望月 鏡翠
2026-02-01 12:44:58
891文字
Public 日課
 

#1976 祝福の塔 ログイン

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔

 音楽の外側から、人の気配。階段の終わりに広い場所に出た。
 非現実的な空間からは考えられないほど、当たり前に、ごく普通の人たちがいて(たまにちょっと変な格好している人もいたけど)日常に戻ってきたのかと思った。
 それはトラックとクラクションの記憶を消し去ってくれたので、イヤホンはもう外せるようになった。
 どこに来てしまったのか。そもそも自分が今いる場所は、どういう構造だったのか。振り向いたが、登ってきたはずの階段はどこにもなかった。
 壁には扉があったがそれは階段ではなく、全て同じような内装のホテルの個室のようになっていた。ルームキーも宿泊予約もしていないのなら、入っちゃいけない場所だろう。
 中に誰かがいたら気まずい思いをしたところだ。
 そのまま閉じて、手持ち無沙汰なまま広場的な場所に戻った。
 受付がどこかにあるのかもしれないけれど、少なくとも見える場所にはない。探しに行くのもなんとなく面倒くさくていいやとなる。そういう気分だった。
 死んだと思っていたんだけど、違ったのかもしれない。
 いや、死んだのは多分確かなんだ。
 ドッキリにしては大掛かりすぎる。街を歩いている酔っぱらいを人間を昏睡させるか、寝落ちていたところを突然連れ出して、こんな大掛かりなセットの中に連れ込んで「はい、みなさん目が覚めましたどんな反応をするでしょう」なんてやる人間がいるとは思えない。
 やるならもっと有名人とか相手にやらないと、かけた金に対して視聴数が取れない。
 合意も取らずに突然誘拐って、コンプラ的にアウトだろうし。放送できないよ。
 あ、もしかしてデスゲームとか……
 気を失って目が覚めたら、見知らぬ空間に初対面の事情がありそうな男女が押し込められていて、そのうち司会者っぽい人が出てきて、皆様にはここで殺し合いをしてもらいますとかいうんだ。
 会場的にはそれっぽくないか。どうする、かなり〝ぽい〟ぞ。
 椅子がなかったので、しゃがみ込む。
 視線を低くすると、子供が多くて戸惑った。
 デスゲームだったら、やだなー……
 一番最初に殺される役でいいよ。