John
2023-08-24 22:32:38
3841文字
Public 武新
 

足水

SAITAMAの武新。
この武新は既にずぶずぶの肉体関係がある。 SAITAMAの5年間にあったかもしれない二人。
R18な局部の描写はない。
ですが、シンベエ君によるタケチの足指を舐める行為があります。

R18ではないけれどセンシティブではあるというような雰囲気の作品。
2人の夏の或る日。

リン……チリン、と、透き通った風鈴 ふうりんの音が響いている。

盛夏 せいか只中 ただなか眉目秀麗 びもくしゅうれいな浴衣姿の男が、板張 いたばりの縁側 えんがわ腰掛 こしかけ長い足を下ろしている。
今は昼八 ひるやつを過ぎて ゆうにさしかかろうかという時刻だ。
縁側から庭へ差し出された男の足は、置かれた木桶 きおけの内に入れられており。
足洗い桶にられた透明な水の中に、皮をかれた白桃のような肌が足首まで浸かり、揺らめく水面の光と影の中にますます白い。

また風鈴が鳴った。
せみ やかましく うたっている。

猫の額ほどしかない小さな庭は、それでも鬼灯 ほおずき昼顔 ひるがおなどが おもむきえている。
風が通れば、まだ青い鬼灯が揺れ、鴇色 ときいろをした喇叭型 らっぱがたの昼顔が恥じらうように花弁をらし、 かえでが青々とした緑の葉をさざめかせる。

藍鼠色 あいねずいろの浴衣を着て団扇 うちわを手に持った男は座っている縁側へ畳んだ手拭いを置いて、足水で涼を取りながら、ただぼうっとそれらを ながめていた。
時折足を水の内で遊ばせ、手ずから すみで黒猫を描いた丸い団扇で気だるげに首筋を あおぐ。

「武市先生」

武市と呼ばれ、男が視線を向けると。
強い夏の日差しをものともせず、焼けた地面を素足で踏みしめ、上半身を惜しげなく さらして仁王立ちした彼の義弟がいる。
気配がなく突然いたように思えたのは、けられないよう気配遮断を使って来たのだろう。

小高い丘が現れたような盛り上がる三角筋 さんかくきんは、鮮烈 せんれつな夏を はじいて、 まぶしい。

「先生、別邸 べっていのお庭にいらっしゃると聞きまして」

武市瑞山は、団扇で浴衣の合わせのあたりを扇ぎ、風を送りながら珍しく油断しきった生返事をした。

「うん」
「申し訳ございません、お くつろぎのところ」
……構わない、田中君。君もどうだい」

あまりに主語を欠かした問いに、どうだいとは何の意図だろう、と田中新兵衛は一瞬思案する。

結局、足を水につける、足水 あしみずの誘いだと見当をつけ、田中新兵衛は答える。

「いえ、私は」

断る事は決まりきっていたが、何を理由にするかまた少し悩んだ。

「足が汚れていますので」
「汚れているなら、なおさら、洗うのはどうだ?」

武市は新兵衛に、ふっと柔らかく笑いかけながらそんな事を言う。

「いえ、報告はこのままで」

新兵衛は恐縮し、真正面を にらんだまま緊張を解かない。

ここは、勤王党本部や各ブロック支部とは別の、隠れ家 セーフハウスのような使われかたをする日本家屋だった。
手狭な一軒家だが、一人二人が寝泊まりするには良い具合に目立たない。
この隠れ家を武市は気に入り、時折 ときおり、寛ぐのにも使っていた。

「せめてその面頰は外しなさい」

直立不動の仁王立 におうだちを崩そうとせず、そのまま報告して立ち去るような気配の義弟に、武市はそう言うと。
ぱたぱたと団扇で手招きの仕草 しぐさをした。

新兵衛は、一拍の間の後、初めて目線を下げて かまえを崩し面頰を消すと、困ったような顔を見せて武市のい歩み寄る。
武市は寄って来た相手へ、また団扇で自らの隣を示し、縁側へ座るよう うながす。
少し躊躇 ためらった後、 あきらめたように、新兵衛は武市の望みに したがった。

風鈴の音が涼しげに響き、新兵衛の耳にも届く。

新兵衛は武市にその状態で『仕事』の報告をする形になった。
事は順調で、定期連絡は滞りなくあっという間に終わってしまう。

「ご苦労だった、引き続き頼むよ田中君」

新兵衛の報告が終わると、そう言いながら、武市は団扇を縁側へ置いて、桶から足を出す様子で ももを上げる。
水面が大きくかき混ぜられ、水の したたる音がする。

武市は脇に置いていた手拭いを取ろうと手を伸ばし布を つかむが、新兵衛の手が同じようにそれに伸びて別の端をしっかりと持ってしまった。
新兵衛の手は手拭いを譲らないというように引く。

二人の視線が濃密に絡み合う。
会話はしていないが、互いに意図を探り合い。
武市は新兵衛へ手拭いを譲った。

御足元 おあしもと、失礼します」
……ん」

ぽたり、と、武市の肌を伝って しずくが垂れる。
その濡れた足首に手拭いを持っていないほうの新兵衛の手が触れ、優しく掴んだ。
触れかたは優しかったが、力強さが形になった手の様子と てのひらの熱に、武市は胸の内がざわつく。
水を まとって光を弾く足は、冷えていて、新兵衛の手には しかばねの不吉さが感じられた。
足の こうは静脈が みどりに透けて、一層、青い。
肌理 きめの細やかな皮膚に光る水滴を、丁寧に時をかけて新兵衛は ぬぐっていく。

白く綺麗だとはいえ武市の足はゴツゴツと筋張 すじばって大きく、武骨 ぶこつともいえた。
足の裏はマメが幾度 いくども出来ては潰れた跡があった。
よく歩く人間の足裏は皮膚が分厚く、硬い。武市は手だけでなく足も鍛えられた様子をしているのだ。
手拭いしや、素肌の指先でその有様 ありさまを感じつつ、新兵衛は義兄の御御足 おみあしを拭く。

武市はさらに、脚を上げて、新兵衛のほうへ差し出した。
そうすると浴衣の合わせが開いて、白い脹脛 ふくらはぎ あらわになる。
武市のそれは無駄なく引き締まっており。
透明感がある白い肌の たおやかさと裏腹に、腓腹筋 ひふくきんが大きく盛り上がって。
流線型 りゅうせんけいして ひざと足首はきゅっと細い。

物欲 ものほしそうな顔をしている」

武市は足を拭かれながら、唐突に言った。

新兵衛はどきりとする。
そんな顔をしていただろうか、と思えば、武市の言いつけとはいえ面頰を外してしまったことを後悔した。

「好きにして構わないよ」
「いえ、私は何も」
「ではこう言おう。君が今、 ほっした事を為すように。これは私が君に指示する命令だ」

新兵衛は ねんを押すように言われ、目を見開いて顔色に強く感情を あふれさせる。
おそれと後悔を たたえた新兵衛の口元に大きな手がてがわれて おおい隠された、顔も手も、小刻 きざみに ふるえている。

「命令だよ、新兵衛」
「先生の玉趾 ぎょくしにそのような」
「しなさい」

新兵衛の躊躇いは、武市の言葉で断ち切られた。

新兵衛は縁側から降り、地面に膝をついて。
鍛え上げられた大きな体を かがめる。
筋骨隆々とした偉丈夫は、浴衣のよかにせに かしずいて。
うっとりと目が細められ、夢見るような目つきをし。
その真っ赤な舌が口から差し出されて、白い足指の先を、めた。

「君の口は柔らかいし、熱いな」

武市の言葉を頭上に受けながら。
手の指とは違う、肉厚の爪が新兵衛の舌に感じられる。

爪の生え ぎわから側面と肉の間、 くぼみや丸みの様子を確かめて。
大男は、麗しい男の足指を口内に くわえ込み。
はっきりとした指紋のざらつきを味蕾 みらいで味わう。
そのまま、指をしゃぶる赤子のように吸い付いて、乳を求め突起を吸い出すように。
ちゅぱちゅぱとおしゃぶりした。
口から足指を離すと、今度は指と指の隙間 すきまに残る水滴を、じゅっと くちびるで音を立て吸う。
新兵衛の舌には水が甘く思えた。
指の またに、柔らかく熱い新兵衛の舌が入り込むと、武市の口から流石に吐息 といきれた。

白い足に傅いて、今度は足の甲へ顔を移動させ、接吻を落とし、舌を出して冷えた肌を舐める。
唐突に、武市は桶に両足をついて立ち上がり、唖然 あぜんとする新兵衛をそのまま庭の かわた土へ押し倒した。
桶の水が蹴立 けたてられ、水に飢えた地面を湿らせ。
武市の濡れた足は土を吸付 すいつけ泥に まみれる。

「先生……っ!」

武市は突然の凶猛 きょうもうさそのままに、新兵衛の肌へ口付けを落とした。

「ぁ……!」
……ふ」

武市の指先が新兵衛の胸へ伸び いただき かすめ、舌先が義弟の肌をう。

そうして互いの熱を高めてしまってから、浴衣の すそを乱し新兵衛の引き締まった腹筋を またいで、武市は空を背に上から見下ろす。
獰悪 どうあくな目で射すくめられ、新兵衛の身の内が うずく。

藍鼠色の浴衣は、肌蹴 はだけて、乾いた砂埃 すなぼこり まみれて汚れてしまっている。

風鈴の音が響いて、蝉が喧しい。

空が青い。

「田中君……

存在を主張して盛り上がった胸の つぼみへ、顔を下ろし。
吐息がかかる位置で、武市は止まったまま、焦らす。
次の質問の答えが沿 わなければ続きはしないというように。

「このまま、家に上がって、風呂をび。今日は私と一緒に泊まっていくだろう? 新兵衛」