《龍信+虎十二》百合な十二信ごと愛でる成立済の龍信+虎十二。今回は十二と信しか登場なし。今夜、兄貴たちを誘ってみようかと相談するプインヤのおはなし。十二信・龍信・虎十二が全部というCPベン図の積集合が狭いので、続きは「見てみたいよ」という声がもしあればいつか…。
十二は天上に向かって立ち並んでいる、ツルリとした自分たちの素足4本を小難しい顔をして眺めた。隣に寝転んでいる信一も同じようにして、神妙な面持ちで足を見つめている。
ことの始まりはこうだ。
信一と十二が明日揃って行く、商談という嘘で潜入する黒社会事の任務。その事前準備の一つとして廟街の嬢たちに問答無用で”すね毛”を剃られたのは、2人とっては誤算であると言って良かった。その店へは十二が集金に向かい、それに信一がつき合った。それだけだったというのに…だ。
黒社会事だとは伝えていない。ただし商談の関係で「明日、若くて綺麗な男が好きな変態オッサンに取り入らなきゃいけないんだよね」とだけは漏らした。「接待でご機嫌とりがいる」と。
それを聞いた廟街の強き女たちは「じゃぁ小奇麗にしなくちゃね」と口々に言い、嬉々として腕っぷしの強い黒社会の青年たちを押し倒した。その上、彼らの部下たちが聞いたこともないような情けない悲鳴を、組織のNO2たちに上げさせることにさえ成功したのだ。
十二は廟街の花町...つまりは組のしのぎの商品でもある嬢たちを傷つけるわけにもいかず、信一はただただ女たちのパワーに圧倒されて、あっという間に足の毛を毟り取られた(と彼らは思った)。2人は「やり切った」と万遍の笑みを浮かべる嬢たちに見送られながらすごすごと撤退する羽目になり、十二の家へと肩を落としながら帰ったのだ。
「もみくちゃにされて疲れた…」と一緒にベッドに身をポーンと投げ、ボトムスに脱いで床にポイっと放る。2人揃って下半身がパンツのみというマヌケさを気にする余裕はなかった。肩を並べて仰向けに寝そべると、天井に向かって足を直角にまっすぐ伸ばす。
”つるピカ”になった自分たちの足が横に4つ、仲良く並んでいる。
(男らしいはずの俺の足が…)と十二は涙目になった。
しかし両足を真っすぐ伸ばしたまま、まるでヨガするようにズイッと手前に腰から折り曲げて、より間近で自分の足を見つめた信一は違う感想を持ったらしい。
「へぇ、俺の足ってけっこう色っぽいじゃん」
感心したようにそう言った。
如何なるときであっても、自己肯定が強く自分の体のどこにも自信がある信一の言いそうなことだ、と十二が横で渋い顔をしていれば、信一が「な!」と同意を求めて隣に目を向けた。ニンマリ笑った端正な顔が、満更ではないのを物語っている。そうとは思えぬ十二は素直に反論した。
「信一がそう思うならお前にゃそうだろうけど…俺からすりゃキツい」
「え~?そうかねぇ。ほらさぁ」
共感を得ないのは納得がいかないと声を漏らし、信一が足を降ろしてゴロンと半回転した。十二の方に近づくと横寝の体勢になる。信一は再び片足だけ上げると十二の足にひっかけるように絡め、十二の足も無理やりに降ろさせた。そのままわざとらしくスルリスルリと足を擦りつける。
「ほら、気持ち良くね?」
毛が何も生えていない、ツルツルしっとりとしたお互いの肌が触れ合うのは奇妙な感覚だった。女の柔らかな肌とは違う、固くて筋肉質な男の力強い足。それも相手は信一だ。
でも確かに重なる肌の滑らかさは悪くないし、人肌というのは妙な心地よい気分を引きずり出す。正直、気持ちが良い。それに中性的な様子が際立たされるようで、信一の言う通り色っぽさは増している気はする。
とは言っても、だ。
「俺は男らしい方がいいよ」
「お前の足だって気持ちいし可愛いじゃん。膝小僧がヤンチャで」
「どんな感想だよ。俺はカッコよく、男らしくありたいっての!」
「そりゃ好きにすりゃいいけどさ。お前のご自慢の剛毛が生えてくるまでは時間がいるぞ。それまではこのままだろ。それに俺はお前の足もスキ。だからきっと虎兄貴も気に入る」
「なんで虎兄貴が出てくるんだ」
「ええ?だってせっかくツルツルなんだから、俺は龍兄貴に触って欲しいもん」
信一が体に反動をつけるように軽快に起き上がって、そのまま十二の腰に跨るように乗っかってきた。ほぼ腹に成人男性の重みがズシンと乗ったので「ぎゃっ」と十二が悲鳴を上げれば、十二の顔を上から覗き込むようにした、信一の顔が真正面やってくる。
「だってお仕事で変態オッサンに触られる前に、恋人の兄貴たちに可愛がって欲しいだろ?」
イタズラっぽく笑う十二の幼馴染は、好奇心と期待感に溢れるような瞳をしていた。十二は想像して一理あると思いながら、片思いがやっと通じた、でも恋人となってまだ1ヵ月ほどしかたっていない、公私共に自分の全てとなった虎兄貴の顔を脳裏に浮かべた。
数年前から龍兄貴と恋人関係にある信一に比べると、つき合いたてホヤホヤであるのは事実なのに、そういう浮かれた雰囲気が虎兄貴と十二の間には乏しかった。
いや、浮かれてはいる。少なくとも十二は非常に浮かれてはいるのだが、それをどのように兄貴へ真っすぐ表現すればいいのか分からず、見た目には消極的になっているのが実態だった。虎兄貴を慕うあまりに、羞恥心が湧いて行動が鈍ってしまう。これは十二の最近の悩みでもある。これまでに3回ほどセックスもしたが、どれも十二がまごまごとしている間に兄貴にリードされてしまい、尽くしたい十二としては不甲斐ないと感じていたのだ。
十二は腹筋を使って上半身を少しだけ起こすと、自分に跨っている信一の左右に広がっている足をつま先の方まで眺めた。スラリとして美しい、健脚そうな足。滑らかで艶めかしい、健康的な素肌は触れたくなるような魅力はあった。
相手が信一なら羞恥心も何もない。十二は信一の膝辺りまで手を伸ばし、そこを出発点にして太ももを通過するように上へなぞり上げていった。
確かに…これは触りたくなるかもしれない。それが男の足だったとしても、恋人の足であったなら。「抱いてください」とは徐には言えないが、初めて自分から誘うネタには…?
十二の手はやがて辿りついた信一の左右の尻を掴む。そしてパンツの上からおもむろに尻を揉みしだきながら、思案するように目を瞑りウンウンと唸った。足を伝って、兄貴を自分の奥深くまで受け入れる場所まで。ここまでの誘うラインはスムーズだ。引っかかりがないように思える。
「うーん」
「こら坊ちゃん。やめろよ、すけべ」
「龍兄貴、こういうの好きそ…」
「お前だって俺の尻揉んでんじゃん。言っても止めねぇし。楽しいの?」
「楽しい」
「虎兄貴も絶対好き。だって男だろ?あんな渋い顔でクールに決めてたって、兄貴たちもさ。すけべじゃん」
想像してみろよ、この小奇麗になった足を兄貴たちにうやうやしく触れてもらって、撫ででもらって、愛撫してもらうんだ。絶対気に入る。
「兄貴たちの可愛い俺たちなんだから、我慢できるわけない」
信一がそう言うので、また十二は(可愛い…)という言葉を拾ってムッと眉間に皺を寄せた。そこがどうにも自分と結びつかなくて難しいのだ。信一はとにかく、こんな筋肉ムキムキでパツパツの成人男性を捕まえてどう可愛く見えると言うのか。似合わないことをしてとか思われてしまったら、取り返しがつかないほど心が折れてしまう。
「無理……」
むーん、としかめっ面をした十二の返事に、しょうがない奴だなぁと信一がボヤいた。
自分の尻にある両手のひらをパシンッパシンッと軽快に払いのけると、十二に跨っていたのを止めた。代わりに十二の上にうつ伏せで完全に乗っかってしまうと、あと数センチで唇と唇がひっつきそうな顔の距離にて艶やかに優しく微笑んだ。十二の鼻を信一の煙草と香水の香りがくすぐる。
「じゃ、一緒にやろーぜ」
「えぇ…」
「ホテルの部屋は2つ取っておくけど、最初に誘うのは一緒にやろう」
信一はご機嫌だった。名案と言わんばかりの自信たっぷりな表情は、案を譲らないという意志が見える。ワガママもそうでないものも、関係なく押し通そうとする時の顔だ。
十二は兄貴たちをセックスに2人で誘う…という状況をしばし想像して、どう転ぶのかが分からず、いまだ眉間の皺を緩めなかった。
「お前とあからさまにベタベタしてるとこ見られたら、龍兄貴に怒られそうで怖すぎるんだけど」
「こんだけ俺の尻揉んどいて何言ってんだ。大体、兄貴は俺たちが遊んでたって怒らねぇよ。今更が過ぎる。そりゃさすがに穴にツッコんだら厳しい仕置きをされそうだけど、キスしてるくらいじゃ何も言わねぇだろ。前に抜き合いっこしてるの見つかった時、あの人しばらく固まった後”邪魔をしたな”とか訳の分からないこと言っていなくなったじゃん」
「ありゃ、お前が龍兄貴とつきあう前の話だろ」
「でも、あの時もう既に俺を狙ってた男たち、みんな飛ばされたり消されたりしてたじゃん」
そうだったろ?と信一が言う。それはそうだった、と十二も思った。
あの時至って平然としていた信一に対し、十二はそれなりに焦ったのを記憶していた。もしかしたら信一と引き離されるかもしれない、と不安になり落ち込んだ十二を気にした虎兄貴に詰められて、素直に理由を告白すれば「まぁ、ほどほどにしろ」と放置されたのも覚えている。もちろん、お咎めはなし。十二は「邪魔した」ってなんだ「ほどほど」ってなんだ「いいのかそれで」とクエッションマークを飛ばしたが、結局迷宮入りだった。
信一は「俺と十二は兄貴たちの中でも特別」とだけ言った。実際問題、兄貴たちは信一と十二の距離が近くても何も言わない。逆にそういう風に育ってしまったがために当たり前の所作になり、今になって四仔辺りに「お前らの距離は変だ。風紀が乱れる。自重しろ」と、鬱陶しそうな瞳を投げつけられることが少なくなかった。
「善は急げだから、今夜にしよう。空けとけよ十二」
「お前の決断力の早さなんなの」
「だって商談は明日の昼だし、明後日になったらさすがにチクチクしたすね毛が生えてきちまうだろ。兄貴たちにそんな無様な姿は見せられない。ツルツルか、立派なすね毛か、二つに一つだ」
「謎こだわり…」
十二は呆れたような声を出した。しかし観念したように、肯定の意味を込めて信一の細い腰をしっかりと抱きもした。信一がますます機嫌良さそうな表情をして、膝を後ろに折って天上に向いた足を子供みたいにパタパタとさせた。
まぁ、俺に任せておけって。
足見せつけてお誘いして、たっぷり可愛がってもらおうぜ。
だってイケてる兄貴たちは、据え膳なんて食らうはずはないんだからさ。
楽しみだな?十二。
自信満々の信一の様子に、十二は胡散臭げな視線をよこす。
しかし普段とはちょっと違うアプローチを虎兄貴にしてあげられるかも…と密かに期待に胸を膨らませもしたのだった。
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