John
2020-10-28 12:45:49
2633文字
Public 音楽家
 

芳町は 芋が売れぬと 八百屋いゝ

R18ではない感じ。
しかし、あまりにもしょうもない下ネタ。
ワンドロに盛り込まなかった内緒のオチ。
ワンドロ関係なしの余談として。
UPしておきます。
いいのかこれ。
なんでも許せる人向け。
腸にもたらされる効果は個人差があります。
食物繊維は良いって話も。

「ねえ、ところでさ。美味しく食べ終わってこうして作業再開したところ大変申し訳ないが。僕、これ……尻から噴出する気体で一曲奏でられそうな腹具合になってきたんだけれど。僕だけ?」

アマデウスは、サリエリが数パターン用意したミキシングの違う音楽データを再生している液晶タブレットから視線を上げ。
隣で同じくデスクに向かい、絶賛別の曲をトラックダウンの最中であるサリエリに話しかけた。
サリエリはもとより、アマデウスが芋を持ってくるまで曲を仕上げていたので、そちらの作業に戻った形だ。

「何を言っている、サーヴァントの体に排泄やそれに付随ずる生理反応が起こるだと? 相変わらずだなアマデウス。冗句も休み休み……

オーディオインターフェイスに繋いだヘッドフォンを外して、アマデウスの言葉を聞いたサリエリは。
マシンパワーのあるデスクトップ型PCのモニターから、不審げな視線をアマデウスに向け。
そこまで言ってぐっと眉根を寄せ、呻いて顔をしかめた。

……ぬぅ……? いや、馬鹿な」
「ね、ちょっとのっぴきならないでしょ」

アマデウスは、再生を止め、こちらも外したヘッドフォンをデスクに置く。

……実は君とこうしてこういう関係になって。そりゃあ音楽ほどではないけれど、夜のセッションの技巧だってそれなりに、実は、研鑽してて」

彼は手袋をしたままの手にもったタッチペンを、液晶ではない端末の枠に遊ばせたり、手の中で回したりなどしながら続ける。

「ライブラリで情報を見たことがあるんだ。日常的に行為を致す関係にある、ゲイカップルのウケは……その、ガスがポップアップしやすい食べ物を意図して控えるって」
「なんだと、食べてしまったぞ」
「いやまあ、勧めたの、僕だし」

アマデウスは、肩をすぼめて、しかしあっけらかんと述べる。

「だいたい、すっかり忘れてて今思い出したよ。僕はタチだから関係ないや、何より僕らサーヴァントだしって。笑い飛ばして全く気にしなかったんだけれど」

そこで少し、真顔になって。
神才はしょうもない可能性を指摘する。

「良く考えてみろよ、サリエリ。これはまずい。ベッドの上で最中に暴発したらコトだ」
「暴発……
「そんな情報が関係あるようになる時が来るなんて思わなかったよ? うそだろこれ?」

こまったな、という思いと同時に、腸の蠕動音という生体音をじっくり捉える機会を彼は逃していない。
しばし沈黙し、ついそちらに耳を傾けていたアマデウスに対し、サリエリの妙に感慨深そうな一言が発せられる。

……天才とは、時に余人がこだわらぬ細部にまでこだわり、作品を作るものだな」
「そんなところにこだわらなくてもいいからダ・ヴィンチ! この機能は要らなかったでしょ! 食べたらサーヴァントでもおならが出る芋とか!」

そう叫びながら。
元気よく活発に消化活動が行われ、まだ出口……サリエリの場合、毎夜のようにアマデウスが入口にも使っている……から排出には至っていないが。
腸や胃から生きている頃のような生体音がする。
しかも自分とサリエリの二人分、部屋で一緒に作曲しながら。
この妙な二重奏に喜んでしまう自分がいることも、アマデウスは認めた。

……あ、いや。僕もそれ系の部分はこだわるかもな。まずい、良くやった、偉いぞ。ちゃんとそこ削らなかったのは大事だ、って気持ちが湧いてきたぞ」

我ながら偏執的だなぁ、とアマデウスはバッチリ自分ではないほうの体の音に耳をすませつつ自嘲する。
だが、彼には当然がっかりする部分もあった。

「でも……これ。今夜は『おあずけ』かな……? 僕はまだよくても、君はダメでしょ」
「音楽で夜を明かせば良い。我らにとっては十分に欲の滾る行為だ」

サリエリはことも無げに、今夜は作品という子作りでいいだろうと提案する。
アマデウスはそれに、いたずらっ子のように舌を出して、品のない自己申告を述べる。

「演奏の最中や後で即興の一音がでちゃうかも」
「全くもって今更だな、モーツァルト」

サリエリは、それに対しては、特に驚いた様子も眉をしかめる様子もなく。
少しだけあきれた声音で返す。

「貴様が猥雑でふしだらなのは今に始まった事ではない」

そう、全て知っているぞと言わんばかりのセリフとともに、熟れた果実のような赤い瞳の目を細め、サリエリは口角をあげる。
その言いざま、セクシーとも言える優越感と思わせぶりの混じる微笑み。
アマデウスは、そのサリエリを見て。
ふるり、と、昂ぶる気持ちに武者震いした。
珍しく白い頬を薄く桃色に染め、瞳を輝かせ、熱のこもった言葉が矢継ぎ早にそのくちびるから転がり出る。

「あれ、なんかすごく興奮してきた。そんな君が見られる日が来るなんてそれこそ思ってもみてなくて。家族じゃないか!? まるで家族。サリエリが、サリエリがだよ、僕の目の前で放屁する姿をみせてくれるだって!?」

それには、余裕の笑みを崩し、サリエリは冷静に宣言する。

「馬鹿者、私は出そうになったなら離席してトイレに行く」

このままこの場で粗相することを確約したつもりなど、サリエリには全くなかった。
だが、アマデウスは目の色を変えて食いさがる。

「目の前で出していいから! 恥ずかしがらないで僕に全てを聞かせて、見せて欲しい!」

この様子にはさすがにあきれ果てたという表情で、サリエリはため息混じりに言う。

「貴様やはり変態か?」
「あー、まずいサリエリ、僕こういうのツボかも。いいんだ、無理強いなんてしないさ。そのうち自然と目の前でしてくれれば。意図せず思わず、みたいに。そしてマナー違反を恥じ入る、君の少し気まずそうな顔!」
「ずいぶんと盛り上がるな……
「いや、なんかすごい久々に『そうだよ僕ってこうじゃないか』みたいな気持ちが湧き上がってきて……

そこまで聞いて、サリエリは呆れより、にわかに少々底意地の悪い悦びが湧いた。

「身内にしか見せない姿を今、知識としてではなく。目の前で。生で見せてもらったのは。おそらく私の方だな。ここまでではなく、どうしたところで表面上はどこか気取っていただろう。そうか、家族のよう、か?」

そう言って、サリエリはアマデウスに再び優越感を秘めた視線と微笑みを送る。
見事に切り返されて、アマデウスは常にないほど、更に顔を赤く染め上げた。