トラファルガー・ローはトラファルガー家の嫡男として、正しく愛されて育てられたせいか、海賊団の船長でありながらも上品さが溢れ出てしまう。それは、正しく庶民であり立派な悪ガキをしていたペンギンとシャチにとって良くも悪くも目立つところであり、御しやすいところではあった。
「ペンギン、この後だが…………っ!」
「なんですかキャプテン」
「むぐ……んぐっ、…………」
「キャプテン、ちょうどよかった。りんごのおまけをもらったんでアップルパイ焼いたんですよ」
りんごを余らせてて……は、絶対に嘘だ。今いる島に寄港して二日目。そろそろキャプテンが「ちょっと出てくるから後は頼む」とペンギンかシャチに言いにくるころ。
ハートの海賊団の鉄の掟、『黙って出て行かない』を守るため。律儀な船長である。
そのローの口に、躊躇うことなくアップルパイを捩じ込んだペンギンの素早さに皆が感心する。こうなると育ちのいい彼は食べ終わるまで口を開けない。
「ペン……っ、んむ」
「こっちはサンシャインゴールドって品種使いました。さっきのは紅虎って品種だそうです。キャプテンどっちが気に入ったかシャチに聞いとけって言われてて……」
キャプテンが気に入った方を追加で仕入れたいらしくて……どっちが美味しいです? と、聞くペンギンに、正しく育てられたローはもぐもぐと咀嚼しながら味の品評に頷かざるを得ない。ペンギンは首をこてんと曲げて、もちろんローの “性質” をわかった上でやっている訳だが、それ故に質が悪かった。
「あ、そうだそうだシャチのお使いに追加でシナモン頼んどかねーと。使い切ったのを忘れてた。ついでに香辛料も見たいして……おれも買い出しついて行きますね! キャプテン、おれたち帰ってきたら夜にでも答え教えてくださいね」
にこりと笑って皿の上のアップルパイの残りをぐっとローの方に押し付けると、ローが食べ終わる前にと言わんばかりに足早で去っていく。残されたローが口の物をようやくごくんと飲み込んだ頃には、ペンギン姿は食堂から消え去っていた。
もちろん、シャチと連れ出って買い出しに行ったために船のどこにも居ない。
「クソがっ、…………ハァ」
漏れた言葉と、深い深いため息に、その場に残されたハートの海賊団のクルーは聞こえないフリをした。
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