端末の画面を見て楠木の死亡を知った横堤は激高し、その端末を怒りに任せて蹴飛ばした。何を隠そう先程内調が持ってきた毛髪は楠木のものであり、魔術により大勢の有権者を操り保守第一党に投票させようと企てている横堤はまずその魔術の実験台として楠木を選んだのである。確かに部下への過剰な暴行を楽しみ己の殺人を隠蔽する楠木は間違いなく人間のクズだろう。だからといって魔術により操り玩具にして良い筈が無い。ましてや不正選挙のため大勢の有権者を操る実験台にするなどもっての外。こういう汚い手を平然と使う横堤は楠木以上に人間のクズと言わざるを得ない。そういえばこの物語の題名は『とにかく汚い横堤』だったような。

「一応実験は成功したけどまだ遊び足りひん。せや、芹沢せりざわ亀吉かめきち!あの小僧の毛髪もあるやろ?今からアイツで遊ぶ!あの反日非国民はウチどころか天皇陛下のこともボロクソに言うとるからなぁ!楠木同様恥かかしたるわ!」

 本来1945年8月の敗戦直後に解体しておくべきだった皇室が今なお存続し続け、皇室批判デモを右翼が襲撃し警察はその襲撃を黙認と皇室反対の声を右翼と警察が潰し続け己の手を汚さずに済んでいる皇族連中が聖人面出来る現状を手厳しく批判するのは至って当然のこと。その当然のことに目くじらを立て逆恨みまでする横堤はやはり日本国首相失格と言わざるを得ない。そもそも何の権限も無い一民間人を標的に内調を動かし毛髪を盗むなど権力を私物化した悪質なストーカー行為に他ならないと明記しておく。

 横堤は魔法陣の中心に芹沢の毛髪を置き両手をかざして念を送り込むも、大阪市内のビルから出た芹沢は全裸姿になることも走ることも無くそのまま地下鉄の駅を目指す。

「何でや!何で芹沢は全裸になって走らへんねん!?楠木みたいに早よスッポンポンになって走れやぁ!」

 監視カメラの映像を盗み見し芹沢が全く操られていないことに苛立つ横堤の目の前に三面大黒天が現れた。三面六臂、即ち3つの顔と6本の腕を持ち顔それぞれが頭髪を逆立てた憤怒相、胸元及び腕には蛇が巻き付くその姿は実に禍々しい。

「横堤政美、貴様随分と汚いことをしているな。芹沢亀吉は小さな吾の像を肌身離さず持ち共に数々の寺院を巡った仲。その芹沢を魔術で操ろうとする貴様の汚い企みは実に許し難い。」

「アンタ何なん!?魔物の分際で総理であるウチにそんな口のきき方してええと思ってるん!?逝ね!」

「破壊神である吾を魔物呼ばわりとは貴様こそ無礼ではないか。無礼な貴様に罰を与える。貴様が芹沢にかけようとしていた魔術は全て吾が阻んでいたが、それを全て貴様に返そう。これから恥をかくのは芹沢ではない、横堤政美、貴様だ!」

 途端に両目を異様にぎらつかせた横堤は衣服も下着もビリビリ破り捨て、60代女性の裸体が露わに。秘書官もSPも何が起きたのか理解出来ず唖然とする中、全裸姿の横堤は先程の楠木同様無言のまま両腕を大きく左右に広げ走り始めた。横堤が全身から放つ気迫に圧倒されたのか、彼女が全裸姿のまま首相官邸の外に飛び出すのを誰も止められない。

「違法外国人は許せません!秩序ある日本のためこの入岡いりおか宙香ひろかに清き一票を!」

 現在都内にて選挙演説中の入岡宙香法務相は自身の裏金問題は棚に上げつつ排外主義者の支持欲しさに「違法外国人は許せません!」と叫び在日外国人差別を扇動する卑怯者。日本刀を持つ姿を自撮りしSNS上に投稿等物議を醸す言動には事欠かない入岡は何と選挙演説中にも腰に日本刀を差している。おいおい入岡、違法外国人は許さないと宣っておきながら自分は銃刀法違反かよ。

「あ、あれは!?」

 いきなり聴衆が逃げ出したことに驚いた入岡が右方向を見ると、何と両腕を大きく左右に広げ全裸姿のままこちらに迫る横堤の姿が。

「違法外国人めぇ!私の選挙演説を邪魔するなど許さん!成敗!」

 他の人達が全裸姿のまま都心の街中をひた走る横堤に恐れをなす中、何と入岡はその横堤を「違法外国人」と決めつけ腰の日本刀を抜きバッサリと袈裟斬りに。横堤本人が全裸姿のまま外を走るなどあり得ない、あれは横堤に変装している「違法外国人」、この入岡の手前勝手過ぎる認識はヘイトクライムを誘発しかねない。

「違法外国人、上手く総理に化けたつもりだろうがこの私の目は誤魔化せない!今すぐ化けの皮を剥いでやる!」

 そこまで言って最早惨殺死体と化している横堤の顔に触れた入岡は愕然とした。そう、たった今自分が斬り捨てた全裸女性が横堤本人だったことに漸く気付いたのだ。全身に返り血をたっぷり浴びている入岡の顔中からどんどん血の気が失せていく。

「私は、私は、私は何て、ことを。」

 そう呟くや否や入岡は手に持つ日本刀の刃を使い自らの喉を切り裂き、仰向け状態の横堤の遺体の上にたった今絶命した入岡の身体が覆い被さる格好に。一見横堤即ち日本国首相を亡き者にした責任を取るため自害したようにも見えるとはいえ、世間から「国賊」呼ばわりされ非難されるのが嫌だからあの世に逃げた、最後まで侍を気取ってカッコつけたかった、というのが卑怯者入岡が自害した動機に他ならない。本当に責任を取るつもりなら自首して裁判を受け刑に服し、今まで差別扇動の標的にしてきた在日外国人全員に許してもらうまで世間からの非難を甘んじて受け続けるのが筋というもの。

 全裸姿の横堤が入岡の選挙演説に乱入、入岡が横堤を「違法外国人」と決めつけ惨殺、自分の行いに気付いた入岡が自害、この急展開過ぎる惨事を目にした人達は数秒の沈黙の後一斉に悲鳴を上げた。かくして魔術により大勢の有権者を操る横堤の不正選挙は失敗に終わり、今回の惨事は後に「血の衆院選事件」と呼ばれるようになったとか。(終)