コット
2026-01-25 17:22:23
4893文字
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エメ(ラハ)光♀

試し読み


 ぎし、ぎしと軋むベッド。
 くぐもった吐息。
 グチュグチュと擦れあう、水の音。

 聞き覚えのある卑猥なそれに、一瞬にして思考がクリアになる。

 肉体が反応しなくてよかった。
 そう思えるほど明らかな。

……ここは、どこだったか)

まばたきをして、あたりを見渡す。

(クリスタリウムの、彼女の居室? では、この衝立の向こうにいるのは)

――覗いたら、駄目だ。

 ⌘

 男女の脱ぎ捨てられた服が、乱雑に床に落ちている。
 ベッドに腰かける男と、その大腿に挟まれるように、ぺたんと地べたに座る彼女の背中。――素肌の。

……もう、いい」
 その髪と耳を撫でながら、男が低く囁く。
 彼女がちゅぱ、と音をたてて吸い上げながら、硬く勃ちあがった陰茎から濡れる唇を離した。

「おいで」
 熱い息と共に吐き出される、低い、それでいてどこか優しい声音。
 うっすらと汗をかいた肢体が脚の間から身を起こし、男の上に跨った。膝立ちになり、男の肩に手を置いて自ら腰を下ろす。くちゅりと蕩けた蜜口が、ゆっくりと男のものを飲み込んでいく。
「あ、あ……あ」
 ――奥まで、ゆっくりと繋がってゆく。
 隘路を押し広げられ、時折、戯れのように身体が揺らされる。
「ん……っ」
 彼女が息をつめ、快感を逃す。
「ああ……狭くなっているが、よく吸いつく」
 エメトセルクがそっと彼女の背を大きな手で撫でおろし、ぐっと細い腰を掴んだ。
 ぐちゅ、と。結合部から卑猥な音が鳴る。
 深く飲み込んだまま男の手に揺さぶられ、彼女は縋るように男に抱きついた。善いところに当たりすぎないように腰が逃げる。が、男はそれを許さない。
 腰を強く掴み、子宮口に硬い亀頭の先端をぐいとおしつけた。
「あ……!」
 最奥が甘く吸いつき、膣内はひくひくと蠢めく。教え込まれた快楽に、ゆらりと火がつく。
「そら、好きに動け」
 男はぱっと手を離し、にやりと唇を笑みの形に歪めた。
 彼女は背をそらして肉棒をわずかに引き抜き、腰を落としてその先端を自分で子宮口におしつける。ゆっくりと、何度も。その吐息が、甘く乱れていく。
「あ、あ……んぅ……ッ」
 エメトセルクは身体を起こしたまま後ろ手をつき、彼女の身体が淫らに上下するのを、目を細めて眺めている。

 ――彼女は気づいているだろうか。
 彼女が奥に押しつける度に、男がかすかに眉を寄せ、密かに熱い息を吐いて、吸いつく快感に耐えていることに。

「あ、あ。も、……イっちゃ、う……
 彼女の腰がふるりと震え、その動きが緩やかに止まった。

 突然、男が強く突き上げる。

「⁉︎ やっ……! あ、ぁッ……!」
 不意に襲った衝撃に、抗うこともできず彼女は絶頂に達した。背を大きくのけぞらせ、ビク、ビクンと痙攣する。
 しばし細かく震えた後、くたりと力が抜け、男の胸元に身体を預けた。

「また、ひとりでイったのか。……本当に、身勝手で薄情な女だ」
 その身体を抱きとめ、唇に笑みを浮かべたまま、そうさせた男が酷く呆れた声で囁く。
 猫の耳がぴるっと震えた。彼女が緩慢に顔を上げ、潤んだ瞳で男を睨む。
 男はその視線を鼻で笑い、繋がったまま彼女を持ち上げてシーツへ押し倒した。
「あ……!」
……もっと、深くイけるな?」

 彼女に覆い被さり、ずる……と抜けそうなほど陰茎を引く。ズン……ッ! と鋭く腰を落とし、その勢いのまま吸いつく子宮口にしっかりとおしあてて、グチグチとこねまわす。
「あぁッ! ま、まって……エメ、まだイッて、まだ、イッてるからぁ……あ!」
 敏感な身体をガクガクと揺すぶられ、快楽の波がひかない。彼女は、目に涙を浮かべて哀願する。
「だめ、それ……あ、あああ!!」
 ズルル……ッと引き抜き、張り出したカリ首で膣壁を擦る。深く、突く。最奥と膣壁、交互に絶え間なく与えられる快感に彼女が深く喘いだ。
「わけわからなく、なっちゃうからぁ……!」
……ほぅ。それは良い事を聞いた」
 殊更ゆっくりと善いところを撫で擦り押し当てると、それだけで軽く達するのかナカがキツく柔らかくぎゅ、ぎゅうーっと収縮し、射精を促す。
 エメトセルクはぐっと眉を寄せ、ふ、と息を吐き出した。
……は。そんなに欲しがるな。まだ、やらんぞ」
 
 ぐぽッ。といやらしい音を立てて剛直を引き抜き、彼女の身体をぐるりと裏返す。
 男は持ち上げた尻をしっかりと掴み、愛液でぬるぬるに濡れた逸物をもう一度深く埋めこんでいく。
 彼女は白いシーツを握りしめ、さっきまでとは違う善いところを余す事なくかきわけながら侵入してくる異物を、長い息を吐いて受け入れた。喉をのけぞらせて快感に喘ぎ、

「、あ……んッ…………‼︎」

 ――目が、合った。
 衝立の陰に茫然と佇んでいる、――俺と。

 彼女は大きく目を見開き、はっと両手で口をおさえた。
 次の瞬間、ズプンッ! と背後から深く突かれ「く、ぅ」とくぐもった音が喉の奥から洩れる。

「声を、」
 指で首筋から細い背中をたどるラインをなぞる男の瞳が、半月の弧を描いた。
「押さえるな」
 しっぽの付け根をとんとんと優しく撫でられ、「ん、ふ、ぅ……」とおさえた口の隙間から吐息が溢れる。

……扉の外に、誰かの気配でも感じたか」
 エメトセルクに、俺の姿は見えない。
 だが、彼女の些細な変化に的確に気づき、愉悦を含んだ声を落とす。

「私をこの部屋に招けば、こうなるとわかっていたはずだ。……いずれ、誰かに、気づかれると」

 男はゆっくりと奥を捏ねるようにおしつけながら、ぎゅうっとしっぽの付け根を握った。
 ぶわわっとしっぽの毛が逆立ち、彼女はぐっと息を止める。
……ははぁ。そう必死に締めつけるな」
 楽しげに唇を笑みの形に曲げ、男が抽送を再開する。
 ぐちゃ、……ぐち。……ぐちゅん。
 蜜口から亀頭が抜ける寸前まで引き抜き、奥まで埋め込む。彼女は硬く口をおさえ、溢れる声を防いだ。

「おお。さっきまであんなに可愛い声で鳴いていたというのに」
 男は至極残念そうに肩をすくめると、快感に耐え震える彼女の背に覆い被さる。
……見せつけてやればいい」
 耳に直接吹き込むように囁いて耳朶を喰み、同時にゆる、ゆるりと腰を動かし、彼女のナカを愉しむ。
 彼女は目に涙を浮かべ、シーツに顔を押し付けてふるふると首を横に振った。
「や、も、抜いてぇ……
「は。お前の此処がこんなにも吸いついて、離さないのだろう」

 男は突然、彼女の腕を捕らえ、その身体をぐいと持ち上げた。背後から貫かれたまま上体を起こされ、彼女が細い悲鳴をあげる。――はっきりと結合部が露わになり、しどとに濡れる下肢が晒される。
 彼女は自重で深く飲み込んだ剛直に仰け反り、はくはくと声もなく喘いだ。

「ああ……いいぞ。美味そうに咥え込んで、舐めしゃぶるじゃないか」
 男は金の瞳を細め、片手で彼女の身体を引いたまま、無理やり腰を揺さぶる。ぐちゃぐちゃと水音がたち、奥から蜜が溢れ出る。

……私の形を覚えて、奥の口まで受け入れて」
 もう片方の手で、彼女の胸の頂きをきゅっと摘む。
「ぅ、んッ……!」
「善がっている姿を、……見せてやれ」
 懸命に口を噤む彼女の努力を嘲笑うように、男はその身体に快楽を与え続ける。

 ゆらりと。
 彼女の黒曜の瞳が動き、俺を見た。

 ――その姿は、とても綺麗で。
 魅入られた俺は、そこから一歩も動くことができない。

 彼女はそんな俺をしばし見つめ、困ったように微笑んだ。――いつものように。

 エメトセルクの腕の中で、彼女が身じろぐ。

 抵抗とは違うなにかを察した男は、掴んでいた彼女の腕をやんわりと離した。
 彼女は自由になった手で男の頬をそっと撫で、首を巡らせてその唇に触れるだけのキスをする。

 男は驚いたようにわずかに目を開いた。
「いいのか」
 何が、とは聞かず、短く問う。

……だめ、なの?」
 彼女は可愛らしく首を傾げてみせ、それからすぐに、くすくすと咲き溢れるように笑った。
 とろりと蕩けた顔で濡れる唇を薄く開き、ちろりと赤い舌を見せて口づけをねだる。

 ――男が、ごくりと喉を鳴らしたことに、彼女は気づいただろうか。

 ……ああ。たぶん、気づいている。
 エメトセルクが彼女に仄暗い情欲を抱き、それを誰よりも強く深く、貪欲に求めていることに。

「舌を出せ。……もっとだ」
 言われるがまま差し出された甘く柔らかい舌へ、男は噛み付くように吸いついた。

 ――もう、周りを見ることはない。

 与えられるまま、溺れていく。
 互いに、どこまでも。
 深く、暗く、沈んでゆく。


 ⌘


「あー……あー……♡」
 幾度もイき果てた彼女は、ただ腰を高く上げ男のなすがまま揺さぶられ続けている。
 呻きともため息ともつかぬ意味をなさない音だけが、緩く開いた唇から唾液と共に垂れ落ちる。
 時折、ひくひくっと身体が震え、細かな絶頂が続いていることがわかる。

……ッ」
 ふいに男が彼女の細い腰を強く掴み、根元まで押しつけて息をつめた。

「あ、あ……!」
 吐精するために陰茎が震え、奥に吐き出される熱で彼女がまた達する。絶頂にふるえるナカの締めつけに、男は強く目を瞑り、「あぁ……」と感嘆のような低いため息を洩らした。

 限界だったのだろう。彼女のまぶたがゆるりと落ちた。
 開きっぱなしの口から、はぁ……はぁ……と甘い吐息があふれ出る。
 その唇に、ちゅ、と軽いキスを落としてから、男はゆっくりと陰茎を引き抜いた。持ち上がっていた彼女の腰を、そっとシーツへ横たえる。
 膣口から、こぷりと白濁が溢れた。男が、幾度も幾度も思う様吐き出した精液が。

「湯を準備してやろう。……少し待て」
 彼女の汗で濡れた前髪を優しく撫で、ベッドから降りた男は裸のまま浴室へ向かう。

 途中で、ふと足を止めた男が、虚空を見上げた。

 ――視線が、絡む。


 ⌘


 ガタンッ! と。
 思わず取り落としそうになった杖に、溺者のように縋りついた。

 ……息が、できない。喉の奥が閉塞し、呼吸の仕方を忘れて、ただ口を大きくあけて何かを吸い込もうと喘ぐ。だが、ひくひくと痙攣するだけの喉は動いてはくれない。
 喉元を強く押さえ、大きく目を見開く。

 代わりに、喉の奥から溢れ出る、
「あ、あ、あ……!」
 慟哭。嗚咽。……意味のない叫び。

 立っていることもままならず、杖に縋ってずるずると床に膝をつく。

 ──とうとう、見たな?

 嘲笑う男の声が、聞こえた、気がした。


 ⌘


 ――アルバートは、見ていた。慟哭する彼を。

 杖に縋って膝をつき、時折、嗚咽を洩らす。
 アルバートは、そんな彼の傍らにしゃがみこんだ。
 その背を撫でてやりたい衝動に駆られ手を伸ばすが、やはりその手は宙を掻くだけだ。

……ショック、だよなぁ。好きだったんだろ、彼女のこと」

 アルバートはずっと、注意深く慎重に彼を見ていた。
 彼女を傷つける者なのか。
 それとも、彼女を助ける者なのか
 その視線に、恋慕の色を見つけたのはいつだったか。
 
……そうさ。好きだったんだ、ずっと」

 アルバートに答えたわけではないのだろう。
 水晶公は項垂れたままぽつりと呟く。

「これを見せられても。……ああ、何故だろうな」

 彼はゆっくり顔を上げ、鏡を仰ぐ。
 そこに映る、他人の精液に塗れた彼女の裸体。
 鏡の表面に指を伸ばし、彼女の頬のあたりをそっと愛おしく撫でる。

 陶酔と、狂気を孕む執着。
 激しい嫉妬と、淡い恋慕。
 そして、幾重にも積み重なった、遥かなる憧憬。

 涙に濡れる瞳で、水晶公は微笑む。

――貴方は、こんなにも美しい」