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ぽふむん
2026-01-31 22:28:00
1293文字
Public
ワンドロ
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五寸の境界線
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
鬼飼いif
「悩みごと」「深爪」
なんとなく「着膨れ」というか、これは厚着ですが
今みたいな爪切りは、大正時代に入ってきたそうです。
本文中にもありますが「夜に爪を切るな」という訳だなぁ……と思ったり
五寸(約15センチ)はさすがにないと思ってますが、五寸釘とかけました。
切った跡の爪は、かつては処分も気を使ったそうで……
何故だろうか。
やたらと今宵は冷え込む。
どこかからすきま風が吹き込んでいるのだろうか。
その箇所を突き止めるため、しのぶは綿入れ半纏を羽織り屋敷を巡回した。
そして、原因を突き止めた。
すきま風などという生やさしいものではなかった。
雪が降り、冷たい風の吹く夜だと言うのに窓が全開となっている部屋があった。
その部屋の縁側で、大柄な男が胡座をかいて座っていた。
ランプの仄明るい灯りはある。
雪雲のせいで月明かりはない。
それだけの頼りない灯りの下、男は爪を切っていた。
最近普及しだしたニッパー式爪切りではない。
小刀で削ぐように切っていた。
爪が削ぎ落とされ、庭に落ちる間もなくその爪は灰となって消える。
そして、切ったはずの爪が瞬時に再生する。
不思議な光景ではない。
それは、この鬼がしのぶの手飼の鬼である証拠だ。
「童磨!寒いでしょう。窓を閉めてください」
背後から叱りつけてやると、童磨はビクンと跳ね上がった。
その勢いで指まで落とした。
深爪どころではない。
人差し指の第一関節が、ぼとりと薄化粧の白い地面に落ちた。
……
が
落とした指は瞬時に灰となり、新しい指が再生した。
「あら、これはごめんなさい。でも、夜爪を切ると親の死に目にあえ
……
ああ、あなたは鬼。既に親なんてこの世に居ないんでしたね」
そんな事はわかりきったこと。
しのぶなりの嫌味。
ブラックユーモアと言うやつのつもりだった。
それがわかっているのかいないのか。童磨は快活に笑った。
「なにをしているんです?」
人とは違う速度で再生してしまうというのに無駄なことを。
この鬼らしくない。
そういえば、最近少し妙だった。
何か悩みごとがあるようだった。
「親
……
かぁ。まだ幼子だった俺の目の前で、痴話喧嘩の果て心中騒動をしてのけた親なんてどうでもいいよ」
そこまでは、本当に何も気にしていないのだろうか。
童磨は陽気にケラケラと笑っていた。
そして、押し黙りため息をついた。
自分の手を見つめ、またため息をつく。
本当に寂しそうに応えた。
「
……
この爪
……
しのぶちゃんを傷つけちゃうから。ただそのお顔や肩に手を触れたいだけ。でも
……
傷つけちゃう」
そう言って、また快活に笑い
「初めてだ。心の底から触れたい
……
そう思ったのは。でも、そう思っても触れたら傷つけちゃう。それは本当に不快なんだ」
そう応え童磨は俯いた。
演技ではないという証拠だろう。
大きな身体が小さく見えた。
恋とやらをして、寂しいという感覚を知った。
そういうことだろうとしのぶは理解した。
そして、ほんの少しだけ甘えさせてやるか
……
とも思った。
「私はあなたの飼い主です。飼い犬や飼い猫に引っかかれることくらい覚悟の上ですよ」
しのぶは穏やかに応えた。
その応えに、童磨は一瞬キョトンとした。
首をかしげ
……
「わんわーん♡」
何を思ったのだろう。しのぶに抱きついた。
「ちょっ
……
飼い犬とは言いましたが、本当にじゃれつくんじゃありません。重い! それと、窓を閉めなさい。寒いです」
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