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roku
2026-01-27 10:13:15
1182文字
Public
松イチ
同窓会【松イチ】
・松本→→→→→→一之倉
・30代半ばぐらい
・ふたりとも喫煙者
この先松イチになる予定
どうして未だに独身なのか。
それは一之倉の素朴な疑問だった。なぜなら松本はあの頃から女子に人気があり、卒業後は彼女もでき、さらには同性の一之倉から見てもいい男だと思うほどに歳を重ねているからだ。
松本は少し怪訝そうに眉を寄せ、ずっと好きな人がいるから。と何の感情もない声で答えた。
ずっと?
そこまで想っている人がいながら独り身なのは、何かしらの理由があるのだろう。一之倉はこれ以上聞いてはいけない気がして、ちょっと一服してくると席を立った。
「煙草吸うんだな」
半ば逃げ込んだに等しい喫煙ルームに追いかけるようにやってきた松本はポケットから取り出した煙草に火をつけた。ただそれだけの動作がとても様になっていた。
「
……
その言葉そっくり返す」
何となく気まずい雰囲気に視線を逸らすが、狭い空間ではさほど意味をなさない。
「聞かないのか?」
「何を?」
「好きな人のこと」
視線を戻して「
……
聞いた方がいいの?」と問えばフッと笑った松本は悲しみの色を滲ませ「どうだろうな」と答えた。その表情に一之倉の胸がきゅうと苦しくなる。
高校生の頃、一之倉は松本と親友と呼べるほど仲が良かった。一之倉は卒業後もその関係は続くと思っていた。が、そうではなかった。その時、進む道が分かれてしまえば所詮友情なんてこんなものかと思った。
だけどあれから15年が経ち、親友だった男が今目の前で苦しんでいる。救ってやりたい。一之倉にそんな気持ちが生まれたのは必然だった。
「言って。全部聞くから」
「
……
後悔しねぇか?」
「しない」
真っ直ぐな瞳で松本を捉えた一之倉。
「そうか
…
」
ふうっと白い煙を吐いた松本は煙草を灰皿に押し付けた。そして壁に背を預けている一之倉に覆いかぶさるように壁に手をついた。
「
…
え
……
なに、してんの?」
息がかかるほど近い距離に当惑する一之倉。
「聞いてくれるんだろ?」と見下ろす松本の口元は微かに笑っているように見えた。
「ま、つも、と
…
?」
「一之倉、好きだ。あの頃からずっと。今でもそれは変わらない」
あまりにもストレートな告白に頭が真っ白になる。
「ちょ、ちょっと待て!」
「待たねぇ」
一之倉の顎を掴んだ松本はそのまま唇を奪った。
鋭く切れ長の瞳が大きく開く。
捩じ込まれた舌が咥内で蠢く。
松本の煙草の味が一之倉のそれを上書きするように広がっていく。
心臓が早鐘を打ちうまく息ができない。
生理的な涙が頬を伝う。
離れた唇から引いた銀色の糸。
一之倉はその場にへなへなと崩れ落ちた。
しゃがんで目線を合わせた松本は「次はこれじゃ終われねぇから」と一之倉の頭にぽんと手を置いた。
だから簡単に踏み込むな。
そう言っているように聞こえたのは気のせいじゃない。
一之倉は喫煙ルームから出ていった松本の背を見つめ、熱が残る唇を指でなぞった。
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