Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
墨色
2026-01-27 14:20:18
2500文字
Public
Clear cache
鉄の味のキス
極パロれめしし👿🦁
ハピエン厨が書いてるので、不穏だけどきっとハピエンになるよ!
二人で中華屋でも始めるよ!!
楽しそうな子どもたちの声が響く小さな庭。それをそっと見つめる、逞しい体躯を和服に包んだ男が一人。その背中に声が掛かる。
「職質されるよ、敬一君」
「
……
叶黎明」
派手で毒々しいスーツに、これまた派手で邪魔な毛皮のコートを纏った長身の男を見遣り、敬一と呼ばれた男は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「自分が育った施設が大切なのは分かるけどさ、敬一君の格好
……
どこから見ても職業、分かっちゃうよ?」
叶が自分の頬に人差し指をスッと滑らせる。『その筋の』と言いたいのだろう。獅子神は叶をもう一睨みすると、庭の見えるその場を離れた。
何故かその後をついてくる叶に、
「ついてくんなよ」
獅子神が低い声で凄みを利かせた。
一般(カタギ)の人間であれば、裸足で逃げ出しそうな迫力もこの男には通用しない。ニヤニヤとした笑みで華麗にスルーすると、獅子神の肩を抱く。
「そりゃ、オレたちが仲良しこよしなの見られたらマズいもんねぇ」
「テメーと仲良しになった覚えなんてねえよ」
叶と獅子神の属する極道組織は、長年同じシマを巡って睨み合っている関係だ。獅子神は叶に背を向け、話すことはないと拒否する。
「
……
オマエはもう知ってるんだろ?」
その肩越しに耳元に顔を寄せ、叶が囁く。
「オレらの組がやり合ってんのが、ただのポーズだってこと」
獅子神の肩が僅かに揺れた。
「あぁ、幹部ン中じゃ公然の秘密だからな、隠さなくってイイぞ」
ポンポンと肩を叩き、ニィっと歯を見せる。ふざけたカラコンのせいで、瞳の奥を覗くことが出来ない。
「たださぁ」
スゥッと目を細めて叶が声をひそめる。
「上の方がきな臭いのもホント」
上の方、と言うのは叶と獅子神の組が属する一次団体のことだ。
「そうなると
……
ポーズじゃなくなるかもね」
「けっ、オレは元々オメーと馴れ合うつもりなんてねえよ」
「ヒドいなー、オレは敬一君と仲良くなりたいのに」
叶が赤い唇で形良く弧を描き、綺麗に手入れされた指先が獅子神の頸動脈をなぞる。急所に触れられ、命を握られる格好だと言うのに、叶の手の動きは愛でるかの如く優しい。それが逆に獅子神の背筋を冷たくさせる。
「
……
傷、残らなかったんだ、残念」
そう言って次に獅子神の右手に残る古傷を撫でた。
「オレも晨君みたいに、残したかったのになー」
「
……
手加減してやったとでも言うつもりか?」
「どうかな?」
長い舌で唇を舐め、叶は愉快そうに瞳を細めた。
十日程前に、下の者同士でちょっとした諍いがあった。本来なら獅子神も叶も出張るような場面ではなかったのに、何故か叶が現場へと出向いたのだ。となれば、獅子神側もそれ相応の相手が出ていかなくてはいけなかった。
油断していなかった、とは断言出来ないなと自省する獅子神は、叶の指が這った首筋を掻く。
「次は、痕になるようにするからな。オレの牙で」
鋭い犬歯を覗かせる叶は、成る程狂犬の二つ名が相応しい。
「二度も後ろを取らせるかよ」
獅子を背負うものとして、獅子神も剣呑な視線を向けた。その瞳に、叶は満足そうに頷いた。
「もしもさ、オレの予想通りめちゃくちゃになったら
――
」
声のトーンが変わる。それはまるで悪戯を思い付いた子どものようだ。
「二人で逃げような」
「はっ?!何言ってんだ?!」
「オレ、敬一君を死なせたくないし」
気に入ってるんだ、と笑みを向ける。
「死なせるなら、オレの腹の上って決めてるから」
にこやかな笑顔と言葉の意味が、一瞬結びつかずに獅子神の脳が考えることを拒否する。
「いやいやいや!!もっと何言ってんだよっ!!」
巡った思考が言葉を飛ばす。
「だいじょーぶ、ちゃんと手順は踏むから」
声を弾ませ、叶は獅子神の体を抱き締めた。叶の愛用する甘い香水の香りが鼻腔をくすぐった。その裏に、嗅ぎ慣れた硝煙の匂い。
「なんっも安心できねえよっ!!」
抜け出そうと藻掻く獅子神を押さえつけ、叶が色を帯びた瞳で覗き込む。
「敬一君がイイ漢になるのを待ってたんだ、愉しませてくれよ」
その熱に一瞬獅子神が怯むと、叶が赤い唇を寄せた。
「
……
っ!?」
突然重なる唇に獅子神は目を閉じることも忘れた。
ほんの数秒、重ねるだけのキスで唇が離れた隙に、
「てめ
……
んんっ!」
獅子神が文句の一つでも言おうと口を大きく開けると、ヌルリと叶の舌が入り込んできた。
口腔内を柔らかで肉厚な舌が自由に動き回る。獅子神は、握り締めた拳で叶の体を叩く。離せと訴えるその拳を受け止められ、あまつさえ指を絡められる。
叶の愛飲している甘ったるいエナジードリンクの味の中に、鉄の味が混ざっている。誰の血なのか、今の獅子神にそれを考える余裕はなかった。
十分に口腔内が温まったところでやっと離された叶の舌に、長い銀糸が延びる。
その光景に、獅子神の喉がゴクリと鳴った。
艶めかしく赤い舌を口のなかに仕舞う叶が、獅子神の髪の毛を優しく梳いた。
「可愛すぎて、手順飛ばしちゃった」
それから、いつも持っているスマホで獅子神の顔を撮る。
「そんな顔で、組に戻らない方がイイよ」
耳元で囁き、クルリと背中を向けた。
「テメエっ!待てっ!!」
「続きは今度なっ!」
叶が手を振ると、獅子神のスマホが震えた。見覚えのないアカウントからのメッセージ。
『もっとオレを見ろよ』
一言と、添付ファイル。開けば、顔や耳どころが首まで赤く染め上げた獅子神本人の写真。
「
……
くそっ!」
すぐに消去すると、獅子神はスマホを握り締めた。
「
……
遅えよ」
その場に座り込み、獅子神が呟く。
上がきな臭いことなど知っている。その現場に誰が放り込まれるのかも。
獅子神は右手の人差し指と中指で自分の唇に触れた。もう残ってはいない叶の体温を確かめるように。
叶と次に会うのは
――
。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内