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John
2024-09-01 19:38:19
2974文字
Public
武新
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水鉄砲
武新。
カルデアでの2人。
甲子太郎先生と服部君が結構出張ってます。
服部君も誰も彼も本編に欠片もない水着を着てます、注意!
「誰が言ったか『あの当時、一番強かったのは俺or私』
……
そんな一言からここカルデアで『幕末京都最強』を決める戦が始まった! シミュレーターへ京の街を再現し、人斬りたちは水着に着替えウォーターガンを手に己の
勲
いさおし
を誇る!
……
誰なんですかね、水鉄砲でウォーターバトルにしようなんて言ったのは、これで勝って本当に最強なんでしょうか? ともかく楽しい催しには違いございませんッ! 司会は
吾輩
わがはい
シェイクスピアと、ウォーターブリッツ世界大会覇者、我らがアルトリア・ペンドラゴンそして」
「
刑部姫
おさかべひめ
です、水着に着替えてきましたぁ!」
まるでスポーツ大会の実況席のようなブースから、3人が手を振ったのち、カメラは会場映像に切り替わる。
映像は、ビールを片手に大勢が集うカルデアの食堂その他、人が集まる場所に設置されたモニターへ放映されていた。
もちろん自室でくつろぎながら観戦しているものも多い。
「さあさあ、我々の自己紹介は程々に、試合中継へ戻りましょう。2人1組のバディ戦、すでに勝負は暑い京の夏に似て
灼熱
しゃくねつ
しておりますぞ」
再現されたかつての京都、明るい昼の光の下。
頭頂部へ当たり判定の紙風船を付けた2人組が、気配遮断を使う相手と対峙すべく、大路へ出た。
「誘われて来るでしょうか、伊東先生」
「給水ポイント付近で待ち伏せなんて、
粋
いき
でやらしい策をしてくれるよね。撤退してくれたらそれはそれでいいんだ。あまりここで派手に戦っても
漁夫
ぎょふ
られるかも、ってのは、わかる相手だろうし」
伊東先生と呼ばれた男
……
伊東
いとう
甲子太郎
かしたろう
はハーフパンツの水着にアロハシャツだった。
激しい動きをするためか意外とラフに前のボタンを全て開け、割れた腹筋を惜しげなくさらしている。
対して、彼と話す人物は肌を一つもさらしていない。
所々武装されたウェットスーツに、潜水夫のヘルメットをかぶった男はくぐもった声を発した。
頭部をすっぽりと
覆
おお
う赤銅色の円形ヘルメットや、腰へ横向きに付けられたボンベは重そうだが、特にふらつく様子もない。
顔の部分へ付いた丸窓は、強度を補強するためか金属の格子が付いており、中の様子はうかがえなかった。
「! 来たようです」
やがて路地から、肩へ丘を載せたような盛り上がりを養い、ふくらはぎは桜島大根のように育ち上がった肉体が現れた。
腰に面積のせまい布一枚の姿で、焦げるような陽光に姿を
晒
さら
している。
「ブーメランパンツに裸足だあ?!
褌一丁
ふんどしいっちょう
みたいな肌面積じゃないか!」
「まあ、服装規定は全員水着であることですから、ちゃんと水着という点では全くもって水着です」
「いや、でも、何ていうか。まさかアロハ
羽織
はお
った僕が
日和
ひよ
ってるのかな」
ボディビルダー選手権にでも出るような姿の裸足のマッスルは、日差しの下に筋肉の隆々たる様子をテカらせている。
「確か、参加者一覧にいた」
潜水服の奥から、敬語の崩れない声が甲子太郎の後を継ぐ。
「
田中
たなか
新兵衛
しんべえ
、ですね」
「そろそろ水も尽きるはずだ、観念し、私の手柄になるがいい」
薩摩隼人はボンベも砲身も巨大な、水大筒とでも言えるウォーターガンへ圧力を目一杯貯め、これが必殺の一撃、と気合いを高める。
「
……
服部君、あれは止めるから、頼んだよ」
「はい、伊東先生」
猿叫とともに大出力の水砲が放たれる!
甲子太郎はアロハシャツを脱いで、両手で幕のようにかざし、盾にして水塊へとダイブする。
服部の脇を抜ける際、横投げに自らのウォーターガンは投げ渡した。
服部は両手に武器を構え、器用に乱射する。
腰のボンベは酸素ではなく水の詰まったタンクだ。
槍でも柔術でもという武芸百般の
服部
はっとり
武雄
たけお
は、この水鉄砲の取り扱いにもすぐ慣れた。
激しい水撃が飛び交い、
犬矢来
いぬやらい
が濡れ。
路地へ並ぶ無人の家屋は格子戸も板塀も、高い
箇所
かしょ
まで飛沫を浴びる。
「ッグぅ!」
そのうち、やはり多勢に無勢か。
ブーメランパンツの人斬りは全身をしとどに濡らし、頭上の紙風船も湿ってしまった様子で、
忌々
いまいま
しげにうめく。
新兵衛は一度、水を一気に使って
吼
ほ
えたてるような攻勢を演じ、ひるませてから逃げを打った。
驚くほど足が早い。
角を曲がる前に視線の一矢を残して、姿を見せたまま薩摩隼人は路地へ身を躍らせた。
眉ひとつ動かない真意の知れない視線だが、殺気だけは射貫けそうなほどこもっている。
「追おう!」
「いえ、止めましょう」
勢い良く走り出そうとした甲子太郎の濡れた腕を、分厚い手袋に包まれた指がしっかり掴んだ。
「え、すこし紙風船を濡らしたし、追撃すれば仕留められるかも」
眉尻を下げて、甲子太郎は不服そうに述べる。
「もう1人の姿が見えません。待ち伏せがある可能性もあります」
服部は冷静に答える。
「
……
うえ、確かに。二度も
同じ手
まちぶせ
はないって無意識に思っちゃうし、助けに来ないから1人と思いがちだけど。
心理的
しんりてき
陥穽
かんせい
だね」
甲子太郎も、少し考えれば落ち着いて即座に危険性を理解した。
2人はそのまま、見通しの良い大路で少し方針を相談し。水の補給を優先するということで話がまとまった後は、給水ポイントへと去っていく。
路地から様子をうかがっていた新兵衛は「ふん」と
憎
にく
そうに鼻をならした。
「田中君、敵は冷静だな」
「はっ、武市先生。これはお見苦しい所を」
新兵衛は武市が姿を表すと、上品ではない態度で居たことを恥じる。
武市
たけち
瑞山
ずいざん
はへそ下から膝上までをぴっちりとフィットしておおう黒い競泳水着姿で、ウォーターガンを構えている。
もしも相手が誘われて路地に入ったら、2人で挟み撃ちにするつもりだったのだ。
武市は暗い路地で新兵衛へと歩み寄る。
その視線は義弟が負傷していないか気遣うものだったが、新兵衛はそれを察していない。
「先生、どうぞ先生は座して吉報をお待ちください。これから彼らの後を付け、隙を待ちます」
新兵衛は、惜しげなくさらされた武市の肌を見る。
彼としては武市の
玉体
ぎょくたい
が衆目にさらされていることに、嫉妬のような焦る気持ちがあった。
「
……
手強い相手だ、用心しなさい」
武市は、自分ももっと攻勢に参加しようかと思いつつ、何も言葉にせずに新兵衛の提案を
容
い
れる。
新兵衛は、武市の言いかたに、己の実力不足でそのように言わせてしまっていると歯ぎしりした。
武市の肢体と顔を、新兵衛は改めて見る。
麗しく、神々しささえ彼は義兄に感じる。
全くもって恋なのだ。
この猛々しい薩摩隼人が抱く心持ちは、千回機会があれば千回でも自分を捧げられる、激しく危険な信仰の恋である。
武市はそんな義弟をわかってそうしているのか、手を差し伸べて義弟の腕を撫でる。
手のひらが、濡れた肌へ労わるようにひたりと触れた。
それだけで、新兵衛の心には喜びと希望が渦を巻いて駆け巡るのだった。
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