kanaco
2026-01-25 09:28:38
4189文字
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【十二信】可愛い君と最高の朝を

《十二信》成立済の十二信ちゃんが迎えた甘々な朝のおはなし。ずっとイチャついているだけです。信一くんの『ベッドから抜け出そう』チャレンジの十二信編。

ある冬の日。
恋人のベッドにて、信一は目を覚ました。

体はジッと動かさず、2度瞬く。目覚めの気分は悪くなかった。カーテンを閉め切っているが、その隙間からは僅かに光が差し込んでいる。薄暗いが部屋の様子が見えるのはそのためだろう。

朝か...と信一は思った。

少しぼんやりとした意識の中、まず目に映ったのはサイドテーブルの目覚まし時計だった。寝ている間に横寝の姿勢になっていたらしい。文字盤へと目を凝らせば、短い針は「7」を示している。休日だし起きるには少し早い時間かもと思いつつ、数字を読む作業をしたためか目は冴えてきてしまう。

頭が働いてくると、背中がやけに温かいことに気がついた。人の温もりが直接伝わってくる。とても心地が良いその正体が、信一の背中にピットリと張りついている十二であることは明白で、信一は可笑しそうに小さく笑った。

昨日は一緒に布団の中へ入ったはずだが、彼の眠りはまだまだ深いらしい。すうすうという健やかな寝息が耳に届いて、信一は(どうするか)としばし悩んだ。昨日は外回りで問題が起き、走り回って疲れたと言ってたしなぁ~、と思い出す。

(起こすのはちょっと可哀想か

一方の自分は二度寝を見込めそうにないと結論を出すと、朝飯でも作ってやるかと布団から這い出ようとする。そうしてベッドから抜け出すために体を動かし、信一は自分の現状に改めて気がついた。

(あん?)

体が全然動かない。

原因と思われる自分の腰辺りを探ってみる。十二の両腕が背後から前に回されて、信一のヘソの前で手のひらを組んでいた。信一のことを逃さないとでも言うように、スッポリ腕の中に囲っているのを理解したのだ。

そりゃあ温かいはずだ、と信一は思った。

コアラの子供よろしく背中に張りついているだけだと思っていたら、抱き枕よろしく胸に抱きこまれていたとは。ただでさえ体温が高い十二の”人間湯たんぽ力”に包まれているなど、そりゃぁポカポカ状態も当然である。連日のような寒い冬の夜だって問題なく越せるというものだ。

(いや、でも”湯たんぽ”は人を布団に閉じ込めたりしねぇか)

んー、と信一はのんびり思案した。

十二を起こさぬことにはコイツの腕から抜けられない!と、慌てるタイミングではなかった。

というのも、恋人であるなし関係なく、布団の中であるなし関係なく、小さい頃から十二と隣同士でゴロンと寝転がることが多かった信一からすると、この体勢は大して珍しいことではなかったからだ。

就寝する時は仰向けかつ少しの距離を保っての体勢でスタートしているはずなのに、信一が次に目を覚ました時には、大抵の場合で十二は信一にくっついていた。体のどこかが触れ合っていれば気がすむらしくその程度は様々であったが、今日のようにベッタリとひっついていることも少なくはない。

信一が自分の隣から抜け出さないようにギュウと抱え込んでしまうのを、寝ている間も無意識にやってくるのだから、可愛いかと聞かれれば可愛いし、厄介かと聞かれれば厄介だ。

しかし、信一だって伊達に抱き枕として長年を過ごしてきたわけではなかった。

(~♪)

脳内で悠長なGBMを流しながらのんびりとした面持ちをして、信一はそっと十二の手の甲に自分の手のひらを当てた。

それからスリスリと撫でるように往復させる。

すりすり、すりすり。

長らくそうしてやれば、キュっと締まっていた十二の指が徐々に力を失っていくのを知っていた。信一が傍にいることを感じ取り、肌を触れ合わせて嬉しくなり、その条件反射で体がリラックスしてしまうのだ。

安心する、気持ちい、あったかい、和む、幸せ。


好き。


子供の頃からの刷り込みというのはなかなかに強い。自分の優しいリズムに合わせるようにして、相手の縛りが解けていく。

それを確かめた信一は、十二が自分を囲っていた両手を軽々と離してしまうと、上から覆いかぶさっている方の片手にだけ自分の指をそっと入れ込み絡めてやった。手首を捻ってスルリと指を指の間に差し込めば、刀を振るって皮膚が固くなっている十二の男らしい手のひらが、意識が無いにも関わらずまるで嬉しそうにして握り返してくる。


十二は俺を抱きしめるのも好きだが。
十二は俺と手を繋ぐのも、好き。


そして片手だけを繋いだ状態になってしまえば、こちらのものだった。

もう少しだけ十二と手を繋いでやった後、指を小さく動かして再びスリスリと撫でてやれば、やはり自然と力はゆるむ。

信一は丁寧に手のひらさえも外すと、解放された体を静かに起こした。

騙し打ちのようで可哀想という気持ちもあるが……同時に何とも言えない充実感も湧いてくる。十二の自分に対する素直過ぎる反応には、ただただ愛しさが募った。信一は上半身だけを起こしたまま、あどけない顔で眠っている年下の恋人を見下ろすようにして、ふふ、と綺麗に笑った。

子供時代はヒョロヒョロと細身で顔色も悪く、目つきの悪い子供だったのに。今ではガッシリとした筋肉質で、健康優良児と言って的を外れず、目つきは今でも鋭い方だが精悍な顔つきの男に育った。その成長スピードや変貌ぶりは十二の素質と努力の賜物である。しかしこうして眠っていると、信一にとっては今も昔もさほど変わらないように見えた。

眠って意識がないというのに、甘えるようにすり寄ってくるところも、触れられて安心し気を抜いてしまうところも、無防備なままに信一に誘導されてくれることも。

昔からちっとも変わっていない。


「かわいーやつ」


小さな声で呟けば、自分が思っているよりも愛し気な声色になった。

そんな自分に信一はもう一度クスリと笑うと、吸い寄せられるように十二の顔へと自分の顔を近づけていった。十二を起こさないように慎重に気をつかう。

閉じたままの瞼と眉の間にある、信一もお気に入りの恋人のホクロ。

そこに唇を寄せて、本当に軽く触れるだけの繊細なキスを贈れば、最高な朝だという気持ちにすらなった。

1人でご機嫌になった信一が(じゃぁ起きるかぁ~)とまったり動き始めようとした時だった。

バサリと布が大きく翻った音、急に襲ってくるヒンヤリとした空気。ビックリしているうちに突然に強い力で引っ張られて、グルンと世界が反転する。強引すぎる態勢変化に何がどうなったのかが分からない。

「おぉあ!?」

目をシロクロさせてそう情けない声を上げれば、急激な変化が静止した。

背中には敷布団。信一の手首は二つとも手のひらによって敷布に縫いつけられていた。目の前は天上ではない。喜んでるのか照れているのか怒っているのか……なんとも言い様つかぬ器用な表情をした十二の顔が、真上から信一を見下ろすようにそこにあった。

まるで形勢逆転だ。ベッドに寝転がる信一に覆いかぶさっている十二は、先ほどまで熟睡していたとは思えないほど目をかっぴらき信一を凝視ししていた。

「何を朝っぱらからカワイイことしてくれちゃってんの、マジで」

そう、口を尖らせて文句を言う。いつのまにやら目を覚ましたらしい十二に信一は声を上げた。

「へ!?なんで起きた!?」

「こんな可愛いことされてぐうスカ寝てられっか、何なのお前!?」

俺が起きてる時にやれよ、起きてる時に!
もったいねぇ!!

吠える十二から謎に怒られて、信一も「え~」と十二に負けずに口を尖らせる。

「嘘つけよ、今までだって起きたことねーだろお前。もったいないって何」
……おい待て、それどういう意味だ。今までって何!」
「ん~」
「俺が寝ている隙にこういうこと毎回してるわけ?」
……秘密」
「何それ!?」
……朝っぱらから元気だな、十二少」
「どっかの誰かさんが朝っぱらから煽るからだろうが」

十二が信一の手首を掴んでい力を少しだけ強めた。双方の瞳が一度も逸れずに数秒見つめ合えば、触れ合うことへの承諾と捉えた十二の顔が降りてきて、信一の顔の色々な場所にチュッチュとたくさんのキスを贈る。先ほど信一がした、慎ましやかな贈り物に似るキスとは違って、十二の相手に自分の愛情を教え込むようなキスはくすぐったい。熱を上げる手のひらからは興奮が伝わって、信一は呆れたように笑って言った。

「だってホラ、知ったら今みたいに盛るじゃん。こんな爽やかな朝だってのにさ」
「それでなんか困ることあるわけ?」
「お?」
「俺がお前に朝から盛って、何か問題が?」
「ええ?」

少々不満気な目に見つめられて、信一は「ん~」と考える素振りをした。眉間に皺を寄せて思考を巡らせる。上に圧し掛かる十二がじぃーっと動物のように信一の様子を観察している視線を感じた。やがて。

「ねぇな」
信一がキッパリと言う。

「たりめーだろ」
十二もハッキリと言った。

ニヤリと笑み、満足気にする十二のふてぶてしい態度を見て、信一はやっぱり笑ってしまった。先ほどから十二が何をしても自分は笑っている気がした。眠って意識がないままの行動も信頼を感じるが、起きてこんな風に執着されるのもまた嬉しいものだった。

「かわいーやつ」

十二が一度目は聞いていなかっただろう言葉を言えば、愛し気な声色がやはり出た。

その言葉と声音を聞いた十二が、ボッと顔を赤らめてゴニョゴニョと小さい声で何か言う。信一に聞こえないように呟いたつもりだろうが、それが「かわいいのはどっちだよ」だとバッチリ耳に聞こえてしまうという、うかつな様子さえ信一には愛しく映る。

やっぱり最高の朝かもしれない。

「おはよう、十二」

そういえば挨拶していなかった、と信一が言う。

「おはよ、信一」と返した十二が、そのまま噛みつくように口へとキスを仕掛けてきた。

マジで朝からヤるじゃんと思いつつ、信一はその素晴らしい朝をもっと満喫するために、掴まれていた自分の両手首を力任せに動かして腕を自由する。

それから十二の首へと積極的に巻きつけて情熱的なキスを堪能した後に、すぐに十二の背中へ下から腕を突っ込む。

そうしてパジャマをあっという間にはぎ取って、ポイっとベッドに下へと放り投げてやったのだった。