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John
2020-09-27 03:32:23
2214文字
Public
音楽家
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スワンボート
現パロ
ここは、日本。
ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルトとアントニオ・サリエリは。
日本都内の大きな公園にいた。
サリエリは反対した。
なにしろこのデートスポット。
日本人の間では『デートしたカップルは別れる』と、まことしやかに囁かれる場所なのだ。
アマデウスはサリエリから聞いて、初めてそのジンクスを知るも。
駄々をこねた。
せっかく日本に来た上に。
目と鼻の先なのだから、せめてオリエンタルなロータスを見たい!
と。
そして、今、結局。
公演が終了したのち。
近くの同じホテルに泊まり、二人して朝食を済ませ。
夏の暑さもまだゆるい午前中から、蓮を彼らは見ていた。
周りはアジア系が主だが、外国人ばかり。
平日でも観光客がいる。
二人の様子は思うほど目立っていない。
アマデウスは。
美しい蓮の花がすらりと湖面から花開き。
瑞々しい花弁が紅色に輝やく様子や、緑の葉に玉のようにきらめく水滴を。
苦笑するサリエリの隣で堪能し。
そして、またしても当然のように、アマデウスは言った。
「なあサリエリ、貸しボートがある」
「おい、まさか
……
」
「足で漕ぐやつだから手は使わないし最高じゃないか」
「いや、それは」
「しかもみろよ、かわいい鳥型!」
「やはりそれか」
サリエリは呆れながら止めた。
やはりジンクスがあるからだ。
しかし、アマデウスはこれに対しても引き下がらない。
「ニューイヤーの打ち上げパーティで、知り合いの音楽家が集まった時。止められたにもかかわらず、首から顔が出るユニコーンの着ぐるみを借りてはしゃぎまくった僕だぞ」
その時の状況を身振り手振りしながら、熱弁する神に愛されし天才音楽家。
「わざわざこっそり中座して、君に手伝ってもらって着ぐるみを着込んで。もう一度パーティーやってる部屋に飛び込んで。カブキさながらに七色のタテガミを振り乱し、頭の上の首をしならせて。そしてここで一声『ハッピーニューイヤー!!』」
そして、銀と緑の入り混じる虹彩をした瞳でサリエリに射抜くような目線をそそぐ。
アマデウスは表情も、声音も、真剣そのものだ。
真剣に、スワンボートに、乗りたがっている。
「君はあの僕を見ても別れていない。スワンボートに乗りたい、と、ここで僕が押し切ったとして。君は、何か僕に失望するかい?」
聞かれて、不本意ながらサリエリはほぼ即座に答えた。
「
……
しないな。むしろここで、コミカルな形式のブツに乗ることを断固として押し切る以外のおまえを想像できない」
その答えを聞いて、まさに蓮の花が開くように。
ぱっと表情を輝かせて。
アマデウスはとびっきりの笑顔で宣った。
「だろう!? スワンボートに乗ろう」
そして、池には美形の外国人男二人が、カップルとして乗り込んだ足こぎボートが浮かんだ。
もちろん、二人が乗り込んだのは空気力学など無視され、鳥型に整形してあるボートだ。
縦方向があまりに窮屈そうだ。
先に乗り込んだアマデウスは乗り込む際に、ボート入り口のひさしへ頭をぶつけた。
その後、気をつけろとアマデウスに言われたにも関わらず、サリエリも頭をぶつけた。
百八十センチの金髪と百八十一センチの銀髪は、意気揚々と足こぎペダルをふみまわし、湖面へ漕ぎだす。
まず、アマデウスがはしゃぎまくってペダルを高速回転させた。
「おい、よせ。同じ場所で円を描いて動いている。もっと池の中央まで出ねば他のボートと衝突する」
サリエリはとりあえず、他のボートと衝突を避けるため、舵へと手を伸ばす。
「ハンドル、真ん中に一つしか無いんだけれど」
「私が舵をとる」
「えー僕がやるー!」
「やめろ、どう考えても不恰好なグランフェッテが繰り返されるだろう。おい、そんなに急に限界まで回すな
……
!」
とりあえず、ハンドルをとる事に成功したサリエリは、上手くボートを空いている湖面へと移動させた。
「と、いうか、近くで見るとますますもって水が汚いなぁ」
アマデウスがデリカシーの無い一言と同時に、大げさに鼻をつまんでみせる。
「近くを見るな、遠くを見ろ、酔うぞ」
サリエリは湖面を間近で直視する気が無いのか、文字通り遠い目をして、日差しに目を細めている。
アマデウスは、初速が嘘のように、もはやペダルに足を乗せているだけで漕いでいない。
惰性で回してはいる状態だ。
「酔うわけないだろう、全然揺れてないし。あ、そうだ、揺らそう」
「ば、馬鹿者! 揺らすな、尻と腰が
……
!」
なんだかんだと、はしゃぎながら。
二人は楽しかった。
「いやあ、僕、さ。去年」
アマデウスはなんでも無いことのように、ぽつりと言った。
「三十六歳の誕生日だったじゃないか、今年はもう三十七歳になっただろう?」
サリエリはなんの事か、いままでちらりとも何も聞いていない話が、前後のつながりなく話題に登り。
わからなくて首をかしげ、怪訝な目線で相手を見た。
アマデウスは高くなってきた夏の日差しに伸びをして。
嬉しそうに言った。
「きっと、どんなジンクスも。もう、僕らには平気さ」
「
……
?」
「お腹すいた! サリエリ、岸に上がったらお昼ご飯にしよう!」
アマデウスは怪訝そうな恋人の手に、自分の手を重ね。
もう離さないというように、指の間に自らの指を滑り込ませて握った。
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