John
2024-03-17 21:44:40
2259文字
Public 武新
 

水墨画と筋肉

武新、現パロです。
二人とも教師の武市と新兵衛。
頬にキス程度の描写あり。
モブ女生徒が武市に告白して振られます。
モブ女生徒の一人称です。

今日は私の高校の卒業式。
私には2年の頃から好きだった先生がいて、在学中はずっと秘密にしてたけど、今日ダメ元で告白するんだ。
バレンタインは受験真っ只中で、いろんな人が義理に見せかけたもしかしたら本命を渡してるのを横目に一生懸命、勉強してた。
その甲斐あって、行きたかった大学に合格した。
通訳か翻訳の仕事を目指したいから、文系の、私立だけどちょっとイイとこ。

私が告白しようとしている先生は古文と漢文の先生なんだけど、武市瑞山先生っておっしゃって。麗しいとか美しいってどれだけ言っても足りないくらい、水墨画みたいな綺麗な人なんだ。
現代日本人なのに漢詩が作れるらしいよ、凄くない!?

パッと見、冷たそうだけど。
優しいし、授業も上手いんだ。
文1選択してなかったら会わなかった、運命だよね。
もう私、18歳だし、大人で、生徒と先生でもなくなる。
ダメで元々ッ、もし『いいよ、付き合おう』って言われちゃったらどうしよう!

綺麗にラッピングした手作りのチョコレートを手に、卒業式が終わった後、待っていてほしいと伝えた人気 ひとけのない2階廊下へ向け階段を登る。
ふわつく気持ちみたいにスカートが ひるがえる。
このプリーツスカートとも、もうお別れかぁ。

階段から顔を出して廊下をうかがう。
あれは田中、田中新兵衛!?

ちゃんと居てくださった武市先生のすらっとした黒いスーツ姿が、でっかい筋肉と何か話してる。

いや、田中って体育の教師なんだけど、みんないないところでは呼び捨てにしてるんだよね。
妙に陰気というか、真面目なのかな……授業中、女子に対してあんまり笑顔を向けない感じっていうか。
男子からは面倒見がいい先生って結構評判が良いみたいなんだけど。

ま、体育はセクハラくそ教師が別にいて、そいつに比べたら五千兆倍くらい女子からも人気あるんだけどね。
なんか、筋肉がいい?
とか言ってる子もいた。

その田中が、武市先生と何か話してる。

え、ええ!?
今ほっぺたにキスした!?
武市先生が田中のほほに顔くっつけて、きす……ええええ!
仲がいい狼みたいに鼻先くっつけたまま話、してる。
話してる内容……なんとか聞き取れそう。

「無事、今期も終了したな……いつものホテルは、予約をしてある」
「バレンタインは忙しかったですからね」

え、バレンタインは忙しかった……今日って確かに3月14日でホワイトデーだけど。
そう、私の学校ってホワイトデーと卒業式の日程が被ってて……

わああああ!
二人とも独身で、職場内恋愛、同性のっ!
カミングアウトだっけ、そういうのって色々デリケートだってみかけたし黙ってて内緒の交際だったりする、よ、ねぇえええ!

私は大人な2人の仕草に後ずさってたみたいで、段差を踏み外し、身体のバランスが崩れて叫んでしまった。

「あ、あぁああ!!!」
「ぁ、君!?」
「!!」

私は慌てて手すりをつかみ腕の力で態勢を持ち直して、頑張って喋って誤魔化す。

「先生、今、走ってきたらなんか足を引っ掛けちゃって!」

にらんでんじゃないわよ田中ァ!!
見てないわよ。
見たけど見てない事にするわよ!

これまで授業中では見た事ない形相でコッチを睨みつけている田中新兵衛を、私は負けじと睨み返す。
そっか、もうコイツと私も先生と生徒じゃないんだ、って思うとかなり不思議な感じがする。

「は、ぅ! あの、先生。これ先生に……! お世話になったので、タケチ先生、すごくカッコよくてずっと憧れてました」

告白は、っ!
好きでしたとかの告白は我慢する!
っていうかもう玉砕した、これ!

でもお世話になったのでお菓子を渡しますって形なら。

せっかく持ってきたから、プレゼントは渡してしまおう。
歩み寄って包みを両手で差し出す。

「ありがとう……君は4月から大学生か」

武市先生は照れながら、しっかり真面目に私と向き合って、両手で心を込めたラッピングを受け止めてくださった。
肌が白くて、でも手が大人の男性の手なんだよね。

「はい!」
「通訳か翻訳の仕事を目指すそうだね」
「先生から教えていただいた事、一生大事にします!」

そう、大切な想い出にします!
なんとなく振られるって予想はしてたけど!

私が先生にプレゼントを渡して話をしている間、見ず知らずの人間に低く唸り続ける大型犬みたいな顔して田中がずっとこっちを見ていた。
ちょっとは遠慮しなさいよ、恋人なのかもしれないけど。
こっちはもうこれっきりかもしれないんだよ!?
考えてて辛くなってきた……

卒業式の余韻もあって、なんかいっぱいいっぱいになって。
自分でも何喋ってるのかわからない状態で。
でも好きでしたとかは言わない感謝の言葉を泣きながらまくし立てて、ぺこぺこ何度も感謝のお辞儀してからその場を小走りで立ち去った。

タケチ先生は心配してくださって、綺麗な顔のちょっと色素が薄い目を涙で潤ませていらっしゃるみたいだった。

田中はずっとこっちを表情変えずに睨んでた。
あんたの存在は想定外よ、振られるだろうなって覚悟はしてたけど。

うう、パパには絶対いわないでって約束しといたけど、ママには相談して、ダメ元で告白するって宣言したんだよね。
結果話したら「ほら、そんなものでしょう」って笑われるぅ。

……普通に振られたコトにしとくかぁ。
二人の関係は黙っといてあげよ。
恩に着ろよ田中ァ!!