syanpon
2026-01-25 17:27:35
1401文字
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妥協すなわち甘えなり

オトスバサンド
ふわっと誅のあと


 ナツキスバルは寝つきは悪いが寝起きは悪くない。
 オットーは自身のことをそこまで寝起きが悪いと感じたことはなかった。そのため自分とよく似た男もそうなのだろうと思っていたのだが。

「は? 何してるんですか」
「膝枕」
「なんで?」
「こいつ朝すげー低血圧で休日は全く布団から出てこねぇの。だから無理矢理引っ張り出して飯食わせて今二度寝してる」
「ええ……
「うぅん、スバルさん寒い……

 ソファの上で膝を貸している恋人とその上に転がって甘えている恋人のもう一人の恋人であるよく似た男。(スバルは三人で付き合ってる訳だからお前ら二人も恋人なんじゃねぇの? なんて抜かすが勘弁してほしい)スバルのなんてことない口ぶりからオットーが今まで知らなかっただけでよくある二人の日常の風景のようだ。スバルの膝の上で男がもぞもぞとみじろぎ一瞬身体を起こし、ソファ越しにオットーと視線がかち合う。

……
……
「スバルさん〜」
「こいつ! こいつ! ナツキさんこいつ‼︎」
「ウウンアタマニヒビクナー……
「すごい棒読み!」
「オットー! 俺が無理矢理起こしたし可哀想だからこのまま寝かせてやろうぜ」
「騙されてるチクショウ! おぞましいからやりませんけどそいつ僕が膝枕変わりますって言ったら絶対秒で起きますよ。あー! 抱きつくな! 頬を擦り寄せるな! ナツキさんからはなれろ! あんたもこいつに甘すぎるんですって!」

 目が合った時に死んだ表情筋が明らかに「やばい」というように引き攣ったのをオットーは見逃さなかった。つまり彼は低血圧や寝起きが悪いといったことを免罪符にスバルに甘えまくっているのである。スバルが甘いせいもあるがそこにつけ込むなんて言語道断だ。
 オットーはスバルに甘えるよりかはスバルを甘やかしたいから両の指くらいしか羨ましいとは思わないが。
 スバルの手で髪の毛をとかされながら男は目を閉じたままポヤポヤとした言葉を飛ばす。

「あの人は寝起きいいんですか……
「割といい方。俺オットーが寝ぼけてるとこあんま見たことないかも」
「んふふ、寝ぼけたらあの人逆にスバルさんに膝枕してそう……
「えぇ、どうかな。酒でべろべろになってるのは何回か見たことあるけど。俺は甘やかすのも甘やかされるのも好き。できれば愛してください」

 目の前の男は絶対に寝ぼけてなんかいない。これは断言できる。だからこその今の会話だ。お前も寝ぼけたふりをしてもいいぞという謎の許可、妥協点を提示された。

「ぐ、ぐぬ……

 あの男がナツキさんにつけ込んで甘えているのは気に食わない。
 でもナツキさん本人はそれを喜んでいて。なんならオットーにも甘やかされるのを望んでいて。男につられてちょっと眠たくなってるナツキさん可愛いな。温かいココアとブランケットでも持ってきてあげようか。じゃなくてナツキさんが可愛いのは今はよくて、よくはないんだけどああもう!

「ぐ……
「どうしたオットー? 腹でも痛い?」
「いえ……。己の弱さを恥じていたところです」
「?」
「ちょっと首傾げないでもらっていいですか可愛いので」
「なにそれどう言う情緒!?」
 
 ――後日膝枕をされ手ずから食事を食べさせられることになるとはスバルは夢にも思っていなかったしその後オットーの肌艶はとてもよくなった。