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い
2026-01-25 18:41:58
2184文字
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夢
ばんりさんゆめ/温くR18
万理さんと出会ってすぐの頃に見た夢を、度々思い出すことがある。
夢の中のわたしは裸で、人の行き交う道路の端っこに座り込んでいた。下着すらつけていない無防備な肢体をなんとか隠すみたいに、せめて目立たないようにと膝を抱えてしゃがみ込み、当たり前に服を着た人たちから向けられる視線に気付いてないふりをしてそこにいる。そんなわたしを他人の目から隠すように、シャツの襟までしっかりボタンをとめた万理さんが抱きしめてくれて、ほっとしたところで目が覚める。
だから、全ての衣服を取り去られた後でまだ一枚も脱いでいない万理さんと抱き合うのは好きだった。もちろんそれは外でもなければ他人に見られることもない、二人きりの部屋でのみ行われるが、そうしている間だけは夢の中で万理さんがくれた、羞恥やみっともなさがたおやかに包まれる感覚を何ひとつ損なうことなく再生できる。
どこを隠すこともできずに余さず晒した自分を受け入れてもらえる、存在そのものを赦されたような錯覚に全身がゆるむ。ただ布を纏っているかどうかなのにわかりやすく立場の違いが明確になり、髪の毛の一本から足の指先に至るまでを万理さんに管理してもらえている充足感。
「これされるの好きだよね」
「うん、すき
……
」
茹だってぼうっとする頭で言われたことを繰り返すみたいに呟いた。それを聞いた万理さんが少し笑う。
万理さんは気が立っているときほどこれをしてくれる気がするな、とひっそりと思って言葉にしないまま打ち消す。わたしが喜ぶことをしてくれているのに、わざわざ神経を逆撫でする必要はない。
「ん、ふ、ぅ
……
あうっ
……
」
万理さんの手や口が、わかりやすい場所をわざとらしく避けて這わされる。くすぐったさが入り混じる、わたしの性感を高め続けるだけのぞわぞわとした刺激に身をよじった。
まだ何もされていないに等しいのに、万理さんの体温や匂いが、どこに向けられているかわかってしまう視線や肌をなぞる指の感触が、わたしの神経を煮立たせ破壊していた。ぼんやりとした気持ちよさと期待に肌が泡立ち、より鋭敏になって快楽を拾う。もはやどこを触られても、どこに口付けを落とされても身体の奥がぎゅっと縮まるような心地がして勝手に腰や足が震えた。
「ば、んりさ
……
なん、で、そんな、たのしそう
……
」
「ん? うん、楽しいよ? 好きな子が、自分が触るだけでこんな風になってたら、もちろん」
「あ、ぁ」
手で足を持ち上げられ、開かされる。すうすうとした空気が心許なくて、やだ、服汚しちゃうから、と言い訳が口をついたが、「大丈夫、なんにもしないから」と一蹴されて嗚咽が漏れた。
「や、やだ、ばんりさん、やっ
……
」
「何が嫌なの。それとも、もうやめたい?」
「うっ
……
んんぅ」
首を振る。触られたい、から、なにもされないのが嫌なのに。そうだよね、俺のこと好きなんだもんね、と指を口に含まされ、丁寧に舌を嬲られる。
わたしは口の中すら気持ちよくなっているのに、万理さんはまだ服を脱いでもいなければ髪を解いてもいなくて、ただこれが始まる前とは違って高揚した楽しげな顔でわたしを見ていた。
その満足気とも言える表情に喉の奥から胸までが詰まって、指の関節や短くととのえられた爪の先を舌の上で味わいながら、心の中でだけうん、好き、と再び復唱するように繰り返す。
「
……
触りたいなら、自分で触ってもいいけど」
口から指が抜かれ、股関節付近に添えられる。それだけで下腹部が更に熱を持ったが、ベッドのシーツを握って耐えた。この人はわたしが自分で触ってもある程度までしか気持ちよくなれないことを知った上で言っているのだ。一人で満足できてしまうなら、絶対にそれを了承したりしないだろう。
「やだ、万理さんがいい
……
」
「それなら、もうちょっとだけ我慢してくれる?」
「うん、する
……
がまんする」
頷いた途端ぐるりと転がされ、背面から抱き締められる。後ろから胸やお腹をまさぐられ、うーんと少し悩むような声と共にどろどろに溶け切った場所を神経の塊ごと指全体で擦られてわけもわからず声を漏らした。
「
……
やっぱり一回だけならいいよ」
「あ、あ、や、まっ、あっ! 〜〜ッッ!」
「あれ、もういっちゃった? あはは、じゃあこれで終わり」
「ごめ
……
なさ、ごめんなさ、う、ぁ、ばんりさんっ
……
」
「ん、あとでね」
一瞬で達して、強張った全身から力が抜ける。シーツに顔を押し当てながら、意識だけが背中を撫でる万理さんの手の感触に集中していた。余韻の残る身体を宥めることなく、むしろそれらを掻き集めるように舌が這い肌が吸われる。そのたびに身体は勝手に跳ねて、作り物みたいに甘い声が口から出た。
それらを自分でコントロールする術はなく、わたしがどうなるかの一切が万理さんの手に委ねられていることを否応なしに理解する。わたしを守ってくれるのも安心させてくれるのも万理さんなら、それを壊す自由があるのもまた、万理さんしかあり得ない。これはそれを教え込む行為だ。
ただの夢でしかないのに、晒し者になっている、居た堪れない息苦しさに道路の隅で縮こまっているわたしを見つけて安心させるみたいに抱きしめてくれたのはこの人だったという確信と信頼が、ずっと頭から離れない。
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