えいっという軽い態とらしい掛け声と共に大きく振りかぶられたマックスの手の中のデバイスは、至極簡単にカートのフレームに取り付けられた。
「ハイ掌握ヒャクパーセント!」
「えっ早。」
「ふーん。カートくんファイアウォールこんな感じなんだー?そんなんじゃ俺に良いようにされちゃうよー?」
「……じゃあどうすれば良いん?」
「え?」
マックスの点灯ランプが細かく明滅する。
軽い悪戯でカートをハッキングしたのはマックスだが、例え部分的にでも、それは普通に激怒を食らって当然だったし、マックスも承知の上だった。そしてそれを覚悟してでもマックスがこんなことをしたのは、カートの安全のために警戒してほしかったからだ。
なのにカートと来たら。
「え……っと、もうちょっとここのセキュリティ上げて、こっちのプログラムは古いから最新のにしちゃって、あ、今流行ってるソフトの対策もしとくと良いかもなんだけど……。」
「へー。」
「カート分かってる?」
「分かんない。分かんないからマックスやって。」
「ええー……。」
「他に誰がやんの?」
きょととした顔でも何故か有無を言わせぬカートの目に、マックスはハッキングしたのは自分のはずなのにと釈然としない。
それでも折れたのはマックスだ。結果的に目的が達成できる運びだったから。
「……俺がやるけど。」
「うん。よろしくお願いしまーす。」
「ハイ……よろしくお願いします……。」
マックスは、セキュリティの向上と一緒に、ついでに簡単なメンテナンスもしてしまう。勿論マックスはカートに確認を取った。それでもカートはごく軽い調子でそれを了承し、願い出た。そしてやはりマックスはそれに対して釈然としなかった。
「……終わりましたー。」
「ハイありがとうぎざいまーす。」
「はいお疲れ様でーす。」
マックスの整備が終わって、伸びをしたり肩を回すカートを、マックスはついついじとっとした気持ちで見詰める。
「最初に言ったけどさー……。」
「うん?」
「掌握されるどころか自分から身を預けるなんてこと、簡単にしちゃダメなんだからね?」
「……うん?」
カートはまたもきょととしながら強い眼差しをマックスに向けていたが、やがて何か可笑しいと思ったのか、段々と困惑の表情に変わった。普段から下がり気味の眉尻も、一段と下がって、困り顔となっている。
「そんなの、マックス相手だからに決まってんじゃん……。」
「え。」
今度はマックスが困惑する番だった。驚愕でもある。
「え。マックスは俺からの信頼がそんなもんだと思ってたの?え?」
「え、え、え……。」
そして形勢は逆転し、マックスがカートからじとっとした目を向けられることとなる。そこに少し寂しさが滲んでいるのが、更にマックスの分を悪くする。
カートが溜め息をつく。そしてマックスを真っ直ぐに見詰める。
「へえ。マックスから見た俺ってそんな感じなんだ?そんなんじゃ今回みたいに俺ばっか良い思いすることになるな?」
まあどうやらそれも勘違いだったみたいだけど。カートにトドメの一言を言われる。
その後マックスは、自分はカートを信頼して逆に信頼も受け取っていることを証明するように、些細なことやどうでも良いことでも、カートに甘えるようになった。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.