ortensia
2026-01-29 22:09:12
569文字
Public 創作
 

矛盾

創作

 手に細かい紋様が走った人物だった。後から墨を入れたのではない、生まれ付き。その人物は、生まれ付き触れた相手を、必ず死に至らせてしまう力があった。
 またある人物は、真っ白で青白い肌をしており、とても生きているようには見えなかった。しかしその人物は、何があっても体が元通りになる、絶対に死なない人物だった。ある一定の年齢から、歳の衰えも見られない。
 二人の人物は出会った。青白い人物は、紋様の走った手の人物を、不思議そうに見ながら微笑んだ。そして優しく言った。
「人は遅かれ早かれ誰しもが必ず死ぬのに、どうしてあなたを遠去けているのか。寧ろ道理にそわないわたしを遠巻きにする方が、矛盾のないことだ。」
 そう言われた紋様の人物は、思わずその優しい顔にその手を伸ばしそうになったが、その後に起こってしまうことは決して本意ではない。起こらなかったとしてもだ。
「それでも。例え自分の力があなたを道理に返すことができたとしても、それを試そうとはとても思わない。」
 柔らかく穏やかな、優しい表情をするばかりだった青白い人物は、紋様の人物の言葉を聞いて、嬉しそうに笑った。その笑顔は、ずっとずっと死を知らずに生きてきた者とは思えない、生まれたてのような笑顔だった。
 それから二人の人物たちは、二人で過ごしている。
 死が二人を別つまで。


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