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のたり
2026-01-21 19:51:32
1895文字
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hrsz
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お祭りの夜
座敷童子とかんなぎの話
待ち合わせ場所は境内の裏、関係者しか入れない回縁。
待ち合わせ時間は日が暮れた頃としか決めていなかった。ここの神社の神職である彼女のお務めの休憩時間に、ふたりで屋台を見てまわろうという約束だった。
回縁の階段に座って、着物の裾を整える。こつんと下駄を鳴らしてみる。毎年恒例のお祭りのお囃子がいつもより楽しそうに聞こえた。お囃子に合わせてつい口ずさむ。
「雫、お待たせ」
日が暮れて灯篭の灯りが眩しくなり始めたとき、やっと来た待ち人の声に顔を向けた。少しきょとんとした目が私に向けられていた。
「
……
びっくりした。今日は着物なんだね」
そう言って微笑んだ彼女にほっとする。
「ええ、せっかくのお祭りだから」
「うん。すごく似合ってるよ」
私が立ち上がると、彼女は自然に手を伸ばしてくれた。その手を取って階段を降りる。いつもより高い視線。私を見上げる彼女は、それでもどこか凛々しく見えた。
***
なにかしたいことはある? なにか食べたいものはある?と彼女が私に問う。
並んで歩いている最中、水に浮かぶ色とりどりの水風船に目を奪われた私の手を、やろうとやんわりと引く。紅い水風船を選んだ私に、今日の着物と同じ色だねと微笑み、ひとつも取れずに切れた紙の糸が鈎に引っ張られるように水に沈んでいくのをしょんぼりと見ていた私にちゃんと紅の水風船を取ってくれた。もうひとつ取れそうだと言って、彼女は藍と白緑の水風船を取った。
人混みの中、りんご飴、たこ焼き、イカ焼き、綿菓子と、彼女は4つずつ買っていった。そんなに食べられるの? と問えば、私だけでも食べられるよと笑った。迷う私に味見してから決めればいいよと一口ずつくれた。りんご飴をもうひとつ、それから彼女は少し迷ってたこ焼きをもう一舟買った。
待ち合わせした境内の裏に戻って、買ってきた食べ物を広げる。彼女は私がりんご飴をひとつ食べ終わる前に、3人分を食べ終わってしまった。残りの1人分も食べてと言ったら、残ったらねと笑った。
「そろそろ私、戻らなきゃ」
思い出したように彼女はそう言った。最初からわかっていたことだったけれど、楽しかったぶん、余計寂しくて、それを顔に出してしまわないよう気をつけながら笑ってみせた。
「ありがとう、遥ちゃん。とても楽しかったわ」
「そっか。それならよかった」
優しく彼女が笑う。そして私と向かい合うように立つと、まっすぐに私を見据えた。その自然に胸を掴まれたみたいにドキリとして息苦しくなった。
「
……
で、あなた、誰?」
「
……
えっ
……
」
「雫そっくりだけど、雫じゃないよね」
「
……
」
ぎゅっと自分の手を握りしめて、息を呑む。
「
……
いつから気づいていたの?」
「最初から。何を企んでいるのかわからなかったから、騙されたふりしてたけど」
驚いたけれど、不思議と納得できた。
「ーー本物の雫は?」
「眠らせただけ」
「そっか」
ほっとしたように彼女は身体の力を抜いた。そして腰に手を当てると小さくため息をついた。
「何が目的? ことと次第によっては本気で怒るけど」
「
……
ごめんなさい、あなたと一緒に遊びたかっただけなの」
「え?」
素直に言ったら、彼女はきょとんとした。
「いつも雫があなたのこと、嬉しそうに話すから」
「
……
なんだ、じゃあ最初から一緒に行きたいって言ってくれたらよかったのに。そしたら雫と3人でーー」
「ふたりで遊びたかったの」
「そっか」
「ごめんなさい」
「いいよ。私も楽しかったよ」
「
……
うそつき」
ふふっと彼女は笑った。
「雫はどこ?」
「あなたの部屋」
「わかった。ありがとう」
彼女は回縁の階段を上がって、振り向きもせず自分の部屋に早足で向かって行った。
***
座布団を枕に畳の上で眠る雫を見つけて、彼女はほっとしたように息をついて、傍らに膝をついた。
「そろそろ起きて、雫」
彼女の声に雫が身じろぎしてゆっくり目を開ける。
「
……
遥ちゃん?」
「おはよう、雫」
「えっ
……
あっ、ごめんなさい、私寝ちゃってたの
……
!?」
「そうみたいだね」
慌てて起き上がった雫にふふっと笑って、彼女はそっと髪を撫でた。
「お祭り一緒に行く約束してたのに
……
」
しょんぼりする雫に水風船を差し出す。
「これ、お土産」
「
……
まぁ!」
嬉しそうに声を上げて、雫は水風船を大事そうに両手で持った。
「とっても綺麗。遥ちゃんの髪と同じ色ね」
「うん。雫の髪とも同じ色だよ」
「そうね」
ふふっと嬉しそうに雫が笑う。そんな雫に彼女は、私と一緒の時とは違う、とろけるような笑顔を彼女は見せた。
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