部屋を暗くしたから、どんな暗闇を映す液晶も光を放って見える。その真ん前に設置された広めのソファに並んで座って、その間はポップコーンの席だ。アメリカンだなと思ったが、この暗い中優雅に紅茶を飲みながら見る映画ジャンルでもない。
単なるホラー映画よりスプラッタとかの方が得意なのではないかと言われれば、そうかもしれないと思いながらも、別に好んで見たいわけでもない。目の前で見ているのに自分が動いて干渉出来ない事象に関しては特に。
そしてホラー映画は思ったより面白かった。現実味のない現象はある意味スプラッタに似ているが、アクションよりもミステリ感がある。恐怖演出は工夫が凝らされていて、感心する。興味深く見ていると腹も減るのでポップコーンも減る。
しかし流石に可笑しいと思う。自分の左、相手の右に座らせたポップコーンに相手が手を伸ばしていたのはほんの最初だけだ。このままだとこちらばかりが食べ尽くして仕舞う。それ程集中しているのかもしれないが、だったら尚更美味いもんと一緒に楽しんだ方が良いのではないか。
物語のてきとうなタイミングで、ポップコーンバケツを越えて相手の右手を取る。勿論、ポップコーンにその手を誘導してやるつもりで。
しかし相手が手を握り返して来た。しかも結構強い力で。そんなに強く握らずともきちんとポップコーンまでその手を連れてってやるつもりだが、そう思って手をポップコーン側に引くと、余計に強く握られる。まるで引き留めるみたいに。なんだろう、後で食べるからこちらにこれ以上食べるなと言う意思表示なのだろうか。いやいやこっちはきちんと映画を楽しみながら食べたいんだからそっちもそうしろよ、そもそもそのためにここに持って来たんだろう。
何を考えているのかと映画から視線を逸らして相手の顔を映すと、その白い顔はきちんと映画に向いている。ただなんというか、顔が強張っていて。おまえまさか怖いのか。
よく考えると恐怖心の中でこちらの手に縋っている絵面だ。なのにその怖い元凶から目を離せない。目を話した隙にもっと怖いことが起こるとでも言いたげに。
こっちはいつの間にかすっかりホラー映画への興味が失せて、映画がエンドロールに入って相手がほっと息をつくまで、その顔を見ていた。エンドロール後のおまけと言う名の続き映像で最後のホラー演出が入るその時まで。もうポップコーンを自分の右隣に移して、相手とぴったり体を横付けするようにしておいて良かった。恐怖のあまり抱き着いて来た相手の衝撃からポップコーンを守ることが出来たし、役得もあったし。
ポップコーンを食べながらのホラー映画って良いものだな。
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