風花莉亜
2026-02-01 08:17:43
3555文字
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プロポーズノート。

第33回とどち版ワンドロワンライ参加作品。藤堂くん視点。高校3年生の藤堂くんがプロポーズの仕方を考える話。ほぼ独白で千早くんあんまりいません。いつも通りなんでも大丈夫な方向け

「ねぇ、理想のプロポーズってどんなの?」
「なに突然」
「あ、昨日のドラマの影響でしょ?」
「あはは、バレた?」

休み時間、そんな話をクラスの女子達がしているのが耳に入った。
なんでも、昨日放送した恋愛ドラマがプロポーズの回だったらしく、自分だったらこんな風にプロポーズされたい、と理想を語っているようだ。
なるほど、理想のプロポーズ、か。
俺の場合、女子がされたいプロポーズが参考になるかはわからんが、後学のために聞き耳を立てる事にした。
キャッキャッと楽しそうに語られるそれは夢物語半分、現実的半分といった所で、参考になったりならなかったり。
途中、話が脱線して先に進まんと苦笑したが、何となく彼女達の求めている『理想のプロポーズ像』とやらが見え隠れしていた。
そんな中、一貫していたのは『プロポーズの言葉はストレートに』というもので、遠回しな言い方よりもハッキリ言って欲しいとの事。
まぁ、そこは同意だな。
俺も、ど真ん中ストレートが一番だろうと考えていたから。
言葉それとして、千早は……どんな風にプロポーズされたら嬉しいのだろうか?
フラッシュモブとかは好きそうじゃないし、俺的には王道なシチュエーションが良いんじゃないかとか思うけど、果たしてどうだろう?
よく『藤堂くんの感性ってクサいですよね』とか言ってくるし、俺の理想は千早の理想と掛け離れている気がする。

千早とは、二年の夏頃に付き合い出して、一年半ほどが過ぎた。
その間に、恋人としての姿をアレコレ見てきたけれど、未だにわからない事だって色々とある。
人が内側に抱えているものなんて目には見えないし、言葉にしてくれなければ理解出来ない事だってあって。
特に千早は自分の内側に溜め込んで外に出さないタイプだから、俺が気付けていない事も沢山あると思う。
なるべく汲み取れるように、と目を凝らして感覚を研ぎ澄ませて、些細な変化にも気付けるよう努力はしているけど、俺だってそんな超人ではない。
たかだか十七年くらいしか生きていない、ただの高校生。
恋愛の経験値だってまだまだ低いしってか、千早が初めての恋人だし、色んな事が初めてなのだ。
誰かを本当の意味で好きなったのも、自ら告白したのも、好きな奴と手を繋いだのも、抱き締めたのも、キスしたのも。
それから、身体を繋げたのも。
全部全部、千早が初めてだった。

今となっては笑い話として聞いて欲しいのだが、俺は最初、初めての恋人は清楚系の子が良いな、などと考えていた。
素直で優しくて可愛い、そんな理想を詰め込んで。
けれど蓋を開けてみたら、俺と同じ性を持つ、素直とは言い難い奴と付き合っているのだから、人生何があるかわからないものだ。
人生を語るには早すぎるだろってか? そうかもしれンが、俺的には結構衝撃的な事だったんだよ、千早を好きだと思う事は。
なんだっけ、せーてんのへきれき? とか言うやつだ、多分。
そんな、とんでもない雷に打たれた俺は色々と悩んだ末に告白をして、それが見事に実ったあの日、千早の事を一生大切にしようと誓った。
大袈裟だとか気が早いなんて事は少しも思わず、ただただ俺の隣はこの先もずっと千早が良いし、千早でなきゃ駄目だって。
結婚したいと、そう思った。
つー訳で、俺の未来設計を磐石にするにはやはり、プロポーズが肝になってくる訳だ。
千早が首を縦に振ってくれるような、そんなやつが。
しかし、何が刺さるかさっぱりわからないので、思考を纏める為にもノートに色んなプランを書き出してみる事にした。
まずは俺が考え得る範囲で。

そのいち、高級なレストランで。
何かちょっとしたサプライズを混ぜつつ、ストレートに『結婚してください』って言いながら指輪を出す。
ガチガチに形から入るプランなので、千早の誕生日とか、何かしらの記念日に言うのがマスト。
サプライズについては考え中。

そのに、夜景の見える場所で。
景色の力を借りて良い雰囲気に持っていき、片膝をついて指輪の入ったケースをパカリと開く。
観覧車とも迷ったが、片膝をつくなら屋外が良いだろう。
こちらも言葉はストレートの方が良いかもしれない。

そのさん、自宅で。
同棲してからのプロポーズ。なんでもないような日常の中、つい口にしてしまったかのような自然さで。
ソファーに並んで座ってる時とかに『こーゆー時間って良いよな……出来れば、これからもずっと……こんな風に千早と一緒にいたい』みたいな感じで言ってからの『結婚してくれ』かな。
勿論、指輪は購入済みで後から出してくる。

そのよん、初デートの場所か告白した場所で。
思い出のある場所で、またひとつ思い出を重ねるのもアリだろ。そんで……

「なに書いてるんです?」
「うおっ!」

筆が乗ってきて四つめを書き始めた途中、背後から千早の声がして飛び上がる。
慌ててノートを体全体を使って隠したが、果たして間に合ったのだろうか?
千早には絶対見せられないってのに、まさかの本人登場は聞いてない。
勢いあまって教室で書いてた俺が悪いから文句は言えないけど、よりにもよって何でこのタイミングなんだ。
あ? 休み時間が終わるって? 空気読めよ時間!!
無理な事を心の中で叫びつつ、中身を見られないようにノートを閉じて、さっさと鞄の中へと突っ込んだ。
そのタイミングで授業開始のチャイムが鳴り、担当教員が教室へと入ってきた事で、千早も自分の席へと腰を下ろす。
良かった〜!! 助かった!!
今度は空気を読んでくれた時間に感謝し、そのまま机に突っ伏した。
全くもって心中穏やかでないので、とてもじゃないが寝れないだろう。
しかし、寝ているフリをしておかないと、何か言いたげなコチラを突き刺す視線に、全てを吐かされてしまいそうだった。
でもこれは、その時が来るまで絶対に秘密にしなければ。
嘘をつくのは得意ではないけれど、ここでバレたら流石に格好がつかないし、何より俺が恥ずかしい。
千早の事を繋ぎ止めておきたくて、今からプロポーズの内容を考えてましたとか、そんなん千早が知ったら笑うに決まってる。
ゲラゲラ笑われた日には、枕を濡らすかもしれない。
それだけは嫌だ。

結果として、その日は千早から物言いたげな視線を貰う一日を送ったが、言葉でノートの事を言及してくる事はなく、その日の夜に俺が枕を濡らす事もなかった。





───月日は流れて、あれから十年。
記念日でも何でもないある日、俺達が初めてデートしたその場所で、緊張にさらされながらも千早にプロポーズをした。
あの日ノートに書いた、高校生の俺が考えた背伸びしたようなプロポーズではなかったけれど、最愛の人が笑って頷いてくれたので大成功と言えよう。
頷いてくれて良かった、と感極まって涙ぐんでしまった俺を前に、その涙が引っ込むようなとんでもない事を千早は口にした。

「実は……藤堂くんが書いてたノートの中身、あの時に全部見ちゃってたんですよね」

盗み見て悪いなとは思ったんですけど、なんて付け足しつつも、少しも悪びれた様子のない口調で。
そんな千早は、自分の名前が書かれたノートを見て嬉しいと思いつつ、『やっぱり藤堂くんの感性ってクサい』と思ったらしい。
うるせェよ、後ろから盗み見といて何言ってやがる。
色んな感情が込み上げて、泣けば良いのか笑えばいいのか、はたまた恥ずかしがれば良いのか、兎にも角にも大忙しの俺を見て、千早は大きな口を開けて笑った。

「おい、笑ってンなよ」
「無理な話ですね。ふふっ」

くそう、なんだか上手くいったんだかいってないんだか。
ノートに書いてまで計画を練ったというのに、いざプロポーズとなったらビシッと決めきれなくて、理想と現実ってだいぶ違うんだなと思った。
それにしても……あのノートの中身、千早に見られてたンだな。
今日の今日までその事を気取らせなかったのだから、ノートを体全体で隠すしか出来なかった俺なんかよりも、ずっとずっと『隠しごと』が上手だ。
と言う事は、千早に何か隠し事されたら俺は気付けないんじゃ……
一瞬不安が過ぎったが、そこは愛の力でカバーしてやるのだと自分を鼓舞する。
ひとつ屋根の下で一緒に暮らせば、今まで見えてこなかった部分だって見えてくるかもだし、だからきっと大丈夫。
大丈夫、だよな?

「なに百面相してるんです? このまま見てるのも面白いですけど、そろそろ俺の事も構ってください」

背伸びした千早が、俺の唇に一瞬だけ自分のそれを重ねてむくれたような顔で言うから、やっぱり大丈夫な気がした。

END

今回も難産すぎた