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うぃすま
2026-01-27 02:48:18
1476文字
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空笹 もうサッカーできないんだって
空笹
全部捏造
「雲明くんね、病気でもうサッカーできないんだって」
最後に手紙を書いたのは去年の春、転勤する先生にお礼の手紙をみんなで書いたっきりだった。先生今までありがとうございました、つぎの学校でもがんばってください、ぼくもがんばります
……
。何を書いたらいいのか分からなくて、便箋がなかなか埋まらなかった。
「お母さん、手紙のやつちょうだい!」
手紙のやつって何よ、と言いながらお母さんは封筒と便箋を一つずつくれた。青空に飛行機と雲の描かれた封筒を見て雲明の青緑の髪の毛を思い出した。
「雲明にぴったりだ」
『うんめいへ』
話したいことがたくさんあるんだ。便箋から溢れるくらいに、いっぱいあるんだ。
『げんきですか』
グラウンドで雲明が倒れたとき、空気がひやりと変わったのを覚えている。
『今日はしあいがありました、おれのチームがかちました』
雲明のお母さんが泣いてて、たくさん大人達が集まってきて雲明を隠してしまった。あんなに近くで救急車を見たのは初めてだった。
『かったけど、やっぱりうんめいがいないと楽しくないです』
さっきまであんなに近くでボールを追いかけていたのに、あっという間に雲明は病院に運ばれていった。しばらくして、病院を教えてもらってすぐ、会いに行った。
やっと雲明に会えるんだって、そわそわして仕方なかった。
でも雲明は俺の知ってる雲明じゃなくなってた。
『だからまた、いっしょにサッカーやろうぜ!』
蛇の抜け殻みたいな、空っぽの
………………………
。
「雲明くんね、病気でもうサッカーできないんだって」
そんなことない!!!
そんなことない!そんなことない!そんなことあるもんか!雲明はそんなんで終わる奴じゃない!俺は雲明とまたサッカーをやるんだ!雲明はすごい奴なんだ、誰よりもフィールドが視えていて、自分よりも大きな選手だって出し抜いて、
俺の、ライバルで
……
きっと病気だって治る。それでまた一緒に
……
一緒に
……
便箋を封筒に入れる、100円ショップで買ったサッカーボールのシールを貼った。
次の日、手紙を雲明の家のポストに入れに行った。
お母さんは雲明はもう退院したって言ってた。だからきっと気づくはずだ。
読んでくれるかな。
雲明から返事は来なかった。
お父さんにオレンジの色の封筒と便箋をもらった。便箋いっぱいに文字を書いて、サッカーボールのシールを貼った。クラブに行く途中、寄り道してポストに入れた。
雲明から返事は来なかった。
家には封筒も便箋も、もうなかった。クラスメイトに折り紙で手紙に折るやり方を教えてもらった。折り紙に文字を書いて、サッカーボールのシールを貼った。クラブの帰り道にポストに入れた。
雲明から返事は来なかった。
折り紙が無くなった。サッカーボールのシールも無くなった。クラブの帰り道に雲明がベランダにいるのを見つけた。声をかけた。
雲明から返事は来なかった。
封筒も便箋も折り紙もサッカーボールのシールも無くなった。クラブの帰り、寄り道せずにまっすぐ家に帰った。
「雲明くんね、病気でもうサッカーできないんだって」
家に帰ったら視界がぼやけてきた、写真立てに飾ってある雲明の顔がよく見えない。
今までずっと楽しかった、負けてどんなに悔しくたって雲明がいたから、次は絶対勝つぞ、負けないぞ
……
。
「ああ
……
あ
……………
」
「雲明くんね、病気でもうサッカーできないんだって」
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