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ふじしろ
2026-01-31 11:07:29
4158文字
Public
アル7
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青い春
セマバンCP1、お疲れ様でした。
イベントで展示していた作品となります。
メイン第3部の後の話。
ちょっとした言い合いをするリッくんとタスの話です。
仮面ライダーたちと久しぶりにゴタゴタあった後、リバルの部屋に行くと入り口に鍵が掛かっていた。
俺たちの個室には一応鍵は付いているが、多分ほとんど使われていない。
俺とリバルの仲だから互いの部屋を行き来もするが、他のヤツの部屋なんか基本的に行かない。
せいぜいたまに野暮用でピアスに呼び出されて彼の部屋に行くくらいだ。
別に誰も来ないのだから鍵なんていちいち掛けなくても問題もない。
鍵の掛かったリバルの部屋の前で思案する。
扉を叩けばリバルが開けてくれるかもしれないが本当にそうするべきなのか。
もしかしたらQが仮面ライダー側についたことに何か思うところがあったのかもしれない、もしかしたらあのいけ好かないエージェントコンビにイラついているかもしれない、もしかしたら一人でいたい時だってあるだろう。
今はその時なのかもしれない。
基本的には大雑把な性格だが、こういう時はごちゃごちゃと考えてしまう。
まあ、そう思うならそっとしておく方がいいだろう。
俺はそのままリバルの部屋の前から立ち去った。
■
マイタスが来ない。
どんなに忙しくたって二日と空けることなく顔を見せるヤツなのにもう五日も見ていない。
何となくイラついて部屋の鍵を掛けていたから?
Qのことは予想通りだったけど、だから何も思わないというわけじゃない。
だから何となく部屋の鍵を掛けていた。
でもそんなのドアを叩いてくれればいいだけだ。
五日前に苛ついていたことなんかすっかり頭から消し飛んで、今はマイタスが顔を見せないことに腹を立てていた。
取りあえずドアの鍵は開けたけど、本当にこんなことなんだろうか。
苛立ちをぶつけるように僕はゲームでドカドカ銃をぶっ放していた。
だけどこんな状態だとエイムも微妙にぶれて相手は倒せはするけどクリティカルヒットの爽快感なんてない。
余計にイライラが募るばかりだった。
「リバル、いるか?」
もう止め、そう思ってゲームからログアウトしたのとほぼ同じくして部屋の入り口から声を掛けられる。
ドアの方を見るとマイタスが立っていた。
「はいはい、いますけど」
彼の顔を見た途端、怒りが爆発して嫌味を言うような口調で答える。
やっと来た、バカ、何日振りだと思ってるのさ。
そんなことを思いながらじっとマイタスの顔を見つめた。
マイタスは僕の視線に困ったような表情を見せる。
多分機嫌が悪そうだとか思っていそうだ。
そんな彼の様子はますます僕を苛立たせた。
「で、何か用?」
「いや、特に用事はないがちょっと顔を見に来た」
「ふーん。今さら?」
「いや、だってお前部屋に鍵掛けてただろ」
マイタスの顔を睨み付けると彼は言い訳する。
「別に鍵掛けたからって会わないって言ってるわけじゃないよね」
「それは俺なりに気を遣ったっていうか。気に入らなかったなら謝るが」
「マイタスってさ、何でも謝っとけば良いって思ってるとこあるよね」
いちいちマイタスの言葉が気に障り、不機嫌全開で顔を背けて文句を言うと流石に彼もイラッとしたらしい。
「俺だって何でも分かるわけじゃないし、間違えることだってあるから謝ってるんだろ」
「何で分からないのさ」
「何でって、お前なぁ
……
」
そう言ってマイタスは悲しそうな顔をする。
何で僕がお前のそんな顔見なきゃいけないんだよ。
どうしてちゃんと分かってくれないわけ。
そもそも僕が何をしたっていうのさ。
文句を言いたいことが多すぎて上手く言葉に出来ずにマイタスを睨み付けると、彼も僕のことをギロリと睨んだ。
「何だよ」
そんな顔を向けられたことなんかなくて、でも驚いたことは知られたくなくて虚勢を張ってマイタスの顔を睨み続ける。
「もういい」
ふんとわざとらしく息を吐き、マイタスは捨て台詞を吐いて部屋から出て行った。
マイタスの後ろ姿が見えなくなると足が震えて、その場にそのまま座り込む。
僕のことを睨む瞳は燃えるように紅く、視線は鋭くて本当は少しだけ怖かった。
僕のことを一番分かってくれるのはマイタスだと思っていたのにあんな顔を向けられるなんて、ショックだったのと苛つくのが身体の中でないまぜになって動けない。
何だって言うんだよ、もう。
苛立ちのまま手の届くところに転がっていたコントローラーを投げつける。
外装がプラスチックで出来ていたそれは床にぶつかると衝撃で割れて無残な姿になってしまった。
それがまた余計に僕を苛立たせた。
■
自室にいると何かイライラするからと部屋から出てきた。
そういえばそんな場所があったっけと思い付き、そのまま中庭にやって来る。
庭と言ってもここは地下なので天井はあるし、多少緑が植えられているという程度の場所だった。
歩いてみるとベンチを見つける。
取りあえず腰掛けて周りを眺めてみたが、大して面白くもなく手に持ってきた携帯ゲーム機の電源を入れる。
「あら、珍しい」
しばらくして声を掛けられて顔を上げると、そこには大きな籠を手に下げたトルスが立っていた。
彼女はそのまま僕の隣に腰を下ろし、横に籠を置いた。
「ここはね、私のお気に入りなのよ」
そう言いながらトルスは籠の中を漁る。
「何それ」
「毛糸と針。編み物、結構好きなの」
編み掛けの何かを広げながら彼女は編み物の準備を整えた。
「何かあったのかしら」
編み針を動かしながらトルスが聞いてくる。
「別に」
「そう」
答えると彼女はそれ以上何も言わずに手を動かした。
続く沈黙。
耐えられずに声を上げる。
「何か言ってよ」
「何もないんでしょ? なら話すことなんか別にないし」
トルスは手を動かしながら最低限の言葉だけを返す。
彼女の手元を眺めると器用に手先が動くたびに編み目が増えていく。
それは何だか引き込まれるような、不思議な光景だった。
「何でみんな、僕のこと分かってくれないんだろう」
トルスの手元を見つめていると心に引っ掛かっていた言葉が不思議と口から出てきた。
マイタスが一番僕のこと分かっていると思ってたんだ。
なのにあいつはあんなことを言うし、あんな風に睨んできた。
それがすごく嫌だった。
「ふふ。やっぱり何かあったんじゃない」
笑いながらトルスは手を動かし続けた。
「リバル、人間はね、他人のことなんて理解出来ないものなのよ」
僕たちが人間なのか、ということは置いておいて確かに僕らは人間の心を持ったままだ。
そんなことを考えてトルスの手元から彼女の顔へと視線を移す。
「貴方、私が編み物が好きなんて思ってもいなかったでしょ?」
「うん」
「真実と向き合って行き詰まった時に結構気が紛れるのよ、これ」
うふふと笑みながらトルスは話を続ける。
「そうね、腹を割って話すなんて言葉があるくらいだから、たまには自分のことを伝えることも大事かもね」
「それってダサくない?」
「どうかしら。私は一般的な話をしているだけだから」
トルスは僕の質問の答えをはぐらかす。
多分そこまで真剣に僕の話に付き合ってくれてるわけではなさそうだ。
そうだとしても彼女と話して少しだけ心がスッキリとした気がする。
トルスは案外面倒見がいいんだよな。
彼女は実は組織員からの人気が高い、それはこういうところがあるからなのかもしれない。
「何かめんどくさ」
「そうね」
悪ぶって呟いた言葉をトルスは否定しなかった。
そんな彼女の様子にこんなやり取りも悪くないなと思う。
僕はそのままベンチから立ち上かった。
「じゃあね」
それだけ言ってそこから離れる。
トルスは特に何も答えず、そのまま編み物を続けているようだった。
■
マイタスが部屋を出ていってから二日が経った。
いつも通りならそろそろ顔を出すよなとゲームをしながらマイタスが部屋に来るのを待っていた。
「リバル、少しいいか?」
しばらくすると思った通りにマイタスがやって来た。
「好きにすれば」
視線をゲーム機に落としたまま答える。
内心やっと来たと思ったけど、それがバレるのが嫌でなるべく興味なさそうに取り繕った。
「この間は悪かった」
「何が?」
ゲーム機をポチポチ弄りながら答えると、一呼吸置いてマイタスは話し始めた。
「その、大人気なかった。リバルのことをもっと知りたい気持ちが裏目に出たというか
……
」
「うん」
「とにかく俺が悪かった。謝らせてくれ」
ゲーム機から顔を上げてマイタスを見ると、彼は驚くほど真剣な顔をして僕のことを見つめていた。
トルスの話を思い出す。
人間は他人のことなんか分からない。
僕を一番分かってくれるのはマイタスだと思っていても、マイタスの方は僕のことをもっと知りたいという。
それは僕のことが分からないと言うことなんだろう。
本当にそういうものなんだな、今になって彼女の言葉に納得する。
それに僕もマイタスが謝ってくるだろうなとは思っていたけどその理由までは分からなかった。
僕もマイタスのことが分からなかったのだから、彼だけに謝らせるのはフェアじゃない。
「別に謝らなくていいし」
「え?」
「それよりもっと口出ししてよ。分からないなら分からないって」
立ち上がりマイタスの目を真っ直ぐ見て言葉を続ける。
「僕のこと、一番分かってるのはマイタスじゃなきゃイヤなんだよ。分かるだろ」
「リバル
……
」
戸惑い気味に僕の名前を呟くとマイタスはゆっくり近付いてきて僕の身体をやんわりと抱き締めた。
「そうだな、悪かった」
「だから謝んなくっていいって」
マイタスの背に両腕を回し、大きな身体に身を預ける。
やっぱりマイタスのことが大好きだ、改めてそう思った。
近くにいて、僕の言うことに付き合ってくれて、僕のことをちゃんと考えてくれる、彼はそんな大切な存在。
彼の胸元から顔を上げるとマイタスはじっと僕の顔を見つめて、そして顔を近付けてきた。
ゆっくりと瞼を閉じると膝を曲げたんだろう、マイタスの身体が少し離れて代わりに唇が重ねられる。
肌に当たる顎髭のくすぐったさとメガネの固い感触がここにいるのがマイタスなんだと物語る。
やっぱり僕を一番分かってくれるのはマイタスなんだとその気持ちを噛み締めた。
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