望月 鏡翠
2026-01-25 23:16:02
944文字
Public 日課
 

#1972 鹿山 光輝です。7

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔

 昼時を過ぎた食堂に、鹿山がいる。ここにいると思った。シラバスもそうだが、日替わりメニューのキツネうどんが好きだから。
 めちゃくちゃうまいわけではない。むしろ普通だと思う。
 ただ、それがいいといっていた。スーパーで何パックかまとめて売ってそうなあま〜く味をつけた油揚げと、あんまりコシがない麺。具はネギと蒲鉾。学食特有の安くて量が多いやつだ。温泉卵をトッピングすると豪華になる。
 そのいかにもな感じが好きらしい。女子には不評だが、俺も学食の派手さのない飯はたまに食べると安心する。手っ取り早くカロリーをとりたいときは、生協でスイートブール。飯を食べた感を味わいたいときは学食って感じだ。
 神妙な顔をしてスマホを見つめるときは、漫画を読んでいるときだ。無料チケットを待てずにちまちま課金するなら、電子書籍で読みたいやつ買った方が安くないか、 と思うんだけどそういうものじゃないいらしい。
「光輝〜、課題終わってる?」
 鹿山が顔をあげた。画面が切り替わらないのが待てないように、指先が画面を三回擦って、ホーム画面に戻った。
 読み終わった漫画の最後に表示される広告がサブリミナルみたいに画面に残った。
「どれの何?」
「必修二外」
 眉根が下がってわかりやすくしょんぼりの顔を作っている。これはやっていないな。やっていないというか、そんなものあったっけとか言い出しそうな顔じゃないか。
「そんなんあったぁ?」
 案の定だ。
「あっただろ」
 なぜか休めない必修の授業に限って、午前中とかにある。提出は明日の朝だ。やってないんなら都合がいい。お互いバイトで忙しい身の上だ。協力してやったら、早く終わる。
 というか終わらなくていいから、頑張ってやろうとしましたって態度を形に残したい。
「一緒にやろうぜ」
 もう混雑時間を過ぎているから、少しくらい長居しても怒られない。真面目な人は図書館に移動でもするのかもしれないが、あそこは雑談できないし、音楽も流せないからなんとなく居心地が悪いのだ。
 ここの方が気楽でいい。たまに追い出されたりするけど。
「持ってきてるか?」
「たぶんある。家で鞄の中身、いっぺんも出したことない」
「財布は」
「ポケット」
 鹿山はポケットを叩いた。