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John
2023-04-28 23:29:41
2343文字
Public
武新
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猫の嗅覚は俗にヒトの数十万倍と言われますが
猫の日な武新として以前書いてタイムライン上に画像投稿したもの。
武市先生がケモ耳尻尾です。
カルデア時空で、カルデアに召喚され済み。
ほぼ武市先生と新兵衛君の会話だけで展開する。
会話内に言及される形でインド勢が脇役サーヴァントとして出てきます。
ビーマ兄ちゃんがしれっとカルデアにいる。
「私に
黙
だま
って甘味を食べたな、田中君」
端正な白い顔が、近い。
裸で肌を触れ合わせる事もする
間柄
あいだがら
だが、だからといって、明るい室内でいきなり同意も無しにこのような事になるのは非常事態だった。
ただでさえ義兄の顔は麗しいのに。
そう田中新兵衛は思う。
「砂糖の香りがする、
揚
あ
げた小麦の香りと牛の乳の香りもする」
ぱたぱた、と獣の耳が動いた。
黒い、
天鵞絨
ビロード
のような毛に
覆
おお
われた猫の耳が、新兵衛の
面頰
めんぽお
を
叩
たた
く。
耳の主は床に引き倒した新兵衛の首筋に口付けんばかりに顔を寄せ、鼻をふんすふんすと鳴らして匂いをしきりに嗅いでいる。
霊基異常で猫の耳と尾が生えた武市瑞山は、新兵衛の面頰の
隙間
すきま
に鼻を寄せ、そこから
漏
も
れる口元の匂いを嗅いでいる。
かと思えば、胸元に顔を下ろし、
紐
ひも
の匂いを嗅ぎ。
さらに新兵衛の指先まで念入りに匂いを確認している。
「しかも、誰かと相席したのか。何だ、この匂いは。知らない体臭と香辛料の」
「次の任務で共に出撃なので、打ち合わせから流れでそうなっただけです。香辛料は食後の甘味と
咖喱
カレー
という食べ物の匂いです。本来彼らが生きて居た時代の
印度
インド
には無かったそうですが、ビーマ殿の
弟君
おとうとぎみ
がカルデアに来てから好むようになり。作っているので食べてみないかと誘われました」
今朝のことだ。
武市は猫化の霊基異常が元に戻るまで部屋にこもるつもりのようで、自分は部屋から出ない事を新兵衛に伝えると、打ち合わせに義弟を急かして送り出した。
軽い戦闘訓練を含む打ち合わせはつつがなく終了し、新兵衛は早々に部屋へ戻ろうとしたが。
そこでパーンダヴァ五兄弟の一人、ビーマから気さくに話しかけられた。
あまり会話に応じる気もない、無愛想な空気をまとう恐ろしげな面頰の男に、全く臆する様子もなく。
ビーマは、この後、自分の作っている食事を兄弟たちと食する予定だが同席しないかと新兵衛を誘った。
その仕事の打ち合わせと昼食会が終わってから、新兵衛は心配で、すぐ武市の私室に戻って来たのだ。
アルジュナも同席し、途中からどこからともなく現れたカルナが食卓に加わり。
賑やかな他家の食卓に呼ばれて混ざったような具合だった。
行われたのは食事と会話で、
疚
やま
しいことなど一つもない。
が、しかし。
「別に同席を誘われなかった事を
拗
す
ねている訳ではない」
拗ねていると思う、全力で明らかに拗ねている。
今は武市の身体の一部である長く黒い尾を見ながら、新兵衛は内心のみにその言葉を留める。
武市は無意識で気付いてないようだが、不機嫌そうに尾が床を叩いているのだから拗ねていないわけがない。
印度のとんでもなく甘い菓子があると聞いて、新兵衛は武市の
無聊
ぶりょう
を
慰
なぐさ
めるために役立つ知識かもしれないと思ったのだ。
それが、食事の誘いに応じた理由だった。
なのだが、まさかそれが裏目にでるとは。
毛艶
けづや
が良く、彼の髪のように漆黒の尻尾は、それ自体が一つの生き物のように先ほどからくねくねと良く動く。
漁港の猫を割と可愛がる男だった新兵衛は知っている。
猫の尾は表情以上に心を示す。
今の武市に、生前は沢山の猫を行きずりに構ってきたなどと言ったら、余計に拗ねそうだ。
そう思って、新兵衛はそれも黙っておく。
「今度、先生も含めて席を設ける打診をしてみますので、ともかく退いてください。匂いが気になるようなら湯を浴びます」
「駄目だ、私の匂いを付けたい」
「え
……
」
四つ足の獣のように、義弟のたくましい腹筋をまたいで両手と膝を付き、鼻を近づけていた武市が。
顔を上げて新兵衛を見下ろしながら宣言する。
「人の姿から一部変異している為か、この急かされる欲求に焦れる心を抑えられない
……
咖喱の匂いに何故か心の底が大きく波立つ、のだ。っ、ふう
……
田中君
……
」
「せ、先生、お待ちください。せんせ、え」
なんの準備もなく床で、明かりも
煌々
こうこう
と。
そんな事が一瞬で頭を駆けた新兵衛の面頰を武市が
……
ぺろぺろと
舐
な
め始める。
そして、成人男性のガタイで肩からぶつかりスーツの身体を
擦
す
り付ける。
舐める、身体を擦り付ける
……
非常に興奮した様子でそれだけが行われる。
「あ、あの。武市先生?」
新兵衛の分厚い胸板に猫耳ごと武市の頭が擦り付けられ、堪らないというように擦り上げてくる。
くすぐったいし興奮はするが。
いや何より猫耳と尻尾を生やした、180センチメートルより背丈のある生真面目な義兄が、非常に真剣な顔をして。
もはや虚無とシュールさの極地が二人きりの部屋で続けられる。
それが10分か15分か。
新兵衛には永遠にも感じられた。
最終的に新兵衛は心頭滅却の四文字を頭に思い浮かべながら全てを耐えた。
武市の霊基異常は、ジョークグッズとして戯れに配られた菓子を何も知らされず武市が食べさせられた所為だったのだが。
効果時間は軽い遊びを心得た長さであったようだ。
しばらくして、朝から一部猫化していた武市は普段の武市に戻り。
「済まなかった、田中君。醜態を、醜態を
晒
さら
した」
正座して、常にない青ざめた顔で己の仕草を義弟に詫びた。
「先生、常態ではなかったのですから。なにより私は先生のなさる事なら、この命を賭して、何であれ受け入れる覚悟です。ご安心なさって下さい」
新兵衛は武市にそう言いながら。
もしも本音がすこし変質して出ただけなら、存外に自分は愛されているな、と考えを改めるのだった。
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