ne🌟
2026-01-27 12:24:46
1780文字
Public 高諸
 

3) いいから早く赤飯を炊かせろ!!

# いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く

高諸 怒り狂う高諸おじさんの雑さんの話


雑渡は怒っていた。目の前で正座して縮こまっている、二人の部下に。



「お前たちはさ、年齢はいくつになったのよ」



ここにいる理由も、雑渡が怒っている理由もわからない二人は、低く静かな雑渡の声にびくっと身体を震わせた。戸惑うように視線を交じり合わせ、意を決したように高坂の方から恐る恐る口を開いた。



「31になりました」

「私は26です」

「そう。尊奈門が狼隊に所属になって、10年経つね。陣左なんて今や狼隊の小頭になったわけだ」



かつては忍軍の中でも下っ端だった尊奈門も、今や後輩を育てる立場。高坂なんて、同期の中でいち早く出世していた。雑渡は時の流れを懐かしむように、唯一見える左目を綻ばせた。
たが、どうしてだろう。顔こそにこやかに笑んでいるのに、全身が震え上がるような圧は変わらない。さすが現役にして最強のタソガレドキ忍軍組頭。年齢を重ねても迫力は衰えることを知らない。

「そう、10年は経ってるわけだよ」

静かな静かな雑渡の声。だが、そこには確かに怒りが孕んでいる。

10年──。その長い期間の間に、自分たちは何をしでかしてしまったのだろうか。身に覚えがなければ、雑渡をここまで怒らせたことのない高坂は、無意識に生唾を飲み込んだ。



「お前たちが、自分の恋を自覚してから」



……は?



「な、にを?」



雑渡が何を言ったか理解できなかった。

いや、ちゃんと聞こえていた気がしたが、おそらく聞き間違えたに違いない。高坂はちらりと隣の尊奈門に視線をやったが、彼も眉間に皺を寄せ、困惑の表情を浮かべている。



「二人ともちゃんと聞いてなかった?お前たちが互いを好いてることを自覚してから、もう10年経ってるって言ったの」



反応が鈍い高坂たちに雑渡はもう一度、ゆっくり分かりやすく説明してくれた。なんだ、聞き間違いじゃなかったのか。尊敬する雑渡の言葉を聞き洩らしていないことに高坂は静かに安堵した。本題はそこではないのだが、そこに深く突っ込みたくないが故の現実逃避だ。

「最初はさ、小さい頃から知ってる子たちが恋をしたと知って、成長を喜んだよ。それから忍者が恋心を抱けるようになったなんていい時代になったなって。だから可愛いお前たちの淡い両片想いを、ひっそりと応援しようって思ったわけ。どんなふうに恋の芽を育てて、愛を育むんだろうって。私にはなかった感情だから」

そこまでノンブレスで言い終えると、雑渡はズズッと音を立てて竹筒の雑炊を啜った。

高坂は穴があったら入りたかった。

完璧に隠しきっていると思っていた恋心を、尊敬する雑渡に見抜かれていたなんて。自分の未熟さをこんな形で実感することになるとは思っていなかった。

それに、"両片想い"ということは、隣にいる尊奈門は自分に恋心を抱いている、ということ。鈍いだの鈍感だの散々揶揄っていた尊奈門の気持ちに気づくことができなかったわけで。

「あ、勘違いしないでね?忍びの三禁はあるけど、うち、恋愛禁止じゃないから。守るものがあるほうが死にもの狂いで生きて帰ってくれるし、それは歓迎。ただ、恋にかまけて忍務をおろそかにするなら注意はするけど。………それなのに、お前たちの恋の芽は、一向に育たないじゃん!!!」

ダンッダンッダン!と組頭が地団駄を踏んでいる。41歳の地団駄。山本元小頭が健在(定年しただけだが)なら頭をひっぱたいて止めたのだろうか。
高坂は目の前で怒り狂う雑渡をなるべく記憶に残さないよう、現実逃避のように目の前の状況から思考を反らした。

忍びである以上、自分たちは人並みの幸せは得られないものだと思っていた。だから高坂は恋心を自覚した時、それを隠し通すと決めたのだ。殺すことなどできないから。

だけど雑渡はそれは違うと言ってくれた。それなら、勇気を出して尊奈門に想いを伝えてもいいのかもしれない。

「もう、10年!いや、自覚する前から入れるともっとだよね?いつになったらお付き合いしてくれるの??私、ずっと待ってるんだけど!10年×365日!2人からお付き合い報告が聞けると信じて。お祝い金積立も城一つ建つくらい溜まってるから!」

それが、怒り狂う雑渡を鎮める、一番の手立てのようだから。