白殊皎(しらよし こう)
2026-01-24 19:10:27
2110文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

湯気まで美味しく、いただきます

二人で映画を見た帰り道。
外は肌寒くても暖かい一時を。

Wavebにてリクエストをいただきました!
◆リクエスト内容
「現代転生土近が深夜営業のラーメン屋にとんこつラーメンを食べに行く話」

秋後半、ちょっと寒くなった頃のイメージです。
熱々の豚骨ラーメンに熱々の二人……いいですよね。

 明日は二人とも仕事が休みとなったので、評判の映画をレイトショーで観に行った。
「面白かったな、歳。特にあの場面、感動したよ」
「そうだな。俺はあそこもいいと思ったぜ」
 映画館を出て、感想を言い合いながら家路を辿る。
「なぁ、歳。小腹が空かないか?」
 途中、ふと立ち止まった近藤が呟く。
「晩飯食ってないからな。何か食って帰るか」
 ちらり、と腕時計を見遣って土方も応じる。
 時間は、もうすぐ日付が変わるくらいだ。
 確か近くに二十四時間営業のファミレスがあったはずとスマフォを取り出す。
「お、あんなところにラーメン屋があるぞ」
 近藤の声に、そちら見れば確かに赤い提灯の掛かったラーメン屋に煌々と灯りがついていた。
「いいな、あそこにしよう」
 ちょっと肌寒いくらいなので、熱いラーメンはちょうどいいと土方は同意した。
「いらっせーぃ」
 暖簾をくぐれば威勢のいい店員の声に迎えられた。
 最近の店にしては珍しく食券機はなく直接注文をするようだった。
 客は自分たち二人だけだ。
 せっかくだからとカウンターに座る。
 壁のメニューを見れば、豚骨ラーメンしかないが量や麺の堅さ、トッピングを選べるようだった。
「この、麺の堅さというのは何ですか?」
「ゆで時間の長さっすね。粉落としが一番短くって固いっす、あとは順にハリガネ、バリカタ、カタ、普通、あとはヤワっすね」
 豚骨ラーメンは麺が細いから伸びやすいので、量は普通にして替え玉で好みの食感を選ぶのがいいです、と店員は付け足した。
「じゃあ、私はまずは普通でもらおうかな。歳は?」
「俺はカタでもらうかな」
 まずは、などと言うことはそれなりに量を食べるつもりなのだろうと土方は苦笑した。
「へーい」
 店員は手際よくどんぶりにスープを注ぎ、麺をゆでた。
 ゆで時間が短いとの言葉通り、すぐにざるに上げ湯切りをする。
 スープに麺を入れるとチャーシュー、キクラゲ、ネギをトッピングして提供された。
「カタお待たせっす」
「ありがとよ」
「こっち普通っす。カウンターの紅ショウガはお好みでどうぞ」
「ありがとう」
 それぞれに受け取って自分の前に据える。
「あぁ、近藤さん。前髪」
「ん?」
 食べる段になって、土方は近藤を押しとどめた。
「スープに浸かっちまうぞ」
 そうして服のポケットを探るとヘアゴムを取り出して近藤の長く艶やかな黒髪を後ろに回して纏めた。
「ありがとう、歳」
 いつもやってもらってばかりだな、と照れ笑いをする。
「俺がやりてぇんだからいいさ。麺、伸びるぜ」
 土方はふ、と笑って近くの箸立てから割り箸を近藤に渡した。
「そうだな、早くいただこう」
 手を合わせていただきますと口の中で呟くと、ぱちんと割り箸を割りラーメンを軽く混ぜてからすすり込む。
 まろやかなスープの風味にネギとキクラゲが食感のアクセントになってかなり美味だった。
「すみません、替え玉を。こんどはカタで!」
 あっという間に一玉を完食し、近藤は店員に声をかける。
 土方はまだ半分も食べていないが、やっぱりなと思った。
「替え玉カタっす」
 店員は細身の美人な方が即替え玉かぃ、というような顔を一瞬したが、スンと元の顔に戻って替え玉を提供する。
「ありがとう」
 嬉しそうな顔をして受け取ると、結構な大口で食べ進めていくが、不思議と下品ではない。
 美人は得っすね、と店員は思ったとか思わなかったとか。
「トッピング、味玉をもらえるか」
 自分の分を四分の三くらいを食べたところで土方がそう言った。
「とひがめずらふぃいな」
「たまにはな。それに──」
 まるごと提供されたそれを半分に割って一つは自分のどんぶりに、もう一つは近藤に差し出す。
「あんたが食いたいだろうと思って」
「歳!」
 近藤はそれを見てなんでわかったんだ? というように微笑んだ。
「あんたのことなら大抵わかるさ。でも夜中だから控えめにな」
「わかったよ、ありがとう、歳。でももう一玉だけ、な?」
 そう言って味玉を半分受け取り、ペロッと平らげた近藤はぱちんと片目をつむって土方にお願いだ、という顔をする。
「仕方ねぇなぁ」
 結局その顔をされてしまうと土方は弱い。
「ありがとう、歳! すみません、替え玉もう一つ、カタで」
「へーい」
 結局近藤は一杯と替え玉二玉をあっという間に平らげた。
 それに合わせるように土方は一杯を食べ終える。
「ごちそうさま、美味しかったです」
「ありがとっしたー」
 代金を支払い店の外に出る。
「うぅん、結構寒くなってきたね。早く帰ろう」
「そうだな」
 二人は自然と手を繋ぎ、冬に移りつつある星座を見上げながら帰途につくのだった。



 俺さっきまで何見せられてたんだろ。
 超絶美男美女カップルかと思ったら男同士で、しかも美人の方がめっちゃ食うの。
 男前の方めたくそ気配り屋だし、味玉半分ことかしてるし、帰り手ェ繋いでたぜ?
 この時間まで一人な俺に見せつけてんのか!?

──後日、ラーメン店店長のこの寂しい呟きは、ぷちバズったという。