めめた
2026-01-25 15:45:33
1530文字
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モブ視点のシルセベ(2026/01/25)

モブがシルセベを眺めては首を傾げている。

 シルバーとジグボルトといえば、あの偉大なドラコニア寮長とミステリアスな副寮長に並んで歩けるような、何故だか凄い奴らだ。
 というのが"僕"の認識である。
 そもそも、同郷らしいというのは一年生の頃にシルバーから聞いた話だ。その頃の僕はシルバーにすら話しかけるのもなんだか緊張したのだが、たまたま、他の寮生とシルバーが話している輪の中に入って聞いた。
 ちょうどその時に、シルバーは鍛練の時間だなんだと席を外した。僕はそれが気になって、シルバーの後をこっそりと追った。
 それから、たまにシルバーが鍛練しているのを見かけては、彼は努力をして寮長らと並んでいるのだと思ったのだ。
 二年生になってからは、シルバーだけだった鍛練に一年生のジグボルトが加わった。
 一人のときでも迫力があって圧倒された場は、二人になることで恐ろしさを超えて、もうアクション映画を観ているような心地にさえされた。
 ただ魔法が使えるだけの僕は、二人に話しかけるわけでも、鍛練していることについて何かを言うでもなく、たまたま、通り掛かればぼんやりと眺めて凄い奴らだなと思うだけだ。
 汗だくで、擦り傷や切り傷をこさえても、向上心を失わずに努力を続ける彼らを、純粋に尊敬した。
「ようシルバー今日も鍛練したのか?」
「えっ……あ、あぁ……その通り、だ」
 こんなふうにいつも汗だくで、と思いながらすれ違ったシルバーに声をかけた。これも、もういつものことだった。シルバーに声をかけることに緊張していたのは、もううんと前のことだ。
 けれど、今日のシルバーはなんだか歯切れが悪くて、珍しく視線が泳いでいて、妙な奴だなと首を傾げた。しかし、シルバーがその通りだと返事をしたのなら、それ以上に問い詰める理由も僕には無かった。
「風邪ひくなよ」
 そう言って、手を振った。
 いつもの通り汗だくで、顔は紅潮していて、髪もボサボサで。なんだか服も乱れていた気がする。今日の鍛練は随分と激しかったのだなと、僕はあくびをした。
「? ジグボルト? なにしてんだ」
「ッ!? な、なんだ貴様!!」
 シルバーとすれ違ってからしばし歩くと、ジグボルトがなんだかコソコソとしていて思わず声をかけた。不遜で生意気な態度にはもう慣れてしまった。
「シルバーならあっちに行ったけど」
「そんなことは知っている! さっさと何処かへ行け!」
 僕は自分の来た方向を指差して言うが、ジグボルトには素っ気なくされてしまう。そんな事だろうとは思っていたが、腹が立たない訳では無い。
 ジロリ、と睨めばジグボルトも汗だくだったのか、既に濡れては居ないが髪は随分と乱れていた。羽織っているのは、サイズの合わないブレザーだ。
「怪我でもしたのか?」
 先程のシルバーの態度と、何故かこの場に留まってシルバーを待っている様子のジグボルト。何かあったなら手助けするかと聞いたが、それもジグボルトにとっては不要のものらしい。
「良いから早く行け!」
「うるさいぞセベク」
 後ろから声がして振り向くと、シルバーがいた。
……ここは大丈夫だ。気を遣って貰って感謝する」
 シルバーが言うなら、と思わせるほどに、その声色は固いものだった。いっそ拒絶を感じさせるような気もして、僕はそれじゃあ、と何も言い返せずにその場を後にする。
 そうっと、振り返ると、二人は連れ立ってジグボルトの居た木よりもさらに奥の木々が生い茂る方へと消えていくのが見えた。
「貴様が全て悪いんだろう!!」
 ハッキリとジグボルトの怒声が聞こえて、一体何があったのかと首を傾げたが、これは僕が知る由もないことなのだろうと納得もしていた。