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リレン
2895文字
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フリンズ夢 短編
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フリンズさんに夢の相談をする話
「最近、夢見が悪いんですよねぇ」
そんな話をした相手は、フラッグシップで偶然相席したフリンズさんという人だ。その日は少しお店が混んでいたので、店員さんから「相席は可能か?」と声をかけられた。ボックス席を一人で使わせてもらっていたので「どうぞ」と答えると、思わず見上げるほどの背丈の美形男性が相席相手となるとは
……
ナシャタウンは凄いところらしい。
簡単な挨拶を済ませて静かにしていようと思ったのだが、彼の方から話しかけられるとは予想外だった。人好きのする性格なのかもしれない。
「先ほど、こちらに座らせてもらう前にため息を付いていたようですが、何かお困りごとでも?」
そして、彼はよく人を見ている。人間観察が趣味の人とかいるし、その類なのかもしれない。
「そうですねぇ
……
最近、というかこの街に旅行に来ているのですが、到着した夜から夢見が悪くて
…
夜寝るのが少し怖いんですよね」
「おや、それは大変ですね。
――
例えば、どんな夢を見るのでしょうか」
こんな話笑われるだろう
…
と思っていたのに、共感してもらえるとは。フリンズさんは変わった性格のようだ。「話していただけるのであれば、ですが」と後付けもしてくれる気遣いもある。
一期一会というやつだ。「別に構わないですよ」と返して、少しだけ話すことにした。
「うーん
……
毎回同じ内容では無いんですけどね。例えば、街中で見かけた猫を追いかけたら、知らない場所に出てしまって迷子になる
…
とか。ワイルドハント?とやらに散々追いかけられて走らされる夢は
…
ちょっと大変でした」
「なるほど、他には?」
「えーと
…
、あぁ昨夜は落とし物を探す夢だったんですけど、ずっと歩き詰めだったのに結局見つからないまま起きる
……
みたいな」
自分から話してみると、そんなに怖い夢じゃなかったかも?と思い始めた。私が気にしすぎていただけ、かもしれない。
「人に話してみたのは初めてなんですけど、言葉に出してみたら
……
そんなに怖い夢じゃないかもですよね。心配かけてちゃって
……
あれ?」
話しながら自然と下を向いていた顔を持ち上げると、彼は神妙な顔をしながら手を口元に当てて悩んでいるようだった。
「
……
そ、そんなに考えていただく必要は、ないですよ?」
「あぁ、いえ。
……
話して頂いて、ありがとうございました。とても参考になりました」
「
――
参考? 何の話?」
私はそう聞き返したが、彼はニコリ、と笑うだけで何も言わずに手元のお酒を飲み干し、店員さんに声をかけて追加注文をしていた。そういえば聞くタイミングなかったけれど、フリンズさんは何の仕事してる人なのかな。たとえば、稲妻に居るっていう夢専門の心理療法士さん
…
とか?そんなわけないか。
少ししてからフリンズさんが注文したお酒が届いた、と思ったら私の前にも「どうぞ」と可愛いカクテルが置かれる。
「これは
……
?」
「興味深いお話が聞けたので、そのお礼ですね」
「お礼を言われることなんて話してないけれど
…
」
うーん
…
まぁいいか。たくさん話して喉も渇いたので、頂いておきましょう、とグラスを傾けて一口飲む。あ、これ甘くて美味しい。
「少し
……
お節介を焼いてもよろしいですか?」
「えっ?」
「僕はこの街で、ライトキーパーという職に就いています」
「あ、聞いたことあります」
「そうですか、ありがとうございます。それで、お守りのようなものを丁度持っていまして」
そう言ってフリンズさんが何処かから取り出したのは、小型の飾りランプだった。装飾が可愛い手のひらサイズで、小さな青い炎が揺らめいている。
「こちらのランプを宿泊先の部屋に置いていただくと、夢見の悪さが軽減できるかもしれません」
「えぇ
……
?」
そんな眉唾な話がある
……
?とは思ったものの、揶揄うようなことは言わなそうな人なんだよね。
「僕は明日の夜もこの店に居ますので、一晩だけでもお試しされてはいかがでしょうか?」
「うーん
……
」
もう会わないつもりで話した夢の話なのに、と少し悩んだが
……
真剣に聞いてくれて、考えてくれたフリンズさんを、少しだけ信じてみることにした。
「わかりました、明日夜にお返ししますので、今夜だけこのランプをお借りしてみますね」
「えぇ是非、どうぞお持ちください」
受け取ったランプは、不思議と熱さを感じることはなかった。
***
――
その夜、また私は街の中を走っていた。
あぁ、これはまた夢だな
……
と分かる感覚があり、今日は誰かに追いかけられている夢のようだ。知らない街を走っているのに、なぜか道が分かる。このまま進めば、安全な場所に行ける
――
。
「
――
それ以上進んでは、いけませんよ」
服の後ろ襟をクンっと引っ張られた感覚があり、立ち止まる。振り返ってみたが誰もおらず、追いかけていた何かも、もう近づいて来ていないようだ。
……
今のは、誰の声だったのだろうか。聞き覚えのあるような
…
と少し考えてからもう一度前を向く。
「え
…
?ど
……
どうして
……
」
進もうとしていた道が、場所が、蒼い炎に灼かれていた。
あのまま進んでいては、私はどうなっていたのだろうか。そう考えた途端に体が震えて、その場でパタンと座り込んでしまった。
全てが焼き払われ、蒼い炎が少し収まってきたところで、フッと意識が途切れたように床に倒れ込んだ
……
が、倒れたはずなのに痛みは無く、むしろ
…
柔らかい何かに支えられたような感覚だった。
「どうぞ、今夜こそ良い夜を
――
」
また、聞いたことのあるような声が、遠くから聞こえた気がする。けれど、この声は
…
誰だったのだろうか。
***
――
次の夜のフラッグシップ。
約束した時間にお店に向かうと、フリンズさんがカウンター席に座っていた。手招きされているので、そちらに向かうことにする。「どうぞこちらに」と促されて席についてから、忘れないうちに
…
と飾りランプを取り出してお返しすることにした。
「昨夜はランプをお貸しして頂いて、ありがとうございました」
「いえいえ。それで、結果はいかがでしたか?」
「はい、なんか夢は見たと思うんですけど
……
あまり覚えてないぐらい、ぐっすり寝まして
…
気づいたら朝でした」
あはは
…
と苦笑いしながら、そう答える。悪夢を見たのか見てないのか、答えられないのだから仕方ない。
「よく眠れたのなら、もう大丈夫でしょう」
優しく笑みを浮かべるフリンズさんが、何を根拠にそう答えているのかは分からない
……
。しかし、昨日よく眠れたのは事実なので、今夜もよく眠れる可能性は確かにある。
……
うん、それで良いということしよう。
「昨夜と同じカクテルでもよろしいですか?今夜からの貴女の夢が良きものになることを祈って、乾杯しましょうか」
「
……
はい!」
注文したお酒が届いてフリンズさんと乾杯し、他愛のない話をしながら、ふと思う。
…………
昨日の夢の中に、フリンズさん
…
居なかった?
『貴女の良き夢の一助となれたならば、』
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