幸希(ユキ)
2026-01-28 21:27:09
2016文字
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同じ気持ち

慣れって良いものではあるけど、当然になると怖いね。確認大事。
あとむっちゃんの謝り癖をどうにかしたかった。すぐ謝るんだもんやめなって。

「むっちゃん。」
「ん?」

お風呂から戻ってきたむっちゃん。あ、髪下りてるの可愛い。顔つき童顔ぽいのに、髪型と表情で一気に男前になるのバグでは?
って、違うそうじゃない。

「最近会話ペース落ちてると思うんだけど、不満とかあったりする?私はもっと何か話した方がいいのかなって思って焦りみたいなのが出てる。」

最近確かに会話が減り気味とは思ってた。でも、無理に喋るような事ないし、一緒にいられたら満足って思ってたから、そこまで気にしてなかった。
でも、やっさだや加州から「会話減ってる。なのにべったり。なんで?」とツッコミを入れられたら、まぁ気になってしまった。気になっただけ。気にしてるとかではない。断じて。
私の話を聞いて「うーん」とむっちゃんは腕を組む。

「会話ペース落ちちゅうのは確かにほうやけんど、不満とかそがなもん無いがよ。おまさんが傍におってくれて満足しゆうよ?」

あ、思ってる事同じだ。よかった。

「不安になっちょった?」

ホッとしたのが顔に出たんだと思う。覗き込むように顔を見られた。

ちょっと。や、一緒にいられたらそんでいいかなって落ち着いてたから、そこは嘘じゃないんだけど、何か、ふと思ったら会話減ってるな、そういえばやっさだ達からも突っ込まれたよな、今このままにしてていいのかなって考えが出て。」
「ほうやったか。不安にさせてすまざったの。」

すまなさそうな顔をしながら、優しい手つきで頭を撫でられる。

「謝って欲しいんじゃないんだけど。」

そう。謝って欲しいんじゃない。同じ考えなのか、同じ気持ちでいるのか。自分だけの思いになってないか。それが確かめたかっただけ。惰性で一緒にいるのなんて、それだけは嫌だから。
愛おしむ目を向けながらむっちゃんが口を開く。安心させようとしてくるのが分かる声音。

「さっきも言うたが、わしはおまさんが傍におってくれて、それで満足しゆう。目を向ければおまさんは気付いてわしを見てくれる。声をかければ『なあに?』ち言うて返してくれる。抱き締めれば抱き返してくれる。それが出来る距離におれるのが幸せなんじゃ。やき、不満なぞ一切ない。」

その時、不意に視線が翳る。

けんど、それが伝わっちょらんかったら意味がないねゃ。」
……。」

珍しく冷えた声だった。

「伝わらん思いなぞ言っとらんも同然じゃ。おまさんを不安にさせた。やき、すまんかったち言うたんじゃ。」
「だってそれは、私も今まで聞こうとも思ってなかったし、同じ考えしてるもんだと勝手に思ってたから、確かめるも何もないじゃん。」
「おまさんのその認識に甘えちょったのは本当の事やき。胡座かいちょったらいかんのう。」

そう言って柔らかく抱き締めてくれる。そのまま頭をまた撫でられた。

優しすぎない?」
「そうかのう。」
「それにいっつもむっちゃん、自分が悪いみたいな言い方する。」
「事実やしのう。」
「そこだって!あのね、責めたいとかそんなんじゃないんだって。私が勝手に変に考えちゃって、それだったら話をして聞けばいいじゃん、って思ったの。同じ考え、同じ気持ちなのが分かればそれで良かったの。謝ってくれとか非を認めて欲しいとか、本当にそういうのじゃないの。むやみやたらに謝らないでよ。」

不安を解消したかったのは本音だけど、だからって謝られたらむっちゃんに非があるように感じてしまう。そんな事ないのに。謝られたらどうしていいか分からなくなってしまう。
『同じ事考えてるよ。思ってるよ。だから大丈夫。』
それだけでいいの。

「私にだって言える事だから、むっちゃんだけの非とか、そういうのじゃないよ。だからこういう時謝るのやめて。謝るの禁止!」

ギャンッ!と言えば苦笑するむっちゃん。

「ほがな事言うてもなぁ。」
「むっちゃんばっか悪いみたいになるの嫌なの!てか何も悪くないじゃん!!」
「ほにほに、分かったき落ち着きや。」

ギャーギャー言い出す私を宥めるように頬を撫でる。

「私もその辺は気を付ける。やたら謝るんじゃなくて、『大丈夫だよ』って言うから、むっちゃんもなるべくそうして欲しい。」
「おまさんがそう言うなら。」
……同じ気持ちでいいんだよね?」
「おん、わしもおまさんと一緒で、傍にいられればそれでえい。“大丈夫じゃ”。」


その言葉を聞いて、ふっと身体に入ってた力が抜けた。


「でも時々はお喋りしようね。」
「時々と言わんでも毎日でもえいよ。」
「喋るネタある?」
「作ればえいし、オチのないもんでもえいがよ。」
「それもそっか。」
「ほにほに。」
「もしむっちゃんも不安とか不満とかあったら、ちゃんと私みたいに聞いてね。」
「おん。……まぁ、おまさんに不満抱くなぞあり得んがの。」


そう言って笑うむっちゃんの顔はとても男前だった。