John
2019-12-15 07:48:01
1804文字
Public 音楽家
 

アマサリのクリスマス休暇---1

現パロ。
アマサリのクリスマスです。
一軒家に二人で住んでいる、パートナー同士のアマデウスとサリエリ。
二人とも仕事は音楽に関わるもので、サリエリは作曲関係もしているようですが、ふんわりしたとこしか考えてないのでゆるっと見ていただければ。

クリスマス、年末年始にかけて音楽関係者というのは大概、忙しい。

ケーキ屋の店先でクリスマスソングを電子ピアノやエレクトーンで弾く、などという小さなアルバイトから。
ディナーショー、ライブイベント。
果ては年末年始、ニューイヤーコンサートをどこもかしこもこぞってやる。

全般的に音響から何から、ショービジネスに関わる者はかき入れ時。
祭事、イベントシーズンは繁忙期である。

作曲関係はもっと事前に忙しさのピークが来るかと思いきや。
少なくとも、私、アントニオ・サリエリは。
自らが関わった作品のパーティーや試写会に呼ばれれば聞きに行き、関係者に挨拶する。

そんなわけで、私と……私のパートナー、ヴォルフガング・モーツァルトは。
いつしか、この日が我々二人のクリスマス、と決めて。
何でもない日に五日間ほどを共に過ごす休日と決めてしまい、前倒しでクリスマスを祝う習慣ができた。

「サリエリ! すごいぞこれ、本物のモミの木!」

玄関から上ずった声が、私の名を呼んで響く。

またアマデウスは自分のポケットマネーをはたいて、しょうもないものをはしゃいで買ってきたらしい。
アマデウスというのは、モーツァルトの……彼のニックネームのようなものだ。
窓から、車が家の車庫に入る姿が見えたことで気づいてはいたが。
帰宅した旨、スマートフォンにメッセージがあったこともあり。
二階の仕事部屋から顔を出して玄関を見てみれば。
紙袋を下げた上に鉢植えを抱え、それらに隠れて長い金髪の端しか見えない男が、家の入り口でもだもだと苦戦していたという訳で。

ドアを足で開けたままに固定しながら、奴は、鉢植えから生えた青々しい木を抱えて四苦八苦している。
もう少し斜めにしなければ、横ではなく上が引っかかっている。
遠目に見ている私にはわかるが、本人は気づかず、左右にブレては紙袋を今度は引っ掛ける。
植木鉢の角や揺れる枝葉が扉の周りにぶつかる音からも、苦戦ぶりがうかがえる。
常緑樹は、葉や枝が傷つくたび、杉林のような香りをあたりに漂わせている。

「こういうのがあったほうが、雰囲気あがるって絶対。オーナメントもたっぷり買ってきた」

ウキウキとした声で、未だ玄関を超えられないアマデウスは言う。
こちらから見ると、木が喋っているようにしか見えない。
吹き抜けから見下ろしていた私は階段をおり。
その元に小走りで駆け寄った。
心配と呆れと愛しさが、同時にこみ上げるような心持ちだ。

「おまえは、手を怪我したらどうするんだ」
「大丈夫だって」
「鉢植えの端を半分持とう、私のほうが腕力はある」

数年前、寿司のパックを笑顔で大量に買い込んで。
スシ・パーティーだ! などと言い出したアマデウスを思い出す。
互いに初日の夜、『メインディッシュ』の前にはそんなに食べず、翌日からゆっくり酒と食事を会話とともに楽しむのだ。
すぐ悪くなってしまう足の早い食べ物をそんなに買い込むのは失敗だと。
その時のアマデウスは次の日、色の悪くなったマグロを見て初めて気がついたらしく。
しょぼくれた顔がまたそれはそれで可愛かった。

私は鉢植えに手を添えると、抱え上げれば頭より先が高い木を、少し傾けてするりと中に導き入れていく。
アマデウスの方を見れば。
高揚した表情で、ともに鉢植えの木を抱えるその目はキラキラと輝いていた。
澄んだグリーンアイは子供のような無邪気さをたたえて。
神の声を聞いたような、私では思いもよらない音を導き出す脳がその瞳の奥に血潮を通わせている。

音だけではない、この男と暮らしていると、私では思いつきもしない遊びを日々提案してくると生活を共にして益々知った。
共にいて人生に飽きない、私はアマデウスのそんなところも、愛おしいと思っていた。

「階段の踊り場か、ダイニングに持っていくのか?」

やっと玄関のドアを超えさせた木を抱え、どこに置くつもりか確認する。

「いや、僕らの寝室に、いいでしょ?」
「わかった」

私は目を細め、笑顔を浮かべながら。
土の詰まった鉢植えを抱え直し。
なるべくアマデウスにかかる重さが減るようにと力を込める。

さらに何往復かし、車の荷物を全て下ろしてしまう。
冷蔵庫は腹を膨らまし、食べ物ではないオーナメントの詰まった紙袋は、鉢植えの木とともに寝室の角に並べられた。