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柄
2026-01-28 08:44:03
3999文字
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まりろ家すけべチャレンジ 3日目
ひとまず投げとこ精神
Night3 蕩けるようなキスまで
かぁん、と音が響く。思い通りに割れた木材を横に避け、また新しい原木を置く。斧を振り上げ、まっすぐに落とす。かぁん、とまた軽やかな音が響いた。
薪のストック作らないと、と採ってきた原木をリズムよく割っていく。ここから乾燥させて、そうしね部屋の中にパチパチと暖かな音を弾かせる薪ができるのだ。調子に乗って少し採り過ぎたもしれないが、多くて困るものでもないのでどんどん適度な大きさに割っていく。黒衣森に広く生息するトネリコから手軽に作れる薪は乾燥に時間はかかるものの、火の持ちが良いのでヒカセンはよく己で採取し、こうして庭で割っていくのだ。
「交代しよう」
家から出てきたエメトセルクの手には冷たい水がある。ありがたく受け取って一口飲んで、まだ大丈夫、と言うよりも早く斧を取り上げられた。
「薪、割ったことある? エメトセルクならばこう、指でパチンって」
「お前なあ
……
少なからず、私はガレアン人として生きた時代があるんだぞ」
呆れた顔をしながら斧を構えて振り下ろす姿は、確かに迷いもなく綺麗にスパンと薪が割れる。
「野営の地に必ずしも青燐水があるわけではない。軍人ならば新兵の頃に誰しもが薪割りをやらされていた」
かぁん、とまた割れていく薪に、ふぅん、とうなずく。
「今日はお前が夕食を作る番だろう。先に汗を流してこい」
エメトセルクの言葉にヒカセンはついに小さくえっ、と声を上げた。その様子にエメトセルクは顔を上げて、にやりと笑う。
「なんだ、一人では入れないのか?」
「ばかっ!」
体温が一気に上がる。逃げるように玄関を閉めれば、楽しげな笑い声は聞こえなくなった。胸を押さえてその場にしゃがみこむ。期待してない、と言えば嘘になる。けれどもそれを素直に伝えられるだけの勇気はない。あーーーー、と小さな呻き声を繰り返し、ヒカセンはのそりと立ち上がるととぼとぼと浴室へ向かった。
湯浴みを終えて着替え、エメトセルクが汗を流す間に食事の用意をして二人で食卓に並ぶ。ヒカセンが旅する間に用意されてきた家具は使い込まれすっかりこの家に馴染んだ。いくつかぶつけた傷が残るのも愛おしい。小さなテーブルに広げた食事を口にして、うまい、と告げる声によかった、と返して穏やかな食事を終えて、片付けをしてくれるエメトセルクをソファーから眺める。平和だねぇ、とぽやぽや微睡んでいたところで、不意に視界が少し暗いことに気付いて顔を上げれば、エメトセルクがヒカセンの顔を覗き込んでいた。
「こんなところで寝るな」
「ね、寝てないよっ!」
「目を閉じていたくせになにを」
どうして仮面をつけてるのにわかるんだ、と思ったところでエメトセルクの指先が仮面を取り去ってしまう。素肌に直接エメトセルクの指先が触れて、どきりとしたところでエメトセルクはさらに身を屈めると、ヒカセンを子供のようにひょいと抱き上げた。
「うわぁっ」
「暴れるな」
少しだけ高さを調整され、かぷん、と首筋を噛まれた。大袈裟なほど身体が震えてしまい、慌ててエメトセルクにしがみつけば満足気な笑い声と吐息が肌を舐める。
そう広くない家だ。すぐにベッドに降ろされたと思えばそのまま仰向けに押し倒される。耳を軽く舐められ、喉から音にならない悲鳴が溢れた。
「えっ、えめと、せるく!」
「少しだけ、だ」
耳の下の柔らかい皮膚に唇が触れた。まだほんのりと痺れるような感覚がある。そしてそれとはまた別の、少しの痛みを伴う吸い付かれる感覚に息を止めて、そうするとエメトセルクの指が寝巻きのボタンをふつりと外していった。まって、と止めようとするとそれを咎めるように甘く噛みつかれる。
ボタンを外す指先が肌を引っ掻いた。完全に開かれた服の隙間から硬い手が忍び込み、腹を撫でていく。エーテルの反発から起こる痺れだけが原因では無い。どうしようもなく震えて反応を示す身体に、エメトセルクが小さく息を吐いた。その吐息の音だけで笑った、と気づけてしまうほど、ヒカセンはエメトセルクをよく見ていた。そして、エメトセルクもまた、ヒカセンを見ている。傷跡が多く触り心地も上質ではない。それでも触れる指先が確かにヒカセンを求めていて、止めていた息を短く吐き出して、ヒカセンは小さな声でエメトセルクを呼んだ。
「力を抜け」
囁く声がヒカセンを呼ぶ。そんなこと言われたって、背中まで回った手が腰をゆっくりと撫でて、じわじわと目に見えない熱がたまり続けた体は簡単に悲鳴を上げる。仰け反った背中に手を回して少しヒカセンを抱き上げると、エメトセルクは寝巻きを抜き取ってしまった。身を捩って身体を隠そうとするヒカセンを見下ろしながら、エメトセルクは笑いながら己の服も脱いでいく。
「お前が思うようなことはまだしない」
「まだって、今まだって言った!」
「おっと。
……
今日は、しない」
すぐに下履きにも手をかけられ、抵抗もままならずあっという間にひん剥かれる。電気も消してない! 仰向けに押し倒されてるからイルーシブもできない! 半泣きでエメトセルクを睨み上げても、エメトセルクは満足げにヒカセンを見下ろすだけだ。体を隠していた腕もどかされて、ヒカセンは短い呼吸を繰り返した。
ゆるりとエメトセルクの手が動いた。胸の上、鼓動を確かめるように置いて、そのままゆっくりと撫で下ろされる。鍛えられ、傷だらけで、成長に乏しい身体だ。それでもそエメトセルクの瞳には熱が灯っていて、それが燃え移ってほてって堪らない。ゆるゆると愛撫する手は優しくて、ヒカセンは掠れた声でエメトセルクを呼ぶ。笑いながらエメトセルクは覆い被さるようにヒカセンを抱き締めると、唇をゆっくりと押し付ける。じっくりと味わって、離れて。熱い声でエメトセルクがヒカセンを呼んだ。
「少し、口を開けろ」
あ、と。気付いてしまう。きっと、深い口付けをされる。どんな目に遭うのかわかる程度に、もう何度もされてきたそれに慣れることはない。それでも小さく口を開けて待ち構えればぬるりと熱いものが入り込んだ。ゆっくりの舌が絡まる。必死に応えようとすると行方に迷う吐息が漏れた。肌をじっとりと手がなぞっていけば勝手に震えて、逃げたくて堪らない気持ちと、ようやく、と心のどこかで待ち望んでいた気持ちが混じり合う。
角度を変えながらも絡まって、少し離れたと思えば鎖骨の辺りに舌が這う。吸い付かれる感覚にむず痒さを覚えながらも必死にシーツに爪を立てながら息を整えて、整ったら頃合いにまた奪われる。
太ももの内側の、柔らかい皮膚を指先がなぞった。
「こんなところにまで、傷跡がある」
吐息が触れる距離で呟かれた声に閉ざしていた瞼を持ち上げる。ゆるゆるとなぞるそこには火傷によって引き攣った肌がある。足が焼かれた時に、装備と皮膚が張り付いて治りが悪くなってしまっただけで、酷い怪我ではなかったよ、と言い訳じみた言葉を重ねたところで、かぷん、と耳を噛まれた。
「怪我をするな、とも言わない。傷跡を残すな、とも。仕方のないことだと理解している」
ゆるゆると撫でる指先はけして疼く場所には触れない。熱はずっとずっと溜まっている。
「だが、理解と感情は別物だ」
「
………………
つまり?」
考えてもわからず、素直に尋ねればエメトセルクがくつりと喉を鳴らして笑った。身体を起こしたエメトセルクがヒカセンの片足を掴んでを持ち上げる。何も身につけていないのだ、あられも無い場所が広げられて悲鳴を上げた。
「お前に残るものは私が与えるものであって欲しい」
身を屈めたエメトセルクが内腿に歯を立てる。痛みだけではなく燻る感覚に混乱しながら悲鳴を上げたところで、くっきりとした歯形が肌に残るのがよく見えた。そのまま腰骨に唇が触れて、腹をキツく吸われる。震えながら手で口を押さえたところで、胸の下あたりに触れた唇がこら、と甘やかに囁いた。
「好きになけ」
「っ、ない、てる!」
「そちらの意味ではない」
腕を掴まれる。鍛えられた腕は柔らかさも女性らしさもないけれども、それでも楽しそうにエメトセルクは唇を寄せ、指先で撫でる。つい数時間前まで斧を振り下ろして、フライパンを握って、そうしたヒカセンの指先を口に含むと、エメトセルクはわざとらしく唾液を絡ませる音を鳴らしながら舌を絡めた。指先を甘噛みしてようやく解放された指先にはいくつか歯形が残っている。手袋をしなければ、もしこれを他の人に指摘されてしまったら。ヒカセンはどうしていいかわからない。
覆い被さるようにヒカセンの顔の横に肘を置いて、エメトセルクの顔が近付いてくる。ぎゅう、と目を閉じれば唇が塞がれて、そしてまるでノックでもするかのように舌がヒカセンの唇を突いた。つい薄く目を開けば、ギラギラした黄金がすぐそばにあって、またぎゅうっと閉じる。そして結ばれていた唇をゆっくりと解けばあっという間に蹂躙されてしまった。
絡め取られ、呼吸を奪われて、胸の奥が苦しい。顔を包むように両手で押さえ込まれ、指先がヒカセンの耳を塞いだ。ねっとりとした音が響いている。もうずっと、いっぱいいっぱいだ。混じり合った唾液が口の端から溢れ、エメトセルクが少し唇を離した隙に親指でそれを拭う。もうだめだよ、と掠れた声で呼べば、やっぱりエメトセルクは笑いながらヒカセンの肌を撫でる。そこでようやく、ずっと感じていた痺れがほとんどなくなってることに気付いた。
「もう少しだけだ」
宥めるような言葉のようで、けれどもとびっきり意地悪で。
その少しだけ、からどうにか眠りにつくまで。それはもう、たっぷり時間を要した。けれども、深いところにはやっぱり、彼は触れないままだった。
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