はらす
2026-02-01 13:52:56
2263文字
Public 忘バ
 

20251129桐智 サンタクロースの贈り物

2025/11/29 桐智 大学生 きりちゅカウントダウン 2260字
きりちゅカウントダウンに書いたもの。大学生で付き合っている桐智がベッドでサンタの話をします。
カウントダウン用のお題は「陽だまり」「クリスマス」「贈り物」でした。

夢を見ている時は、自分を夢の中だと自覚できることは少ないのに、覚めそうな瞬間はどうして、現実との境界にいると分かってしまうのだろう。ネタバレしかない予告編みたいだろ。「要圭、覚醒す!」って文字が空に浮かんでてもおかしくない。
きっぱりと目覚めてしまえば未練はないのに。いやでも、眠るような起きるような曖昧な時間で朦朧と意識を漂わせているのも気持ちがいいのは否定できない。このままあたたかい場所で、ぼんやりと雲にまみれて転がっていたい、せめて温かくて柔らかいものに触れていたいと願えば、腕は無意識に隣を探していた。
最近、目が覚めると、胸に抱きついたり、脚を絡めていることがあって、恥ずかしいやら嬉しいやら複雑な気持ちだったのだけど、あたたかい雲を求めるような気持ちだったのかもしれない。心地いいんだよな。
そう、まだ、起きるような時間じゃないことは分かってる。
あったかくてあんぜんできもちいいところにまだいたい。
理性とは関係なく、体は勝手に隣の人を求めたのに、触れたのは冷たい毛布の感触だけだった。
消えた?
寝ぼけた頭でシーツを叩くと、ぱしぱしと間抜けな音がする。触れた布はまだほんのり温かい。確かにさっきまでいたはずなのに。
いない?
動揺しているのに目蓋を開けるのはためらわれた。いないわけない。たぶん寝惚けているだけだ。俺が上手く捕まえられないだけ。
ぱしぱし。ぱしぱし。
くすっ。
シーツを叩くゆるい音に混じって、聞き慣れた含み笑いが聞こえた。からかうような、楽しそうな、低い笑い声。
そっと目を開けると、ベッドの脇の暗闇に、大きな白い影が立ち、こちらを眺めていた。
「きりしましゃん」
くすっ、とそれはまた笑う。
「ずっと寝惚けてるやん」
「俺のことはいいんです」
「よくない、可愛いもん」
彼はまた笑う。暗い中だけど、目を細めて嬉しそうにしているのが分かる。
「寒いのに裸で仁王立ちすんのやめてください」
「せやねん、寒い寒い」
真っ裸の人は、俺が毛布の端を掴んでいる手をそっと除け、冷たい空気と一緒に布団に入ってきた。ぶるりと体が震える。
「服着たら良かったじゃないですか」
「したら、要くんだけ裸やで」
彼はつんつんと乳首をつつく。やめてください、くすぐったい。指先が冷たくて、びくりと体が跳ねた。
「水飲みに行っただけやん」
「はいはい」
呆れと眠気に襲われ、適当に頷く。
「でも、めっちゃ寒かったわ」
早口で呟きながら、彼は俺に抱きついた。巻きついた彼の体は、それほど冷えた感じはないけどな。むしろ温かい。筋肉の質感が、肌を通して伝わってくる。
あたたかい筋肉を抱き返しながら、頷いた。雲みたいで気持ちいい。また眠気が押し寄せてきた。
「俺のこと、探してた?」
「いや、べつに?」
「うそやん、めっちゃ布団をぱしぱしってしてたやん。やみくもに暴れてるのが猫みたいで可愛かったのに」
彼の声に、笑いが混じっている。きっと今、すごく楽しそうな顔をしているんだろう。
「そういえば子供の時のサンタさんってどうしてました?」
「あからさまに話題を逸らすな?」
けらけらと、深夜にそぐわぬ大声で笑うところが、俺は嫌ではなかった。愉快なことが好きな彼らしい。
「枕元を叩いたので思い出しました」
「枕元に来たサンタを叩いてたってこと?結構やんちゃやな」
「やんちゃは否定しませんけど、サンタはさすがに叩きませんよ」
「そう?」
あまり信用していない口調で彼は相槌を打った。
「クリスマスの朝になったら、目を開けずに枕元を探るんです。そうしたら、プレゼントに手が当たるから、そこで目を覚ます」
「あ、やっぱりサンタさん来た!みたいなこと?」
「そうです」
「ちいさい要くん、めっちゃ可愛いな」
彼の声が、少しだけ甘くなる。ちいさい子に、そうやって話しかけるんだろうか、この人は。
「ちいさい秋斗くんは、しなかったんですか?そういうの」
「うちは、枕元までサンタは来んくて」
「はあ」
「リビングのどこかに、プレゼントを隠して帰っていくから」
「え、いいですね」
大阪ってサンタも面白いんだ、と呟くと、彼はふくふくと笑った。
「あそこんちのサンタは、ちょっと変やったからな」
変、という言葉を呟くときの声は、地元の話をする時特有の、嬉しそうなリズムを帯びていた。
「ほんでな、誰よりも早起きして」
うん、と頷くと、彼は俺の頭を軽く撫ぜた。
「暗くて寒い部屋で、ひとりでプレゼントを探すんやな」
めっちゃ楽しかった。
しみじみと呟く声は少年のようだった。
「じゃあ、今年のサンタはリビングにプレゼントを隠しましょうか」
「ほな、テーブルに、お菓子とお手紙置いとかなあかんな」
「手紙?」
「きったない字でな、サンタへ オレの分もあげる、って書くねん」
「おおきい秋斗くん、めっちゃ可愛いじゃないですか」
ふたりで笑うと、触れ合った肌がぎゅっと重なった。あたたかい。彼の体温と、俺の体温が、混ざり合っている。
「クリスマスまで、あと何日くらいやっけ」
「今日が、十一月二十九日だから」
「一か月無いな」
「そうですね」
「お菓子と手紙を買うとかんとな」
それだけ言って、彼は俺を抱き込み、すこやかな寝息をたて始めた。本当に、一瞬で眠る人だ。
十一月も終わる。
秋が終わって、冬が来る。
冬になっても、布団の中はきっと、陽だまりのようにあたたかい。
隣の人の腕を感じながら、俺は再び雲の世界へと戻った。