ルシフェル様と食後の珈琲を飲んでいた時、俺の部屋の扉をノックする音が聞こえた。今日は節分の日。いつもの恒例行事をしに来たのだろう。扉を開けると予想通り団長のにこやかな笑顔が見えた。
「珈琲タイム中にごめんね、すぐ終わるから」
「問題ない。毎年恒例のアレを配りに来たのだろう?」
「アレとは何だろうか?」
隣に来たルシフェル様は興味深そうに団長のショルダーバッグを見ている。団長がショルダーバッグの中から取り出したのは手のひらサイズの升で、中には豆が一粒入っていた。
「これルシフェルにプレゼント、升は良かったら飾ってくれると嬉しいな」
「ありがとう。この豆は一体?」
「今日は節分の日だからね。節分では誕生日の数にちなんだ数の豆を食べるのが一般的だけど、うちでは団に所属した年数に従って配ってるんだ!」
「私はここに来てから一年にも満たないから一つなのだな」
「そうだよ。食べ足りなかったら食堂に行ってね。山盛り置いてあるから」
そう言って団長は俺の手に豆を入れてそそくさと退室して行った。他の団員のところにも行ったのだろう。目線をルシフェル様に戻すと俺の手をじっと見つめられていた。
「どうされました?」
「君の分の豆は八つだな
……と」
「ええ。俺も団に所属した年は一粒だけだったのですが」
ルシフェル様は俺の豆と自分の豆を交互に見やった後、にっこりと光輝く笑顔で微笑まれた。不意に受ける可愛さ全開のスマイルにダメージを受けた俺は危うくブレイク状態に入るところだった。
「どっ、どうされたんですか。急に微笑まれて」
「ここでは君の方が先輩なのだと思うと何だか嬉しくなったのだ」
「嬉しい?」
「ああ、天司長の頃は配下の天司はいても上の立場の者はいなかったからな」
天司の長だったルシフェル様には当然上の立場の天司はいない。対等な存在と言えば、ルシファーとベリアルと役割がなかった俺くらいなのだろう。そう考えると入団一年目の新人という立場は新鮮なのだろう。折角だから先輩風でも吹かせてみるか。
「そうでしたね。貴方はここに来てまだ一ヶ月に満たない新人なんですから、先輩の俺の言う事をしっかりと守ってくださいね?」
「ああ、よろしく頼むよ。先輩」
ルシフェル様は更に笑みを深められた。笑顔が眩し過ぎる!俺はブレイク状態にされてしまった。何とか話題を逸さねば
……
「せ、折角ですから団長からもらった大豆食べましょう!」
「ああ、そうだな」
お互い大豆を一粒噛んだ。
「魔力が込められているな」
「団長が大豆にヒールオールをかけているって以前言っていました。団の皆が元気に過ごせるようにと。毎年団長が自ら団員の部屋を周り豆を配るのも、願掛けの一種とのことらしいです。来年もまた豆を配れるようにと」
「そうか。団長らしいな」
ヒールオールに旨みを付与する効果は無いはずだが普通の大豆より深みがあるように感じた。残りも味わって食べる。ルシフェル様は一つ分しかないので、俺待ちの状態となってしまった。
「ルシフェル様、食べ足りなかったでしょうか」
「ああ、折角団長が願いを込めてくれたものだからな。おかわりしたい」
「では、珈琲を飲み次第食堂に行きましょう」
こうして、今年の節分イベントは終了した。来年もルシフェル様と大豆を食べる。気が早いがそんな光景が浮かんだ。そういった未来が当然来ると思う、思えている現状がとても幸せだなと感じた。
終わり
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